運命の輪

〜If〜

だって










 宿敵ルカ=ブライトの最期に、同盟軍の歓喜の叫びが森を大地を奮わせる。

    ずる・・ずる・・・ずるる・・・・っ

 誰もが浮かれる中、ひっそりと闇を伝うように移動する、影が一つ・・いや、二つ。
 
「まったく・・・図体ばっかりでかくて嫌になる・・・いい加減起きてもらわないと困る」
 
    ずる・・ずる・・・ずるる・・・・っ

 小さな影・・・おそらく少年のものだろう・・・は何かを後ろでにもち、引きずっている。
 時折、木の幹に当たるのか、ずこっ、とかべきっとか・・・まぁ、ちょっとヤバそうな音も聞こえるが、
 それらは全て同盟軍の騒ぎが消してくれる。
 夜陰に紛れるにはもってこいといえるだろう。

   ずる・・ずる・・・ずるる・・・・っ
       ずる・・ずる・・・ずるる・・・・っ
             ずる・・ずる・・・ずるる・・・・っ
 


「・・・・禿げてないといいなぁ・・・・」
 少年はそんな呟きを残して、森から消えた。











■□□■■■□□■







「・・・・・・・・」
 空が見えた。青い、青い、雲ひとつない空だった。太陽の光がまぶしい。

「あ、おはよう!ルカ」
「・・・・・・・・・。・・・・・・・・」
「ルカ〜、寝ぼけてるのかい?」
「・・・・・・・・・。・・・・・・・・」
 少年の呼びかけに、ルカ、と呼ばれた男は横たわったまま何も答えない。
「・・・・やっぱり無理矢理紋章で寝かしたのはマズかったかな〜・・・それともどこか変なところぶつけ
 てしまったのかな・・・・」

 男を覗き込んだ、綺麗な顔が首をかしげた。

「・・・・・・・・・・ダナ」
「うん、そう。僕」
「・・・・・・・・夢、だったのか・・・・・・?」
 同盟軍に追われ、命尽きようとしていたのは。
「いや、現実だよ」
「では、俺は死んだのか?」
「死んでたらここに居ないよ。ほら、君は生きてる」
 ダナは笑顔を浮かべて、ルカの頬をむぎゅ〜〜っと思いっきりつねった。
「・・・ね?痛いでしょ?」
「・・・・・・・。・・・・・・・」
 再び沈黙するルカ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ダナ」
 抑揚無く呟かれた声と共に、ダナの視界が反転する。
 ダナはルカに押し倒されていた。


「・・・・・無茶しないほうがいいよ?」
 ルカの下のダナから気遣う言葉がかけられる。
「何故だ?何故俺は生きている!」
「決まってるじゃないか。僕が助けたから」
 ダナの腕を掴む、ルカの力が増した。戦場で鍛えられたルカの握力はその気になれば、ダナの細腕
 など折ることは容易い。
「助けた・・・だと?・・・・・・・・・っふざけるなっ!」
「ふざけてなんか無いよ」
「ならば、何故こんな余計なことをしたっ!俺は助けなど・・・っ!」
 ルカの中で激情が荒れ狂う。
「そうだね、君は助けなど望んでいなかった」
「お前・・・・わかっていながらっ」
「でもね。僕は助けたかった。君に死んで欲しくなかった。君が死ぬのは嫌だった」
「俺は・・・死など恐れてはいないっ!」
「でも僕は君の死を恐れていた」
「・・・・・・・・・っ!?」
 激昂するルカに対してダナはどこまでも穏やかだった。微笑さえ浮かべていた。
「君は死ぬことを望んでいた。全ての人間を殺すことを望みながら、その実、君が一番に望んでいたのは
 自身の死だ。君が最も憎んでいたのは、ルカ。君自身だ」
「俺は・・・・っ」
「ダメだよ。僕の前で生死を偽ることは出来ない。だからこそ君は僕のことを死神と呼んで傍に置いた」
「・・・・・・・・・・・」
「僕だって、最初は君の望みを叶えてあげようと思っていた」
「・・・・・・・・・・・」
「ならどうして、て?顔してるね・・・それはね」
 ダナは自分の腕を掴んでいたルカの腕をはずし、血と戦塵に塗れたルカの体を抱きしめた。







「だって、・・・・・・・・・・・・・・僕は君のことが好きだから」







 ルカの体がびくり、と震える。

「ルカのこと、大好きだから」
 痛いほどに綺麗な笑顔をダナは浮かべていた。

「・・・・・・・。・・・・・・・・・」
 ルカは呆然とそんなダナを見下ろす。

「ルカ=ブライトは死んだ。ここに居るのはただのルカ。僕が好きになった男(ひと)」
 ダナはルカの顔を見つめ、囁くように告げた。
「・・・・・・・。・・・・・」

「ルカ。僕と・・・・・・・」





 一緒に生きて。
 お願いだから。
 傍に居て。








「・・・・・・・・・ダナ」
「ルカ・・・」
 抱擁が、返事だった。



































「・・・・・ところで、ダナ」
「ん?」
「何やら俺の頭のいたるところが痛むのだが?」
「う〜ん、どこかで打ったのかな?気にしない。気にしない」
「・・・・後頭部が何やら薄くなったようが気が」
「・・・・気のせい気のせい♪」
「・・・・・。・・・・・・・・・」









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あぁぁぁっ、やっぱり我慢できなかったーっぁ(笑)
かなり我慢に我慢を重ねてルカ様を殺したものの
やはり反動が(笑)・・・・生き返らせてしまった。
でもこれを本編とリンクさせると先の話が流れないので別室。
もしも、ということで。
御華門の心のなぐさめページです(笑)