ダナ=坊ちゃん
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深刻な表情で黙り込む竜洞の面々を他所にダナ一行はリュウカン医師が居るというリコン方面へと向かった。 「リュウカンは数年前に隠居したんだけどね、昔は色々とお世話になったよ」 「誰が?」 「僕が」 「・・・・・・・・・・誰が?」 「 僕 が 」 繰り返されるテッドの問いにダナも笑顔で繰り返した。 「生まれてから暫くは虚弱児でよく生死の狭間を徘徊ってたらしいよ。とりあえず落ち着いても病弱でしょっちゅう熱を出していたしね。テッドに会った頃にはすっかり元気になってたから知らないだろうけど」 「・・・初耳だぜ」 「初めて言ったから」 悪気無くダナはにっこりと笑う。幼心に(?)病弱だったからといって手加減されることを嫌った故か。 「いや〜お前が小さい頃はさぞかし美『少女』だったんだろうな・・・何で男なんだよ」 「シーナ」 何度失言をしても懲りないシーナはダナの微笑を受けて氷の彫像と化した。 「馬鹿」 ルックが冷ややかな視線を注いだ。 リュウカンが終の棲家として選んだ家はこじんまりとして、周囲には手入れされた畑があった。 そしてリュウカンは丁度畑仕事をしていたところで、ダナ一行に気付いて腰を上げた。 「おや、これは珍しいお客様じゃのぅ」 「お久しぶりです。リュウカン先生。お元気にされてましたか?」 「ほっほっ、何の見ての通りじゃよ。ダナ様もお元気そうじゃな」 「おかげさまで」 あのダナがしっかりとした敬意を払っている。 「今日はお願いがあって参りました」 「さて。隠居した身で力になれるかどうかはわからぬが、お話を聞かせてもらおうかのぅ」 一行は穏やかに言うリュウカンに家の中へと招かれる。 「時間もありませんので、早速用件に入ります。竜洞の竜たちが眠りの毒を飲まされ目覚めない。どうかリュウカン先生の技で竜たちを助けていただけませんか?」 「眠りの毒とは・・・これは厄介な」 眉を顰め、リュウカンは難しい表情を浮かべた。何故なのか誰がなどと余計なことは一切聞かない。 「リュウカン先生ならば、薬を作ることが出来るでしょう?」 「まぁ、作ることはのぅ、じゃが・・・」 「わかっています。その材料が難しいと、そういうことですね?」 「うむ。さすがにようご存知じゃの」 ダナはありがとうございます、と邪気の無い麗しい笑みを浮かべた。それはこの老人の言葉がダナにとって本当に嬉しいのだと意味している。 「大丈夫です。材料のほうはこちらで用意します」 「・・・よくよくダナ様はこの老い先短い老人を驚かせるのが上手いようじゃて」 ダナの言葉に瞠目してリュウカンは、悪戯っ子を嗜めるようにそう言った。 「何を仰います。リュウカン先生にはこれからも長生きしていただかなくては」 「隠居したんじゃがのぅ・・・」 「ええ存じております。ですが、リュウカン先生以上の医者が居無いとなれば仕方ないでしょう?後進を育てることも重要な責務かと・・・こんな若輩が言うことではありませんが」 「老体に鞭打つことじゃ・・・さて、では向かおうかの。一刻の猶予もならんじゃろ」 「はい」 立ち上がった一同はルックを見た。もちろんここに来る前にもルックの転移は有効活用された。 「人使い荒いよ・・・」 「若いうちの苦労は買ってでもしろって言うだろう?ね、リュウカン先生」 「君っ!全然っ苦労してないだろっ!」 「日々苦労のしっぱなしだけど・・・?」 「どこがっ!?」 至極不思議そうに首を傾げるダナにルックの血管がぶち切れそうになる。 「ほっほっほ、ダナ様にもご友人が増えて良いことじゃ」 「冗談じゃないっ!こんなのと友人なんてものになった覚えは無いよ!」 「酷い、ルック・・・僕はこんなにもルックのことを友人として頼りにしているのに・・・」 「っ君ね・・・・っ」 「・・・・・ダナ、いい加減そのへんでやめとけ・・・・」 テッドにはわかっている。ダナがルックの言動を全て『理解』した上で揶揄っていることを。 とても気に入ったんだろうということを。 「テッドは優しいね」 「君に比べたらこの世に生きる全ての者が優しいよっ!!」 ルックの叫びと共に一行を激しい風が覆った。 竜洞は暗い空気に包まれていた。 「団長・・・」 「ああ、わかっている。ミリア」 「しかしっ!」 「・・・1か全てか。それしかない」 「・・・・っ」 竜の肝は用意できない 『犠牲を出す覚悟はあるのか?』と。 竜の肝を用意するためには、竜を殺さなければならない。竜を救うために、竜を殺す。 竜洞に生きる者にとって、それは何よりも辛い決断となる。 「私の迷いがこの結果を招いた。ならば責任をとらねばならん」 「団長!・・・他に、他に方法が・・・っ」 「ミリア。わかっているはずだ」 「・・・・・っ」 他に方法は無い。魔法もこの毒には何の効き目も無いのだ。 「ミリア。竜洞のこと、頼んだぞ」 竜を失った騎士は最早竜騎士とは呼べない。 「団長・・」 「あの少年・・・いや、あの方ならばこの竜洞を良い方へ導いてくださるだろう」 「あんな子供が、ですか・・・」 納得がいかない風のミリアにヨシュアは苦笑する。 「今のお前にはわからないだろう。あの方は、特別な方だ」 この国にも。この世界にも。 「では、協力して貰おうかな」 「「!!!」」 頭上から響いた声に、ヨシュアもミリアも瞬時にその場を飛びのいた。 全く気配を感じさせなかった侵入者は宙に浮いていた。 「ハルモニア・・っ」 二人に鋭い雷撃が襲った。 |
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お年寄りには優しく!