僕は君と友達になりたい だって僕は君の友達だから
ダナ=坊ちゃん
*2*
Close Encounters of the Third Kind
長く旅をして色々な人々と出会った。 善人も居れば悪人もおり、それは決して外見では判断がつかない要素だった。 テッドが戦場でテオ・マクドールに拾われたのは本当に偶然が重なった末の結果だった。 何かを狙っていた訳では無い。 いや、もしかしたら、らしくなく郷愁に誘われたのかもしれない。 しかしよくも帝国五将軍とも呼べる相手が身元不明の孤児同然のテッドを拾う気になったものだ。 全くの善意、という訳ではさすがに無いだろうと意気揚々と帰途につく軍の隅でテッドはこれからのことを考えていた。 テオが率いる軍勢は非常に統率がとれていて、途中で略奪を行うこともなく指示に従っている。戦に勝ったからというのも大きいだろうが、やはりトップに立つ人間とその意思を通す者たちの意識の高さだろう。 テッドが知る軍の中でも随一のものであると判断が出来た。これに喧嘩を売ろうとしている同盟は馬鹿なのか、もしくは負けないほどの軍を持っているのか……時間はあるので色々なことを考える。 「テッド君。うちにも君と同い年の息子が居るのだ。良ければ仲良くして貰いたい」 共に来ることになったテッドにテオはそんなことを告げた。 「……はい」 世話になろうという相手にそう言われて断れる訳が無い。 テオの人格からするとその息子が我侭な貴族の坊ちゃん、ということは無いだろうが。 「親の贔屓目では無いが、素直な子だ。留守がちな私の身をいつも案じてくれる心優しさもある」 べた褒めである。これが親の欲目でなければそれはそれで心配になってくる。 そんな聖人君子な子供が居るのか、と。 本人に会う前から少々苦手意識が芽生える。 「お会いするのが楽しみです」 そのくらいの社交辞令を口にする程度にはテッドの本来の年齢は高かった。 さすが帝国五将軍であるテオの屋敷は大きかった。しかし華美ではない。 しっかりと手入れはされているが無駄な装飾は極力排除されていた。 貴族の屋敷でやっていけるのかと少々心配だったテッドは僅かではあるが安堵した。 これが途中で目にした薔薇で取り囲まれた屋敷であったならテッドは一目散に逃げ出しただろう。 「お帰りなさいませっ!」 玄関を潜ったテオに少し高い子供の声が迎える。 「おお、ダナ。元気にしていたか?」 「はい!父上も……」 テオの背後でそっと伺っていたテッドは絶句して固まっていた。 そこに立っていたのは子供につける形容としては不釣合いながらも絶世のと言って差し支えない これなら確かにテオが親ばかになるのも無理は無い。 (え、でも待てよ……確か、息子って言ってなかったか……?) 「ようこそっテッド君!僕はダナ。よろしくね」 「僕……?」 差し出された手を呆然と見つめながら、近づく顔に動悸が激しくなる。 後に『俺のあの時のトキメキを返せ……っ』とダナに詰め寄ることになるのだが。 「テオ・マクドールの一人 反応の鈍いテッドに再度言い直したダナは、とても男であるとは信じられない輝くばかりの笑顔を浮かべた。 え、これが本当に男?嘘、冗談……え? 「よ、よろしく……」 半分意識を飛ばしながらテッドはそれだけを口にした。 「初めまして、テッド君。私は坊ちゃんの従者をしているグレミオと言います。よろしくね」 顔に盛大な傷のある男は物腰柔らかに笑いながら自己紹介をしてくれた。 「テオ様と坊ちゃんは暫く情報交換されるだろうから、先にテッド君が使う部屋へ案内しますね」 「は、はあ……あ、と初めまして。テッドです。お世話になります」 我に返ったテッドは改めて自己紹介をして頭を下げた。 「どうか自分の家のように寛いでくださいね。坊ちゃんと仲良くしてくれると嬉しいです」 「……ありがとうございます。こちらこそ」 ほんの一瞬とも言えるダナとの邂逅だった。 しかし何故か、テッドの内に広がったのは悲しいほどの歓喜だった。 その自分の心の動きが理解できず……戸惑うばかりだ。 (……一目ぼれして、男とわかって即失恋したとか?……いやいや、さすがにそれは無い) 案内された部屋で頭を抱えるテッドだった。 |
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訳:未知との遭遇
テッドサイドです。
大混乱のテッド(笑)