ダナ=坊ちゃん
<閑話 2>
「なあ、お前って何でそんな完璧なん?」 「節穴」 「へ?」 「シーナ。君の目には大きな節穴が空いてる」 ナンパ成功率を上げようとダナに声を掛けたシーナだったが、残念ながら本日店には女の子の欠片も存在しなかった。詐欺だぜっと喚いたシーナは、ダナを相手に管を巻くことにしたらしい。 それが命知らずだと言われる所以だろうが・・・ 「じゃ、聞くけど。シーナは何をもって僕のことを完璧だと思ったの?」 「財力・権力・容姿・家柄・頭脳・・・三拍子どころか何でも揃ってるだろ」 神が依怙贔屓しやがってっとカウンターに八つ当たりしているのを、店主が迷惑そうな顔で見ている。 「それを言うなら、シーナだって一般のレベルは楽にクリアしていると思うけど?」 「いーや!それは俺のもんじゃなくて親のだろ!」 俺は関係ねーもん、とやさぐれるシーナにダナに微笑が零れる。 それはとても優しい微笑で、ダナを知る者からすればとても貴重なものだったが、シーナは気づかなかった。 「僕のことをシーナがそれほど買ってくれているのは有難いけれど・・・やっぱり節穴だよね」 「だから、どこが」 「全てが僕の望んだことでは無いから」 シーナはダナの顔をまじまじと見つめた。 「財力が欲しいなんて言ってない。権力が欲しいなんて言ってない。容姿や家柄なんてどうでもいい。頭脳なんてあるにこしたことはない、それだけのものだよ」 「おま・・・・お前、それ・・・ぜってー他の奴に言ったら殺されるぞ」 金が欲しい人間なんて五万といる。もちろん権力も。 容姿や家柄だって大金を積んででも欲する者が居るだろう。 それを労せずして生まれながらに与えられている人間が言って良い台詞では無い。 「シーナだから言うんだよ。価値の基準をどこに置くかは人によってそれぞれ違う。僕はそれらのどれにも価値を見出せない。だから僕にとっては意味の無いものに『完璧』と言われても納得出来ない」 「この贅沢ものがーっ・・・だったら、お前の完璧ってのは何だよ?どんなものが価値あるわけ?」 言ってみろよとシーナが促すので、ダナもあっさりと答えた。 「自然に『在る』こと。何も疑問に思うこともなく、年をとることの出来ること」 やはり再びシーナはまじまじとダナを見つめた。 何度見てもその美貌は損なわれることが無い。・・・けれどどこか消えてしまいそうな存在感。 「僕にとって、普通こそ『完璧』なんだよ」 泣きそうに見えた。 「お前・・・・ちょっとジジ臭いぜ・・・てちょっ待」 「怒りの一撃」 その後のシーナを誰も知らない。 |
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シーナ好きですよ。何か。
シーナもそのうち老成しますが、まだ若いですな(は?)