■ 第二十一話 ■ |
休憩を挟みながら、フルで作業をし続けた陽子はくたくただった。 これが肉体労働だけならここまででは無かっただろうが、事務作業は頭を使う。 陽子は同じような雑務をそれから3日続けた。 日雇いらしく毎日給料をもらい、良い小遣い稼ぎになった。 陽子の懐は潤って有難いが、何故自分はこんなことをさせられているのかわからない。 「陽、今日はこっちだ」 そう言い、延王は陽子をある部屋に連れて行った。 そこには静かに、役人たちが書類を捌いていた。 陽子の顔が自然とひきつる。 いったいここで何をしろと言うのだろうか……陽子は延王の意図がわからず戸惑った。 「えーと……」 静かなので自然と陽子の声も忍声になる。 「陽子、これを見ろ」 「はあ……」 延王に渡された紙に目を落とす。 短い単語とその横に数字が書かれている。 それが紙いっぱいに……何なのだ。 生憎と陽子はこれを見せられただけで『あっ!ここが間違ってますよ!』と指摘できるような頭は無い。 「それはお前がこの三日間に作業したものを改めてチェックして清書したものだ」 「はあ……」 そう言われるてみると小麦・・・10袋、石灰石・・・15袋……などなど、確かに見覚えのある項目がある。 品数は多かったのでさすがにその全部は覚えていないが、そうだと言われるならばそうなのだろう。 しかしそれがどうした。 その思いが陽子の顔に出ていたのか、延王は何か企んだように笑う。 「何か気づくところは無いか?」 「……」 そう言われて陽子は再び紙に目を通す。 陽子の適当な汚い字ではなく、清書されているので読みやすい。 もっと綺麗な字で書けと言いたいのだろうか……いや、そんなことをわざわざ言うわけも…… 「あれ……」 陽子は首を傾げる。 「絹……20本?」 「どうした?」 「いえ……」 やった仕事の全てを記憶しておけるようなハイスペックな頭脳は所持していない。 だが、絹という高級品だから記憶に残っている。 「数が違うか?」 「……っはい」 疑問に思っていたことを指摘され、陽子は頷く。 1つや2つなら数え間違いということもあろう。だが陽子が数えたときに絹の数は50本だったはずだ。 「どこだ?」 「……この、絹が」 「お前が数えた時は?」 「……記憶違いで無ければ、50」 「ほぅ……随分と減っているな」 延王の声が一段低くなる。 「私とは数え方が違うとか……」 延王が鼻で笑った。 「これはただお前の数えたもの、再度同じものを確認して上がってきたもの、のはずだ」 それが何故減っているのか。 何となく延王が言いたいことは陽子もわかる。 延王もわかっているから陽子に確認させたのだろう。 「陽子、他にもこれと、これにも目を通しておけ」 「はい……」 渋々、目を通す。 国の厄介ごとに自分を巻き込まないで欲しい……他にも数字の間違い?を見つけて黄昏た。 |