4.ピノキオ 【幻水】




坊ちゃん=ダナ









 これは夢なのだ。
 そうわかっているのに、鼻は無情にもどんどん伸びていく。
 非現実。
 起こりうるはずのないもの。
 だから、夢だとわかっているのに・・・・。


 もういいっ!!


 こうして知らしめて貰わずとも、僕はわかっている。誰よりも!
 己が、嘘吐きであることなど。
 数多の嘘で、人々の命を奪ってきた。
 夢など見なくとも・・・わかっている。

 ・・・・それがどうした?
 僕がいつかそれを言い訳したか?
 正義であるなどと叫んだか?


 ああ・・・これが言い訳か。
 ・・・馬鹿馬鹿しい。おとといこい。
 
 僕はこの程度の夢で傷ついたりはしない。絶望したりはしない。
 進むことをやめたりはしない。
 この永久(とわ)にも似た命。尽きるときが来るまで、僕は嘘をつき続けるだろう。
 そう、決めたのだから。


 誓ったのだから。
























 ゆるやかに開かれた瞳は、見慣れた壁紙を視界に入れた。
 グレッグミンスターの、己の家。

「・・・・・・・・」

 ダナは右手を眼前に上げ、くっと口元を歪めた。

 (まさか・・・あんな夢を見るとは・・・僕も、大概・・・諦めが悪い・・・)

 鼻が伸びる。
 御伽噺の主人公、ピノキオのように。
 それが嘘の罰。

 だが、その罰の何と優しいことか。
 それだけで許して貰える程度の嘘など・・・・可愛いものだ。
 たわいもない子供の意地と同じだ。

 反して。
 己の嘘は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ああ、やめやめ」
 自虐はダナの趣味では無い。


 己を責めたとて・・・・・・・・・・もう、許されることでも無いのだから。



 ああ。
 嘆息して、右手で顔を覆う。










 (狂いそうだ――――











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