春宵
‐しゅんしょう‐
6



【ATTENTION!!】
とってもパラレルです。
陽子が高校生です。一応。でも最強です(は?)
陽子を今の設定で高校生にしてみたかったんです!
ちょっとした出来心だったんです・・・・・・

以上。








 初めから仲が良かった訳では無い。寧ろ……









「貴方、何故生徒会に入らないの?」
「え?」
 いきなりの詰問に陽子は目を瞬いた。
 目の前に現れたのは知的な美少女だ。確か名は祥瓊。才色兼備として有名だ。
 彼女は生徒会の副会長をしていたはずだ。
「貴方を支持する人たちは多かった。その能力もあると私も思うわ」
 固い表情でそう言う祥瓊に食事をしていた手を止めて、陽子は微笑した。
「ちょっと食事中に何なのよ、あんた」
 怒ったのは陽子ではなく、一緒に食事していた鈴だった。
 あの出会いから二人はよく一緒に過ごす姿が見かけられるようになっていた。
「関係ない人は黙ってて」
「はっ!?関係ないのはあんたでしょっ!」
 一触即発の雰囲気に食堂に居た人々は会話を止めて息をのんで見守っている。
「鈴。ありがとう、でも大丈夫だから」
 陽子は鈴の手をとって、落ち着かせるようにその甲を撫でた。
「う……」
 鈴は頬を染めて、陽子の手から自分の手を取り戻す。同級生の女子がする仕草ではない。
 どこのスケコマシだ。
「それで、貴方は祥瓊で間違いないかな?」
 陽子に名を呼ばれ、祥瓊も自分が名乗りもしていなかったことに気がついた。
「……そうよ、祥瓊と言うわ。食事中に無作法だったわ」
 ごめんなさいと謝ってくる姿に、悪い人では無いと陽子は思う。
「いいよ。もし祥瓊も食事がまだなら一緒にどうかな?席は空いているし、話なら食べながらでも出きる」
 どうぞと優雅に席を勧める姿に、周囲は唖然とする。
 すわ修羅場突入かと思われたところからのこの流れるような誘導……尋常な手技ではない。
 さすが、中嶋陽子。そんなよくわからないところで陽子はまた一つ名声を上げた。




 ランチプレートを取ってきた祥瓊は陽子の向かいに腰掛けた。
 サンドイッチとスープのセットは美味しそうではあるが、それだけで足りるのかなと陽子は余計な心配をしている。
「それで、私が生徒会に入らない理由だったかな?」
「ええ、そうよ。能力も人望も貴方なら十分じゃやない」
 意識しているのかどうか定かでは無いが、手放しの褒め殺しである。
「そう言ってくれるのは嬉しいけど……聞くが、祥瓊は何故そこまで私に拘るんだ?」
 生徒会は人が足りないわけでも無い上に、運営も問題があるとは聞いていない。
「貴方が相応しいのにそうならないからよ。ノブレス・オブリージュと言ってもいいかしら」
 陽子が責任を放棄していると言いたいらしい。
「別に私は責任を放棄したりはしていない。出きることと出来ないことがあり、私は出きることをしている」
「生徒会の仕事は出来ないことだって言いたいの?」
 貴方なら何の問題もなくこなせるのに、と何故紹介はそこまで陽子を買いかぶっているのか。
「私はすでに剣道部の部長を務めている。その責任を疎かにすることは出来ない。そしてプライベートでも当主代理としての仕事をこなさなければならない。今の私にそれ以上の仕事をする余裕は無いよ。無理に他の、生徒会の仕事をして疎かにするようなことはしたく無い」
 一つずつ祥瓊に言い聞かせるように、陽子は己の事情を話す。決して単にやりたく無いから、面倒だから生徒会の仕事を放棄している訳では無いのだと。
「……」
 祥瓊は俯き、食事の手を止める。
 ぽたり、と何かがプレートに落ちて慌てて祥瓊は目に手を当てようとした。
 ・・・がその手は陽子に掴まれる。
「我慢しなくていい。誰もそれを責めたりなどしないから」
「……っ」
 いったい祥瓊にどんな悩みがあるのか陽子はわからない。
 だがそれを内に抑えて、ただ涙を零す姿は陽子の侠気を刺激した。
 取り出したハンカチを祥瓊の頬にそっと当て、祥瓊と目を合わせる。
 
「一人で悩まなくていい。一緒に考えよう」

 





 その瞬間の祥瓊の表情に、鈴は確信した。
 ああ、これでまた私と同じような犠牲者が一人増えたわね、と。















かしまし娘・・の章2(笑)