仮想戯話
Ver.恭国
3
官吏とやり合うことは日常茶飯事で珍しいことではない。 聡明とは言え見た目通り子供である珠晶の知識は官吏より劣る。分からないこと、知らないことは素直に教えて貰おうとは思うが、その内容に偽り無いか判断するのは珠晶である。それがなかなか面倒だ。 「早急に周りを固めないとね…」 「珠晶?」 独り言に反応したのは陽子だった。この場所で絶対に珠晶を裏切ることのない唯一の存在。 「何でもないわ」 「そろそろ休まなければ体に障る」 「そうね」 もう少し書類に目を通しておきたいところだが… 「では臥床へ」 陽子が否やを言わせぬ笑顔で手を差し出す。 「・・・・・・」 その手を眺めて珠晶は心の中でため息をついた。いつか根を詰めすぎて堂室で朝を迎えて以来、陽子は珠晶が眠るのを見届けてから仁獣殿に戻るようになった。 「陽子、別にいつもついててくれなくても、ちゃんと寝るわよ」 「私が傍に居たら迷惑か?」 「そんなわけ無いでしょっ!そうでは無くて」 「私が珠晶の傍に居たいんだ」 どこまでも天然で最強な陽子に絶句することは少なく無い。 「・・・仕方ないわね」 素直でない珠晶はそう言うことしか出来ない。頬が染まっているのはご愛嬌。 手を引かれて臥床に横になった珠晶は、傍の椅子を引き寄せて座る陽子を見上げた。 「見張って無くてもちゃんと寝るわよ」 「ああ。わかってる。だが私は可愛い寝顔がみたいんだ」 「っそ、そんなもの見なくていいわ!」 今から寝ようというのに興奮させてどうするのか。 「もういいから、陽子も休みなさい。勅命よ!」 こんなことを『勅命』するのもどうかと思うが、そうでもしないと陽子は珠晶と同じように休まない。 知っているのだ。 不慣れな『王』のために、陽子が一生懸命に動いていることを。 「…御意。おやすみ、珠晶」 「おやすみなさい」 ぼんやりとした間接の明かりのみを残して、堂室は闇に閉ざされる。 「ちょ・・・・っ」 目覚めた珠晶は、叫び声をあげそうになって慌てて手で覆った。 こんなところで大声を出せば女官が飛び込んでくる。 (何で・・・何で陽子が私の隣で寝てるの!?) 珠晶の隣には陽子がすやすやとお休みだった。しかも珠晶を抱きしめるように眠っている。 その光景は傍目から見れば微笑ましい光景でもあったが、当人には驚愕の事態だ。 いったい何がどうしてこんなことになったのか。 問いただそうにも張本人は未だ夢の中。叩き起こすのも・・・可哀相な気もする。 (ああ・・・もう私ったらいつからこんなに甘くなっちゃったのかしら!!) 陽子限定ではあるが。 誰よりも美しく。誰よりも男らしく。誰よりも珠晶を愛してくれる。 珠晶だけの麒麟。 供王である珠晶の供麟。 「・・・絶対に長生きしてやるわ」 珠晶は密かに決意した。 |
らぶらぶ・・・?