43.雷神  (幻水/フリック・ルカ・坊ちゃん)




坊ちゃん=ダナ











 暗雲の隙間から、光が槍となり、地上へ降り注ぐ。
 雷光。雷鳴。
 地上を照らし、地上を揺るがすその天変地異を。
 
 ダナは静かに見つめていた。


「何を見ている?」
 窓から外を眺めていたダナに、書類へサインをしていた手を止め、ルカが話しかけた。
「ん?・・・青い・・・・・稲妻。なつかしいな、と思って」
「なつかしい?」
「うん。・・・・知り合いを思い出した」
「お前の知り合いと言えば・・・・解放軍時代の奴か?」
「そう・・・生きてるのか、死んでるのか・・・わからないけど」
「どういうことだ?」
 興味を示すルカに近寄り、ダナはくすりと笑った。
「教えて欲しい?」
「・・・・・・」
「ん?」
 ルカの顔をダナが覗きこむように眺める。
「・・・この俺に、そんなことを言えるのはお前ぐらいだぞ・・・」
「言っても気にしないっていうの知ってるからね。だいたい、ルカは怖い顔し過ぎ」
「これが素だ」
「うりゃっ」
 むかっとしたルカの眉間にダナの指が突きつけられた。
「・・・何をする」
「マッサージ。ここに皺寄せると年取って見えるし、不機嫌そうに見えるから」
「・・・・・もういい、やめろ」
 諦めの吐息と共に、ダナの手を軽く払った。
 ダナに振り回されるのは、ルカにとって日常茶飯事になりつつある。
 問題は・・・・それが嫌ではないということなのだ。



「僕の恋人」


 ぽつり、と何気なく落とされたダナの一言。


「何?」
 ルカの動きが止まった。
―――― て、言ったらどうする?」
 誰もが惜しみなく賞賛する美貌に、艶めいた微笑をのせる。

「俺の目の前に無いものを、どうしようもない・・・・だが」
「だが?」
「奪うのならば、殺す」
 何を、とは言わないルカの言葉にダナは笑い転げ・・・・・抱きついた。

「何だ」
「・・・・・・・大好きだよ、ルカ」
「・・・・・・・」
「あ、照れてる」
「・・・だから、お前は・・・・っ・・・・もういいっ!あちらへ行けっ!仕事が全然進まぬわっ!」
「は〜〜い」




 その頃、ルカの部屋の扉の前で。
 気まずい思いで書類を抱えて突っ立つクルガンの姿が在った。










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・・・・フリック、思いっきり蚊帳の外(苦笑)