ダナ=坊ちゃん

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「計画が上手くいかないことっていうのは多々あることだよね。その都度修正すれば良いだけだし、いざとなったらレパントにまかせて逃げちゃえば良いし・・・問題なし!」

 ありまくるだろう・・・という突っ込みは誰もしない。
 テッドは『お前はそういう奴だよ・・・』と達観しているし、ルックにはどうこう言う筋合いは無い。
「・・・別に君がどうでも良いんだけど、僕は戻って良いかな?」
 何故か今まで付き合ってしまっていたが、さっさと風の呪文で魔術師の塔に戻れば良いことにルックは遅まきながら気づいたらしい。あまりに事態が急変し、口を挟む隙も無かったので付き合ってしまったが。
「もうちょっと付き合って欲しいな。どうせ今から魔術師の塔に帰っても晩御飯の用意するだけでしょ?」
「・・・・・・・・・」
「レックナートは家事出来なさそうだもんね。あ、僕も今度ご相伴させて欲しいな」
 己の存在に意義に関してちょっとばかり疑問を抱かずにはいられないルックは悄然としたままダナに頷いていた。恐らく気づいていないだろう。
 ダナに目をつけられたのが運の尽き、そう思わなければやっていられない。
 いつかこの少年も諦める時が来るだろう・・・テッドは諦めた。
「んで、次はどこ行くんだ?」
 コウアンでの騒ぎを沈静させ、後任を託してから王都に向かうと・・・それこそ主君に忠誠を誓う騎士のごとくダナに宣誓したレパントから逃れるようにダナは街道を北に向かって歩いていた。
「セイカ」
 とても楽しそうにダナは教えてくれた。
「・・・何かあるのか?」
「あると言えばあるね。レパントの為にも回収しておかなくちゃいけないモノがあるし、言伝をしておきたい人も居るし・・・」
「今までみたいに飛ばないのか?」
「歩いていると敵に当たってLVが上がるし、お金も溜まるし一石二鳥!」
 それ以上強くなってどうする?金には困ってないだろう?











 セイカは小さな村で、のんびりとした空気がそこかしこに漂っている。
 否、それこそが現在の帝国の中では異質なのかもしれない。
 何故ここまで平和そうなのか?
「うん、それはね・・・」

「ちょっとそこ行く可愛いお嬢さん」

 一人の少年を通り過ぎようとしたところで、当の少年から声を掛けられた。
 『お嬢さん』というのはまず間違いなく、ダナを指しているに違いない。テッドはひやりと背筋が凍った。
 ダナはその容姿について、時に最大限に利用するくせに女に間違えられるのが嫌いなのだ。
 しかし、ダナは聞こえなかったように通り過ぎていく。
「君!君のことだよっ!」
 少年はダナを追いかけ、回り込んだ。
「君みたいな可愛い子が一人で歩くなんて危ないな。俺はシーナ、君の名前は?」
「ダナ」
「君にぴったりな素敵な名前だ!俺もダナ、て呼ん・・・・」
「ダナ・マクドール」
「・・・・へ?マク・・・・ドール???」
 どこかで聞いた名前だな。貴族なのか。でも可愛いから大丈夫。
「ちなみに性別、男」
「おと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・男!?!?!?!?!!!!」
「初めましてシーナ。予想に違わない登場の仕方に笑いも出ないよ」
 男だということが信じきれないのか、ダナの顔をまじまじと見つめている。
「いやー・・・冗談キツイなぁ、ダナちゃんが男なわけ無いじゃん!こんなに可愛いのにっ!」
 あ、地雷踏んだ・・・とテッドが思った時には遅かった。

「切り裂き」

「ぎゃーっ!!!」
 鋭い風の刃が少年を襲っていた。容赦なく。
「おい、ダナ・・・さすがに通りすがりの一般人に紋章はマズイだろ・・・」
「大丈夫、関係者だから」
「関係者?」
「うん。レパントの息子」
「へ?」
 そう言われてみれば、似ていると言われれば似ている気もしないでは無い。
 性格が軽すぎて、あの重厚なレパントとは重ならないが。
「うげっ親父のまわし者!?」
 ボロボロになりながらも、シーナは逃走体勢に入っていた。
「いい子だから大人しくしようね、シーナ。もう一度切り裂き喰らいたい?」
 麗しい微笑に含まれる悪魔的な匂いに、シーナは顔面を蒼白にさせた。
「レパントに言われて探しに来たわけじゃ無いんだけど、どうせゆくゆくはレパントのあとを継いで貰おうと思ってるし、ちょっと付き合ってもらいたいんだ」
「は、親父の後継ぐ?俺は商人になる気は更々ねぇぜ」
「わかってるよ。誰も商人になってもらいたいわけじゃない。ただの大統領だから」
「へぇ、ただのだい・・・・・・大統領?」
「うん、大統領」
 シーナの目が呆れの色を帯びた。ダナの背後に居るテッドたちに『こいつ何言ってんの?頭おかしい?』と視線を投げかけてくるが・・・・無視した。
「レパントにはこれから赤月帝国改めトラン共和国の初代大統領になって貰う予定なんだよ」
「・・・・・・・・・・。・・・・・・・・話が全然わからねぇんだけど・・・?」
 今の説明でわかれと言うほうが無謀だ。
「まだこのセイカには伝わって無いんだろうけど、17代皇帝バルバロッサ・ルーグナーは退位した。王制は廃止し、共和制に移行する。その共和国初代大統領にレパントを推挙した」
「・・・いや、幾ら俺がセイカみたいに田舎に居るからってな、そんな嘘に騙されるかっつーの」
「嘘かどうか、一緒に来ればわかる話さ。反抗期で家を飛び出したもののさしたる目的もなくふらふらしているだけなんだから丁度良いでしょ?」
「誰が反抗期だ!俺は運命の女を探しに・・・」
「それが本当に運命なんてものなら苦労はしないさ。一般に運命なんて呼んでるものは結果だけを見て、誰かがそれを後から因縁づけただけのもの。本当の運命は、こちらの意図なんてお構い無しに向こうからやって来て、好きき放題にして去っていく」
「・・・・・なら、あんたこそ運命だな」
 意趣返しのつもりだったのだろう。シーナの言葉にダナはきょとんとして・・・噴出した。
「そうだねぇ・・・なるほど。確かにシーナにとったらそうかも」
「おい」
「悪いけど、運命に巻き込まれて貰うよ」
「俺の意見は?」
「聞いてあげない。僕は運命らしいから、相手の都合なんてお構いなしなんだよ」
「がーっ何なんだっ!お前、いったい何者!?」
 ついにシーナが叫んだ。



「ダナ・マクドール。赤月帝国を滅ぼす者。そして・・・己の欲望を追求する者」












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シーナ登場!