● 女子会 2 ●











「「「・・・・・・ふう・・・・・・」」」
 そこに居た三人は口に運んでいた茶杯を置くと揃って大きな溜息をついた。
 何れも美しき三人である。
「今年も一年の終わりが来るわね」
 口を開いたのはこの中で一番幼い少女だった。
「そうね。こうして珠晶と陽子とお話できる時間がとれて良かったわ」
「こちらもだ、文姫。珠晶。二人とも時間をよく確保できたな」
「それは陽子もでしょう」
 この中で誰が一番忙しいて、もちろん陽子である。
 それほど頻繁では無いが機会があればこうして三人は集まって、色々なことを話している。
 その光景は俗に言う『女子会』に近い。
 互いの年齢はともかく、見た目ならそれぞれに近い・・・うちに入るだろう。
「一年を振りかってみると、今年も色々と兄様に手が掛けさせられた気がするわ」
 文姫がしみじみと言う。兄とはもちろん利広のことだ。
「何、あいつ未だにうろうろしてるの?」
「未だに、というより常にと言うべきだろう」
 話に上った利広は三人に『問題児』扱いされている。
「ただうろうろしているだけなら私も何も言わないわ。その度に面倒ごとを持ち込まれると、ね」
 文姫の言葉に身に覚えのありすぎる珠晶と陽子だったが、利広の援護はしない。
 自業自得だから。
 確かに利広はただの放蕩息子ではない。自分の役割というものは心得ている。
 それにしてもふらふらし過ぎで遊んでいるようにしか見えないのだから仕方ない。
「陽子も珠晶も兄様を見かけたら甘やかさず、びしっと言ってやってね」
「利広を甘やかしたことなんて無いが……」
「私だって追い払ったことはあっても歓迎したことなんて無いわよ」
 利広はそれなりに粗雑な扱いを受けているようだった。
「私は相変わらず供麒が鬱陶しかったわ」
 その一言で一年を終わらされる供麒が少しばかり可哀想に思うのは麒麟に甘い陽子だ。
「しかし供麒も頑張っているだろう?」
「あれは頑張っているのでは無くて空回ってるって言うのよ」
 散々な言われようだ。
「ふふ、相変わらず仲良しなのね」
「まあ、喧嘩するほど仲が良いと言うしな」
「冗談はやめて。それを言うなら陽子だって景麒と仲良しなのね」
「いや……うちのはただの小姑だから。文姫が羨ましい……宗麟は美人で聡明だから」
 確かに話に聞く供麒や景麒の話を聞く限り、麒麟たちには悪いが宗麟が宗麟で良かったと文姫は心底思っている。
「私はそうだな……色々あったが、こうして二人の元気そうな顔を見られただけで十分満足かな」
「まあ、陽子ったら」
「……相変わらず自覚しない誑しは健在ね」
 そう言いながらも珠晶の頬は僅かに紅い。
「そう言えば、先日陽子と珠晶はまた黄海に行って来たと聞いたわ」
「そうね。時間が取れたから新しい騎獣が欲しかったの」
 それで黄海に自分で騎獣を狩に行くという非常識さはスルーされる。
「今度は私も連れて行って欲しいわ」
「文姫も?私は構わないが宗王が心配されるのでは無いか?」
 一応、陽子も危険だという認識は持っているらしい。
「父様は大丈夫。問題は兄様が邪魔に来ないかどうかってことね」
「あいつ、すぐに首を突っ込んでくるから……気取られないようにしないと駄目よ」
「しかし利広の勘は妙に鋭いからな……」
 とは言え、実の妹と妹にも等しい相手から嫌われるとわかっていて無理に乱入はしないだろう。
 ……おそらく。
「それでは、暖かくなったら行きましょう。文姫も準備しておいて」
「わかったわ。必要なものがあれば教えて頂戴」
 二人を引率するのは陽子なのだが、二人のうちで話は纏まってしまった。
「二人とも、あまり周囲を心配させないようにな」
「「陽子に言われたくないわ」」
 もっともである。
「ふふ、楽しみね。お弁当を持って行こうかしら。珠晶も陽子も何か好きなものある?」
「文姫が作るのか?」
「そうよ。よく厨所には顔を出すのよ」
「それは楽しみだ。・・・・何分私は料理だけはするなと禁止令を出されているから」
「私だってそうよ。ちょっと刃物持っただけで供麒が貧血起こして倒れるのよ!あの馬鹿!」
「……そうか」
 珠晶が逞しくなってしまった一端は供麒にもあるのかもしれない。
 その後も三人姦しくおしゃべりを楽しんで女子会は終了したのである。










そして「女子会」に続く・・・(笑)