終わりのはじまり。それは振出し
坊=ダナ・マクドール
2主=ローラント
「君が望んだものを持ってきてあげたよ」 にこにこと満面の笑みで宣ってくれた相手の後ろには、幼馴染が渋い表情で立っていた。 何故ここに居る?という問いは最早意味が無い。 この世に出来ないことは無い。そう言い切ってしまいそうな目の前の人物なのだから。 「はいはい。ジョウイも軍主殿も仲直りの握手して」 「「は?」」 両者の口から同時に漏れる。 「何て言うかさ。二人とも極端だよね。話し合えばすむ問題をどうしてわざわざ戦うかな。二人の望むところは詰まるところ、お互いに守りたいってことだろ。ホント、男って奴は馬鹿なんだから。自分が自分が、て何でも自分主義で相手も同じように思ってることなんて少しも考えないのかな?挙句に互いの命を奪いあってるなんて本末転倒も良いところ。はっきり言わせて貰うならタダの馬鹿。愚か者」 陶々と流れていく台詞に背後で聞いていたビクトールとフリックの顔が引きつってく。 「そういうのって周りの人間のほうが迷惑なんだよ。ということで、さっさと仲直りして。その後、同盟軍に降伏宣言してもらうから」 「え・・・」 ジョウイが目を見開いてダナとローラントを交互に見やる。 「戦うまでもなく敗者は明白。無駄に戦ってハイランドの民たちを死なせることはしたく無い。そちらだって同じことだろう?てことで。敗北宣言してもらうことにしたの」 同盟軍の代表の皆さんも快く頷いてくれたしね、というダナの言葉に同盟軍一同は沈黙する。受け入れなければその場で血祭り・・・のような脅しをしていおいて。 「というわけで気がすむまで二人で話し合って。ついでに武器は没収ね」 ダナは戸惑う二人を天幕に残して、皆を引き連れ外に出た。 ルカは退却の準備を始めているのでこの場にはおらず、クルガンたちも文句がありそうな顔をしながらもそれぞれの部隊に戻っていった。ルルノイエに戻れば一同総出で問い詰められるだろう。 「ダナ」 「何?熊」 「・・・・・」 酷い切り替えしに、ビクトールは出鼻を挫かれる。 「ダナ。本当にルカと行くつもりなのか・・・?」 代わりにヘタレ万歳、なフリックが噴出しそうに真面目な顔で問いかける。 「本当に行くつもりですけど?だって、フリックもビクトールも僕と一緒に居てくれなかった」 「「・・・・・。・・・・・」」 「生きてた癖に」 そこを責められると二人とも言葉が無い。 「ルカはね。余計な矜持なんて無い。欲しいものは欲しい。いらないものは消す。いっそ清清しくわかりやすい。馬鹿みたいに素直だ。 静かなダナの言葉に、全身が総毛だった。 ハイランドの民を思う姿に、嘗ての英雄としての慈悲を見た気がしたのに。その言い方は、まるで。 ハイランドを憎んでいるかのように、聞こえた。 「宿星は集わなかった。さぁ、世界はどんな変容を見せるのかな?」 こちらの畏れをわかっていながら、ダナはくすくすと笑い声をたてる。 「悪趣味だよ、君」 少しばかり顔を青ざめさせながらもルックは渋い顔で文句を言う。 「そう?・・・だって、『運命』なんて」 そんな胸糞の悪くなるもの、丸めて投げて踏み潰してソウルイーターの餌にでもしてやるよ。 ダナの呟きに右手のソウルイーターが『んな不味いもんっ』と密かに蠢いた。 「覚悟しておいてよ。これからも宿星なんて悉く潰してやる」 それは管理者であるレックナートとルックに対する宣戦布告だった。 「その為なら喜んで悪にもなるよ」 「・・・冗談にもならない」 「本当だね」 今回まさに悪の親玉と化していたダナだ。 「だけどそろそろこのあたりで退場だ」 「ダナ!」 「それじゃ。帰りはまたお願いするね、ルック」 ルカが呼んでいる。 「君は僕のことを何だと思っているんだい」 「えー、優しい友達?」 ルックが奇妙に顔を歪めるのに、ダナは朗らかに笑った。 「君は・・・」 「ルックとはまた会えるかな。・・・二人には無理かもね」 生きる時間が違うから。 「ダナ」 身を翻そうとしたダナの腕をビクトールが掴んだ。 「すまない」 何が、とは問わない。 ダナは慈悲にも似た微笑を浮かべ、ビクトールの腕を解いた。 「ルカ」 「・・・どうした?」 「居たかったら、居てもいいよ」 この手を取らなくても。ダナは一人で生きていける。 「馬鹿か」 「む」 夜陰に紛れて去るためにフードに隠れたダナが不満の声をあげる。 「お前は俺のものだ。離れていくなら殺す」 「・・・・・もう、ホント」 ダナは、その首にぎゅっと抱きついた。 目頭が熱い。もう、涙などとうの昔に枯れ果てたのに。 「最後に許してあげようと思ったのに」 「余計な世話だ」 ルカはダナを抱き上げ、馬の上に載せた。 「死んでも傍に居てやる。 半年後、ハイランド王国はハイランド合衆国と名を改めた。 |
続く!・・・みたいな終わりですね。 まぁ、気が向いたら幻水3の世界あたりに突入するでしょう(笑) |