戦神の御手に踊れ


坊=ダナ・マクドール
2主=ローラント







「あの、ルカ様・・・は?」
「ああ。お父さんと仲良しタイム」
 沈黙が落ちた。


(・・・・・・・・・・・・・・・・・・な、『仲良しタイム』・・・・・・・・・・・?・・・・・・!?


 会議に集まった主要な顔ぶれが、不気味な単語に思考を一瞬断絶させた。
 いったいそれはどんな『意味』なのか。
 まさか『言葉通り』の意味ではなかろうと思うが・・・何と言っても目の前で朗らかに笑っているその人は

何を仕出かすかわからない 総司令官殿だ。

 今やある意味、ルカ皇子を凌ぐ    『王国の脅威』である。

 しかも性質が悪いことに、やることなすこと全て、その経緯はともかく結果は最良。文句を言おうにも文句を言う隙が無い。
 いったいどうすればいいのか、冷や汗やら脂汗やら滲ませる中・・・会議室の扉が開いた。
 皆の視線が一斉にそちらを向く。

「・・・な、何だ」

 姿を現したルカが、まるで救いの神を見るような皆の視線に顔をひきつらせた。

「やぁ、こっちこっち」
 にこにこと、ダナがルカを自分の隣へと手招きする。
 それに少々嫌そうな顔で歩いていくと、全員が起立した。漸く会議の開始である。

「では、これより臨時会議を始める」
 先ほどまでの笑みを消した総司令=ダナに、『今までのはいったい…』と内心で混乱しながら将たちの顔もひきしまる。

「まずは、皆ご苦労。連戦の中、満足のいく結果を出してくれたことを喜ばしく思う」
 裏の意味は、『まさかあれだけ手回しして負けやがってたら容赦しねぇぞ』となる。
 察しのいい幾人かが、さっと顔を蒼ざめさせた。
「未だ、占領した都市に留まりその沈静化と施政に尽力してもらっているためこの場に居ない者も居るが、時の流れは我らを待ってはくれぬ」
 昔とった杵柄のせいか、雄雄しい言葉遣いのダナに『この二重人格めが』とルカは横で思うが、間違っても口に出したりはしない。ルカは命を惜しむことを覚えた。
「同盟軍の勢いも衰え、今こそ絶好の時にある。皇子と相談し、我らは次にマチルダ騎士団に攻め入ることを決定した」
 相談も何も、お前端から決めていただろうが・・・とルカは内心でのみ呟く。
 そこで将の一人が挙手をして、発言の許しを得た。
「お言葉ですが、マチルダは中々に手ごわくそう簡単には落とせません。先にティントのほうが宜しいのではないでしょうか?」
「ティントは周囲を険しい山に囲まれた自然の要塞の中にある。立て篭もられては厄介だ。それよりも後の禍となるであろうマチルダを落としておいたほうが、同盟に打撃を与えることになる」
 理路整然とした言葉に、将たちも頷いている。
「それに、マチルダは今分裂の危機にあり、そこに付けこめば大した労も要らず落とせるだろう」
 顎に手を乗せ、凄絶なと表現するに相応しい美貌の笑みに…その場に居る者たちの背筋をぞっと寒気に似た何かが通りぬけた。

「さて、今回の策だが・・・」





















 マチルダ騎士団領の本拠地であるロックアックスの城は、相次ぐ同盟都市の陥落の報に堅固な守りを更に厳しく、強固なものにしていた。
 街には戒厳令が敷かれ、外から入って来る者には必ず身分証明を提示することを求められ、騎士たちが巡回する。ぴりぴりとした空気が街を覆い、住人は明日をとも知れぬ王国の攻撃に身を小さくして生活を送っていた。

「何ともよろしく無いな」
「ああ、全くだ」
「若い女性が誰も出歩いていない」
「ああ、そう・・・はぁっ!?」
 同僚の言葉に頷いていたマイクロトフは、眉をしかめて窓枠に寄りかかっている男を見た。
 赤騎士団団長カミュー。年若い身でありながら一団を任せられた力量は飾りものではなく、見かけと行動はどれほど軽薄でもその魂には騎士として尊敬するものがある・・・・はずとマイクロトフは思う。
「素っ頓狂な声を上げるな、マイク。憂えるべきことでは無いか・・・女性とは花。街を彩る華麗なる花…こう視界に入ってくるのがむさ苦しい男ばかりでは、憂鬱になる」
「・・・・不謹慎だぞ」
 カミューとは反対に浮いた噂一つとないマイクロトフが更に顔を険しくする。それをまぁまぁと宥めながら、この同僚の魂の形はきっと真四角に違いあるまい、と常々思っていることを確信する。
       でわざわざ俺のところに顔を出したのは何だ?」
 戦時下に等しい現在、身元確認やら巡回やらの際に捕えた大量の不審者の対処でどの騎士団も目のまわるような忙しさなのだ。その8割方、害の無いただの一般市民なのだが…ここで手を抜いては肝心の間者を取りこぼすこととなる。無駄骨であっても疎かには出来ない。
 頭の痛いことである・・・根っからの騎士であるマイクロトフは日に日に溜息が大きくなっている。

「お前のところにも届いたのでは無いかと思ってな」

 ひらひら、とカミューは懐から取り出した手紙を振ってみせる。
「な・・・っ!?おま・・・っ」
 マイクロトフは焦ったように、周囲を見渡した。
「心配しなくとも、人払いはしておいた」
 身を乗り出していたマイクロトフは、はぁと溜息をついて椅子に座りなおした。
「そういう反応をするということは、やはり来たのだな?」
「・・・・ああ」
 マイクロトフは、執務机の引き出しを開くと更にその奥に隠しになっている引き出しの鍵を開けて、カミューが持っているものと同じような手紙を取り出した。
「見せてもらっても構わないか?」
「構わない」
 カミューはマイクロトフから手紙を受け取り、さっと目を走らせる。
「・・・ふむ、私のところに届いたものとほぼ同じだな」
「どうやらそのようだな」
 こちらもカミュー持参の手紙を読み終えたマイクロトフが相槌を打つ。
 今朝方、唐突にカミューとマイクロトフの元に届いた…というよりは私室の机にいつの間にか置かれていた身に覚えの無い手紙。

「・・・本当のことだと、思うか?」
「在り得ることだろうな」
 搾り出すようなマイクロトフの言葉を、カミューはあっさり肯定した。

 発信人不明のその手紙には、要約すれば3つのことが書かれていた。
 一つ、ハイランドが他の都市に向けたのと同様の降伏勧告をマチルダ騎士団領の総責任者である白騎士団ゴルドーに送ったこと。
 二つ、降伏後には白騎士団長に相応の地位を与えると約束したこと。
 三つ、但し、そのためには残る二人の団長を殺害しなければならず、ゴルドーがそれに了承したこと。

 本来ならば『馬鹿なことを』と笑ってこんな手紙など屑入れ行きにしたいところだが、全くもって在り得ることなだけに、二人の顔は憂鬱だった。
 白騎士団長ゴルドーは騎士にはあらざる卑劣で強欲な男である。あんな者が騎士…しかも自分たちの騎士団を統括する団長だというのだから世も末だ。団長に就任した当初より、その地位を金で買ったと評判だが、恐らく間違いでは無いだろう。

「しかし面と向かって、『こんな密告があったんですが本当ですか?』などと聞くわけにいかないしね」
 事実無根であれば、反対に自分を陥れるつもりかとこちらが捕えられかねないし・・・事実であれば、飛んで火に入る夏の虫だ。その場で二人の命は儚く消えるだろう。
 二人の取れる手段といえば、どんな状況でも対応できるように準備を整え静観するしか無い。
「それにしてもハイランドに新たに就任したという総司令官は余程有能な人物らしい。立て続けに三つの都市を陥落して、新同盟軍も寄せ付けなかったらしい」
 いったいどこにそんな人材が隠れていたのか。
「・・・それにあのルカ皇子が命じたというには、その人品も卑しからぬ人物らしい」
 占領された都市の噂を伝え聞く限り、ルカ皇子の代名詞であった虐殺が行われた様子も無く、兵士たちの略奪や暴行も行われず、市民は丁重に扱われ、総司令官が任命した代理総督によって規律正しく治められているらしい。
「全く、信じられん。何が起こっているというのだ?」
「それは私も聞きたいところだよ」
 あの血まみれた『狂皇子』ルカは、どこに消えてしまったのか。
「正直今のハイランドならば、都市同盟より余程ついていくに不満は無い気はするのだよ」
「カミュー」
 発言を嗜めるようにマイクロトフが渋い顔をする。
「ただねぇ。やはり・・・今までが今までだけに、いつ手のひらを返されるかわからない。そのときに犠牲となるのは市民たちだ」
「・・・・そうだな」
 何を選択するのが最善の道なのか・・・わからなくなっていた。

 そんな二人のもとに、ゴルドーから召喚状が届く。
 曰く、現状報告に顔を見せろということだが・・・そんなものは面倒だ、として未だ嘗て求めたことは無いというのに、この心変わりは何ごとか。
 ますますもってあの密告が信憑性を帯びてくる。

「どうする、カミュー?」
「・・・そろそろ潮時なのかもしれないね」

 常に無いカミューの真面目な表情、マイクロトフのいつも以上に厳しい雰囲気。
 互いに顔を見合わせ、心を決めた。



 団員が悲壮な…けれど、それぞれの団長と同じような顔でロックアックスの城内に居るゴルドーへ会いに行く団長二人の背を見送った。

『もしも自分たちが一時間経っても戻らなかった時は、街を出て新同盟軍へ行け』
『間違っても自分たちを助けようなんて思うな』


 偵察と訓練の名目で、赤青両騎士団員はほとんどがロックアックス城の外へ移動していた。
 城内に残っているのは僅かな者のみ。
 残された者たちは、自分たちの力なさに歯噛みした。


「二人ともこんなところに置いておくには惜しい人材だよね」
「・・・御意」
 悲嘆にくれる団員たちをこっそり見ていた人影が二人。
 ダナとカゲである。カミューとマイクロトフの元に手紙を運んだのはカゲの仕業であった。

『三つの手紙で内部分裂を誘発し、共食いをさせる。その混乱に乗じて一気に攻め落とす』

 名づけて『漁夫の利作戦』。
 赤青騎士団長の他に、ゴルドーの元へも手紙は届けられた。ただし、これは『ハイランド』の名で。
 内容は、赤青騎士団長二人がハイランドへ保護を求めてきたこと。その証としてゴルドーの首を差し出すと言ったこと。一旦は了承したものの、主筋にあたる人間を裏切るような人間は信用に値せず、是非とも白騎士団長の手で二人を処断してもらいたいという旨、手紙にしたためた。
 どうやらゴルドーは微塵の疑いもなくそれを信じたらしい。

「罅の入った脆い団結を、揺すぶって粉々にしてやろう」

 ダナの策を聞いた将官たちは、彼だけは絶対に敵にまわしてはならない・・・と改めて思ったらしい。
「でも団員を外に出されたのは計算違いだったな…相打ちして数を減らしてもらう手はずだったんだけど」
 ま、いいか。とあくまでダナは楽観的だった。
「カゲ、外で待ってる団員たちに『団長の危機だ』て言って呼び戻してくれるかな?」
       御意」
 ダナの作戦は臨機応変に変化する。どんな手段を使おうと、望んだ結果に繋がればそれでいいのだ。
「頼んだよ。      気をつけて」
「・・・我が君も、御身何卒お気をつけ下さいますよう」
「ありがとう」
「御前失礼致します」
 気遣うカゲに心からの笑みで応えて、ダナは送り出した。
「さてと、僕は正義の味方に大変身だ」
 ふふっと笑ったダナは、堅固そうに見えて今にも崩れようとするロックアックス城を見上げた。






「青騎士団長マイクロトフ殿、赤騎士団長カミュー殿。参られました」
 入れ、と中から声がした。
「「失礼します」」
「よく来たな」
 お前が呼びつけたんだろうが、とは口にせず『いえ・・』と首を振る。
 カミューは常には従者に持たせている己の剣をゴルドーが自分で持っていることを確認した。対して二人は控え室で半ば強引に預けさせられたために丸腰だ。
 カミューとマイクロトフは一瞬目を見交わした。
「・・・現状の報告をということで参上しました」
「うむ」
 だいたい口上でわざわざ伝えずとも、毎日纏めた報告書を上げている。それに目を通していれば現状など聞くまでもなく明らかだろう。しかも、聞くと言ったわりに興味が無さそうだ。
「ところで」
「はい?」
「お前たちの団員たちを城外に連れ出したようだが・・・」
「それについては、偵察と訓練のためと許可を得ましたが?」
「そう・・・そうだったな」
 不審である。
「何か?」
「うむ。・・・まさかとは思うが、お前たちがどこぞに寝返ったという噂を耳にしたのでな」
「ね・・っ!?」
 マイクロトフがとんでもない濡れ衣に声を上げかけるのをカミューが制した。
「失礼ですが、いったいどこから耳にされた噂です?」
「さぁ・・・どこであったか」
 カミューはふ、と冷笑を浮かべた。
「そのような根も葉もない噂を、まさかゴルドー様ともあろう方が信用はなさらないでしょう」
「も、もちろんだ」
 と言い切るわりに、いつも以上に部屋は白騎士たちで囲まれている。
「それでは、報告は以上ですので失礼いたします」

「ま、待て!」

 背を向けて立ち去ろうとした二人を、ゴルドーの傍に控えていた副長が呼び止めた。
「何か?」
「ゴルドー様に対して、ほ、他に何か言うべきことは!?」
「・・・・・・・は?」
「しらばっくれるつもりか!」
「何を・・・」
「騎士の魂を売り渡した汚らわしい売国奴めっ!!」
「な・・・っ!?」
 何もしていないのに何故そこまで蔑まれなければならないのか。
 それを言うのならば貴様らのほうだろうっとマイクロトフは反射的に腰に手をやった。・・・いつもならば、そこには剣が携えられている。
「っやはりな!・・・ゴルドー様、ご命令を」
 何がやはり、なのか。
 この時点でさすがに何かがおかしいとは思ったが…それを確かめる暇も無く、白騎士たちが動き出す。
 剣呑な雰囲気で剣を鞘から引き抜き、二人に突きつけたのだ。
「・・・これは、穏やかではありませんね」
「どういうつもりだ?」
「ゴルドー様の命を狙ってやって来た反逆者めがっ!」
 カミューとマイクロトフは背中合わせになり、懐に忍ばせていた短剣を取り出した。
 どう見ても話し合いで収まる状態では無かったからだ。
 ある程度覚悟はしていたが、はいどうぞと命を差し出すほど物分りはよく無い。
 ましてやこんな腐れた男たちにやるほど自分たちの命は安く無い。
「むむっ、短剣を忍ばせているとは・・・っ!」
 捕えろっと命令が下り、二人に騎士が一斉に襲い掛かった。
 日頃の鍛錬を怠けている白騎士などに遅れをとる二人では無い。だがさすがに短剣では限界がある。
 何とか隙をついて逃げるべきなのだろうが・・・




 ガシャンッ・・・ッ!!




 いきなり、部屋の窓ガラスが外からの衝撃らしきものに粉々に砕かれた。
 室内にきらきらとガラスの粒子が舞い落ちる。


「正義の味方、参上!」


 正義の味方、という癖に黒いマントを翻し、真っ黒な服を身に纏った…何者かが身軽に床に着地すると、『はいっ!』と無造作にカミューとマイクロトフに投げてきた。
 何だっ、とそれを認識するまえに反射的に受け取ると、奪われた自分たちの剣で・・・
「それがあればここを脱出するくらい出来るだろ!早く行って!」
 背中越しに二人に叫ぶ。
「し、しかし・・っ」
 顔は見ていないが、背格好や声からして・・・突然現れた人物は、青年というよりまだ少年だろう。
 そんな人間を見捨てて逃げるようでは騎士などとは呼べない。
「僕に構うな!・・・この程度の輩、正義の味方にとって物の数では無い」
 いきなりの侵入者に呆然としていた白騎士たちが我をとりもどす。
「何を・・っこの!!」
 頭上から振り下ろされた剣を、容易く受け止めて・・・『正義の味方』は素早い動きと巧な手さばきで騎士の手から剣を弾き飛ばした。
 それだけでカミューにもマイクロトフにも目の前の人物が並々ならぬ剣の使い手であることがわかった。

「ほらっ早く!」

「・・・っかたじけないっ!」
「感謝するっ!!」
 覚悟を決めた二人は、扉を封じていた騎士を払いのけると階下に駆け下り・・・・・


「団長っ!!」
「ご無事でっ!!」

「なっ・・っ!?お前たち・・・っ」
 カミューとマイクロトフは目を剥いた。
 何とそこでは、城外に先に移動させていたはずの両騎士団の面々が白騎士たちと戦っていた。

「団長の危機だと伺い、急ぎ参上しました!」
「ご命令に背いたこと申し訳ございませんっ!しかし我らは・・・っ」
「我ら騎士団は、マイクロトフ様、カミュー様がいらっしゃってのもの!」
「お二人をみすみす死地に赴かせるなど、騎士として出来ませんでした!」
 呆然としていたマイクロトフは、熱い思いに感無量の面持ちで「すまないっありがとう!」と叫んでいる。
 その横で、カミューは・・・何か・・・何者かの意志が自分たちを操っているような予感を覚えた。

 密告書・・・ゴルドーの言動・・・訳のわからない言いがかり・・・団員たちを呼び寄せたのは誰だ?
 いったい、誰が・・・『何の目的』で・・・・?

「カミュー、何を呆けているっ!行くぞ!」
「あ、・・・ああっ!」

 自分たちは誰に・・・・・             『踊らされている』?




 カミューが何かに気づきかけていた頃、ゴルドーの部屋ではあらかたの騎士が『正義の味方』によって片付けられていた。
 顔の半分は、服と同じ黒い布で覆われ容貌は、はっきりとはわからない。
 それでも、その剣技の鋭さと命を奪う躊躇いの無さに・・・残されたゴルドーとその副長は戦慄した。

「ま、待ってくれ・・・そ、そうっ話せばわかる・・っ」
 団長を庇うどころか、早々から腰が引けている。
「それでも騎士か?騎士の名が泣くぞ」
「ひいっ!」
 震える手からあっけなく剣は弾き飛ばされ、容赦なく白刃が襲う。

「ゴルドー」

「・・・貴様、何者だ・・っあいつらの仲間か・・・っ!」
 こちらは副長よりはまだマシらしい。
「待て、あいつらに組したとしても碌な地位は与えられぬっ!私ならば・・・そう!あいつらの代わりにお前をどちらかの騎士団の団長にしてやろうっ!」
「愚かな」
 沈みゆく騎士団において、それがどれほどの価値を持とうか。

「ゴルドー、その強欲と身に余る野望が己が身を滅ぼすのだ」

「何をっ!!」
 ゴルドーが激しく斬りかかって来た。
 溜まらず『正義の味方は』押されて、壁際まで追い詰められる。
「ふははっ!口ほどのものでもな・・・っ」
「だから馬鹿だと言うのだ。相手の技量も見極められず、何が騎士だ」
 己より二周りはあろうかというゴルドーの剣を受け止めて、ぴくりとも動かない。
「ぐ・・っ」
「闇もお前の魂を厭うだろう。永劫に狭間で苦しむがいい」
 ゴルドーの剣を払いのけた剣が、・・・・気づけば、ゴルドーの胸に突き立てられていた。
「が・・・あ・・・がは・・っ」
 巨体が崩れ落ちていく。
 そのゴルドーの指が、『正義の味方』の顔を覆っていた布に引っかかり、正体を露にする。
 死ぬ行くゴルドーの濁った瞳に映ったもの。

「・・・死・・神・・・・」

 何の感情も浮かべない・・・この世のものならぬ冷たき美貌の、死神(−ダナ−)。
 
「ご名答」
 ダナは僅かに口元を歪ませると、ゴルドーの息の根が完全に止まったことを確認して・・・騎士団の人間から奪った剣を、その胸に突きたてた。

「さてと、急いで戻らないと」

 すでに進軍を開始しているだろう、ルカの元へ。



















いつも以上に長い・・・ロックアックス城戦は一気に書き上げたかったので仕方なく・・・はー疲れた・・・