春宵
‐しゅんしょう‐
14



【ATTENTION!!】
とってもパラレルです。
陽子が高校生(中学生)です。一応。でも最強です(は?)
陽子を今の設定で高校生にしてみたかったんです!
ちょっとした出来心だったんです・・・・・・

以上。






 蓬莱学園中等部。
 いつものように車止めから降りた陽子は運転席を振り返る。
「行ってらっしゃいませ、陽子様。お気をつけて」
「ああ」
 景麒はにこりともせずに陽子を見送る。
「部活動の終わる時刻にお迎えに参ります」
「よろしく頼む」
 毎日繰り返されるやりとり。まるで機械としゃべっているようだ。そう言えば父と同じで景麒が何歳かも知らない。景麒は陽子が中嶋家に引き取られてからずっと陽子付きだ。その頃から変化していない。もしかするとロボットなのか?……冗談に出来なくて怖い。
 周囲を見れば同じように遣り取りをして校舎へ飲み込まれていく生徒たちの姿がある。
「おはよ、陽子」
「鈴、おはよう」
 三年でも同じクラスになった鈴は陽子の貴重な友人だ。見かけ大人しそうだが物事ははっきりと口にする。
「今日の課外活動って何かしら」
「さあ……班ごとにテーマは考えておくようにとは言われたけど」
 班は五人でリーダーは陽子だ。もちろん立候補したわけでは無く鈴の推薦という名の強制指名でリーダーをやるはめになった。班員は陽子がリーダーをすることに全く反対しないのだから始末が悪い。
 陽子の班のテーマは『希望』にしようと話し合いで決まっている。
 中学三年のこの時期に受験勉強するでもなく課外活動などが実施できるのはほぼ九割の生徒がこのまま高等部に進学することが決まっているからだ。
「班のリーダーはテーマを記入した用紙を持って前に来てちょうだい」
 課外授業の教師に言われそれぞれ紙を手に持って集まる。
「はい、この箱に入れてくれるかしら」
 微笑を浮かべる教師――玉葉先生に桓堆が頬を染める。中学三年の彼に玉葉の色気はまだ似が重いのだろう。
「皆さんが考えてきてくれたテーマはこれからシャッフルしてリーダーにこの箱から引きなおしていただきます。その引いたテーマが貴方たちの課題です」
「「えぇっ!!」」
「ヤベェ……」
 玉葉先生の言葉に皆から声があがる。
 ほぼ抗議の声であったろうがその全てを玉葉は笑顔で封殺する。僅かに聞こえていた「ヤバイ」というのは何なのか。いったいどんなテーマを考えてきたのだ。どうかそんなネタには当たらないようにと陽子は祈る。
「さあそれでは引いてくださいな」
 リーダーたちは互いを視線で牽制する。中身が見えないのだから最初に引こうが後から引こうが同じだ。
 そっと離れて陽子は引く順番を争っている同級生を見守る。
「中嶋さんは?」
「あ、私は何番目でもいいから」
 誰が一番に引くかとジャンケンで決めることにしたらしい。ヤバイと言った男子生徒が拳を握っている。その熱の入りようにいったい彼のチームはどんなテーマを考えてきたのかと不安が募る。
 結局、陽子は最後から二番目に引くことになった。
「陽子、何を引いたの?見せて」
 鈴が近寄り、陽子の手元を覗き込む。
「ああ……うん」
「え……『愛するということ』?またベタなの引いたわね。どこの班よ」
 鈴の言葉に同じ班員も苦笑を浮かべている。違う班からも声が上がっていが、一際大きな声を出したのは一番最後に引いた班だ。
「はぁっ!?『子供が何故うんちが好きなのか』!知るかっそんなもんっ!!」
「いやー……それ引いちゃったかってうわっ暴力反対!」
「てめえのとこかっ!!」
 どうやらネタテーマを仕込んだ男子生徒がタコ殴りにあっている。
 そんな様子を鈴が横目で見ながら最後で無くてよかったわねと呟き、陽子も同意する。
「さて、それぞれテーマが決まったことだし。これから皆さんにはそのテーマについて課外で色々な方の意見をヒアリングして纏めあげてちょうだい。各班のリーダーは出発前に注意事項と防犯ブザーを渡すから受け取りにきて。何か質問はあるかしら?」
「あの……図書館で調べたりは」
「課外活動ですからね。図書館では調べられないことを調べてきてちょうだい」
「……はい」
 挙手して質問していた生徒がしおしおと手を下げる。
 どうやらこの課題は学術的な解答を求められているわけでは無さそうだ。
「それではリーダー、集まってちょうだい」
 各班のリーダーがぞろぞろと玉葉の前に集まる。
「これは貴方たちが課外活動可能な範囲の地図よ。このエリアから外には出ないように。それからこの防犯ブザーは一人ずつ携帯して何かあったときには鳴らすこと。何か不足の事態が起こった場合には学校に連絡を入れてちょうだい。課外活動の時間は午後三時だからそれまでには戻ってくるように。昼食は外でとることになるか余裕があれば学校に戻ってきて取っても構わない。そのあたりの判断はリーダーに任せるわ」
「はい」
 それぞれ言われたことに頷いている。特に難しいことは無い。
 これが初めての課外活動では無いのだから。
「今日調べたことはまた明日にまとめる時間を設けますから、しっかりと調査を行うこと」
 つまりいい加減に切り上げて帰って来るなということだなと陽子は理解する。
 同じことを他のリーダーも考えているのだろう。顔が引き攣っている。特に最後にネタテーマを引き当てたリーダーが。



 陽子がリーダーを務めるグループのメンバーや陽子と鈴以外に女子が蘭玉、男子は高里と杜真が居る。
 そのメンバーが顔を合わせて課外活動をする前に作戦会議だ。
「今の時間帯だと商店街は主婦とか年配の方が多いわね」
「逆にこっちはビジネスマンとか多そうだから、話聞いてくれるかな」
「レポートを仕上げるのに事例は多いほうがいいだろうからできるだけたくさんの人に話を聞きたいね」
「全く知らない人に声を掛けるの、緊張するわね」
「どうするの、陽子」
 それぞれの意見を聞きながら陽子も考えを口にする。
「事例が多いほうがいいと言うのには同意見だ。ただそうすると全員で動くのは効率が悪い気がする」
「確かにそうかもしれないね。でも女の子だけにするのは心配だな」
 思春期だというのにレディファーストな高里が心配そうに陽子たち女子を見る。自分もちゃんと女の子扱いされているのが陽子は不思議な気分だ。
「確かに個人で動くのはどうかと思うわ。何かあったときに困るし」
「それなら二人と三人に分かれるか」
「俺たちは分かれたほうがいいな、高里」
「そうだね。中嶋さんたちはどうする?」
 高里にそう言われた鈴と蘭玉が視線をかわし、意味ありげに笑った。
「私と蘭玉は杜真と行くわ。高里君は陽子と行ってちょうだい」
「え?」
 陽子は鈴と一緒に行くとばかり思っていたので目を瞬く。
「いーからいーから。ね、蘭玉」
「そうね、鈴」
「……。……」
 いったい何を考えているのやら。肩を竦めて高里を見るとこちらも苦笑を浮かべていた。
「まあ、別にそれでいい。次は周る場所だな」
 地図を広げてそれぞれに担当する場所を決めていく。
「ここから、こう周って……」
「そうね、それでいいわ。杜真、何か意見ある?」
「……意見言う暇も無いだろうが」
 あちらのチームは女子二人に主導権は完全に握られている。
「中嶋さん、僕たちはどうしよう?」
「うんまあ、無難に商店街から行けば良いのでは?」
「そうだね、じゃあ商店街から周って……」
 こちらも順調に進路を決めていく。
「陽子、ランチに集まって途中経過の報告しましょう」
「わかった。鈴たちはどう回るんだ?」
「ここから、こう聞いていく予定よ」
「なら、待ち合わせはこのあたりかな」
「あ、そこならこのお店のランチが美味しいわよ。種類も多いしボリュームあるから男子にもいいと思うわ」
 蘭玉の意見に誰からの反対意見もなく、話は纏まった。
「それでは時間も無いことだし、動こう」
 陽子の言葉に皆で頷いて行動開始とあいなった。
















続きを楽しみにしていただきありがとうございます!
今回は13から続いています。

拍手へコメントいただき、恐縮です。
小躍りしそうになります。(暑くて頭やられるわけじゃないですよ、たぶん)

これから暑い日が本格的に始まりますので、暑さに負けず乗り切りましょう!