仮想戯話

Ver.恭国









 新王が立ったばかりの恭国に暗雲がたちこめる。
 新政権をよしとしない、珠晶によって罷免された官吏たちが徒党を組んで反旗を翻したのだ。
 宮殿に出入りすることはすでに出来なくなっていたのに、珠晶がいる内殿まで入り込んだということは、手引きをした者が居たということだ。その追求は後でするとして・・・

「・・・情け無い」

 珠晶は額を押さえていた。
 乱入してきた曲者たちは、何の悪夢か・・・陽子・・・つまり供麟によって一網打尽にされていた。
 いったいどこまで強くなっていくのだろうこの麒麟・・・頼もしいけれど何か間違っていないかしら?
 普通、こういうのは麒麟の使令か、護衛が行うものだろう。
 改めて、その規格外な様に珠晶は誇らしく思いつつも、憐憫を浮かべずにはいられない。
 そして今まで何をしていたのか、漸く駆けつけた禁軍の兵士たちに指示を出して曲者たちを捕らえさせているのも陽子だった。禁軍兵士たちも何の違和感もなく指示に従って、きびきびと動いている。
 それでいいのか。
 珠晶は何度目になるのか、そっと溜息をつく。

「珠晶。怪我は?」
「・・・あいつら私に触れる間も無かったでしょ。陽子が片付けたもの」
「珠晶を守るのが私の役目だ」
「・・・・・ありがとう」
 自ら武器を持って守るという役目が麒麟にあったかどうか甚だ疑問だが。
 陽子が満足そうなので良いのだろう。珠晶もだいぶ感化されてきた。
「それよりも問題は、こんなところまで曲者の侵入を許したことね」
 警備責任者はもちろんのこと、捕らえた者たちは厳しく尋問にかけなければならないだろう。
 冷徹な表情を浮かべる珠晶を陽子は誇らしげに見つめる。
「・・・何?」
「さすが珠晶は私の主だと誇らしく思っていた」
「な・・・っ何言い出してるの!?」
「国の興隆期には反乱や謀反もざらにあると延王が言われていた。珠晶の目に触れるところまで曲者を近づけさせたのは私の認識の甘さだ。すまない」
「ば・・・馬鹿ねっ!陽子が謝る必要なんて無いでしょ。悪いのは全部曲者どもなんだから!」
 そもそも麒麟とは象徴であって、戦力では無い。
「優しい珠晶。二度と曲者をこんな傍近くに近づけることの無いように、警備は更に厳重にさせる。私も出きるだけ珠晶の傍に控えていたいと思うが・・・いいだろうか?」
「い、いいも何も・・・・麒麟は王の傍近くにあるもの。そうでしょ!」
 当たり前のことを、とそっぽを向く珠晶の頬は赤い。
 陽子は微笑を浮かべていた。


 そして、恭国において王と台輔の執務室は同室となった。


「・・慣れると今までどうして別々にやってたのかしらって思うわね」
 御璽を押し終わった書類を纏めて脇に置きながら珠晶は、隣に座る陽子に同意を求める。
「そうだな。私もすぐに珠晶に意見が聞けるし、効率が良い」
 何故他国はしないんだろうな・・・と陽子一人疑問を抱く。




 王の下に転がり転がりこむ殺伐とした内容を平気で聞ける麒麟は恐らく十二国でも陽子だけだろう。















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ますます最強!(笑)