ダナ=坊ちゃん

<閑話 3>








 ルックは紋章の力の波動を感じた。
 そしてどうやらレックナートも。
「レックナート様」
「・・グレッグミンスターで何か起こったのかもしれませんね」
 盲目の占い師はどうやってかその場所を特定し、案じるように言葉を綴る。
「あ・・・」
「どうなさいました?」
「・・・来る」
 レックナートが宙に顔を上げる。
 すると同時に空間が歪み、誰かが現れた。

「・・・姉様」

「レックナート。少々お邪魔するわ」
 レックナートの姉、ウィンディだった。
 普段はグレッグミンスターに居て、滅多にここに現れることは無い。
 レックナートとは対照的に派手な容姿をしたウィンディは、いつになく焦った様子だった。
「いったい何が・・・」
「貴方は何も気にしなくて良い。私はここに来ていない」
 ウィンディはさっさと何処かへ姿を消した。
 レックナートが気遣わしげな視線を向けるが一切気にしていない。
「ルック。周囲を見てきてくれますか?」
「・・わかりました」
 面倒だと思ったが、ここに置いて貰っている身としては従わない訳にはいかない。



 そして塔の外に出て周囲を警戒していると、紋章の力が現れる。
 いったいどんな奴が転移してきたのかと思ったら・・・ルックと同じ年頃の少年二人だった。
 こんな奴ら二人が紋章を操る・・・?
「見てないで出てきたら?」
 その声に反射的に風の攻撃を放っていた。
 残念ながらどちらにも当たらなかったが・・・
 
 全くおかしな二人だった。
 どちらもルックと同じ臭いをさせながら・・・得体の知れなさはルックを上回る。
 何よりダナ・マクドールという子供は・・・

「ルック。悩むだけ無駄。今生きて、僕と話をしているのはルック以外の何ものでも無いんだからね」
「・・・・・馬鹿じゃないの」
「目を見て言えない時点でルックの負け〜」
「・・・っ!」
 自分の何がわかるのか。ぬくぬくと生きてきたお坊ちゃんが・・・っ!
 それを口に出せるほどルックは幼くは無く、そしてウィンディさえも黙らせた相手が到底ただのボンボンとは言えない相手だということはわかりすぎていた。
 何者なのか。
 レックナートは口を開かず、ルックだけが馬鹿のように振り回されている。
 何故ルックなのか。
 すでに傍に、子供の形をした、死神を連れているくせに。
「ルックは他の誰かじゃない。だから、楽しもうよ」
「・・・・・・」
「そうでなければ・・・」
「・・・何?」


「損してるみたいで嫌だ」


「・・・・・・・・。・・・・・・・・」
 絶句した。














 風のように気侭に。
 どこへも自由に吹いていける。
 あの子供と在ればそう出来る気がした。














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ルックです。
本編ではダナに連れまわされてただけなので(笑)