剣術指南をしていたガウリィのもとにいい匂いが漂ってきた。
今日はローストチキンにポークシチューだな・・・・・・。
まさにその通り。
恐るべし、ガウリィの鼻。
・・・・・・・ま、リナの作るものなら何でも上手いけどな・・・・・・
「そろそろ休憩にするか、ディランっ!」
「はいっ!父様っ!」
父親にそっくりの金髪碧眼をその身に有したディランと呼ばれた10歳程度の子供はにっこりと笑って返事をした。
「二人ともーっそろそろ休憩にしなさいっ!お昼よーっ!!」
リナの二人を呼ぶ声がする。
ガウリィとディランは顔を見合わせた。
「絶妙のタイミングだね、父様っ!」
「ああ。それより早く行かないとふっ飛ばされるぞ」
「そ、そうだねっ(汗)」
ディランはいつか食事に遅れて一つ向こうの山までふっ飛ばされたことを思い出していた。
ディランの母親はとても自分のような大きな子供を持っているとは思えないほど
若く、美しいが・・・・・性格は・・・・・・・・・・・滅茶苦茶である。
触らぬ神に祟りなしである。
「うまいっ!うまいっ!!」
がつがつがつがつっ!!
ばくばくばくばくっ!!!
二人はとにかくテーブルに並べられている料理を片端から口の中へ入れていく。
「あんたたちねぇ・・・もうちょっと落ち着いて食べなさいよ」
リナがそれを見て呆れたように呟く。
「だって・・・ばくばく・・・リナの料理・・・上手いからなっ!!」
「母様の料理・・・・ばくばく・・・・・・世界一っ!!」
そう褒められればリナも悪い気はしないが、これが日常なのだから堪らない。
「もう・・・いいけどね・・・」
すでに諦めの境地のリナである。
「ねぇ、ガウリィ、ディラン。食べ終わったら買い物に付き合ってくれない?」
「ん・・・・いいぞ」
「僕は・・・・・・・・・・・遠慮しとくよ」
何故か顔をひきつらせるディラン。
「どうして?」
どうしてと言われても・・・・いや、父様と母様のいちゃいちゃしてる中に挟まれていたたまれないから・・・とは言えない。
「もうちょっと剣の稽古したいから」
と言うにとどめておく。
「そう?あんまり根をつめないようにね、何事もほどほどに」
そう言っておかないと休憩もはさまずがむしゃらに練習を続ける息子である。
「うん、わかってる」
「それじゃあ、暗くなる前には帰ってくるからね。留守番よろしく♪」
「了解っ!」
「ガ~ウリィっ!!しっかり持ってよっ!落としたら竜破斬なんだからっ!」
「・・・ととっ」
リナの言葉に傾きそうになった荷物のバランスをとる。
「リナ~、いったい何をこんなに買ったんだよ~」
ずべべっっ。
「あ、あんたねぇっ!買い物見てたでしょうがっ!!」
「そうだったか~」
「もうっ!相変わらずくらげなんだからっっ!だいたいあんたたち二人が
ばくばく食べるもんだから食材がいくらあっても足らなくなるのよっ!!」
「・・・・俺たち二人だけじゃないと思うが・・・」
ギンッ!
「何か言ったっ?ガウリィっ!!」
「い、いや何でもない・・・」
荷物を持ったまま器用に顔を横に振る。
「・・・・せっかく二人っきりなんだから・・・」
リナを抱きしめたり、キスしたりしたいじゃないか。
それが荷物を持っていると不可能なのだ。
・・・・・・というのがガウリィの主張である。
「ほら、ガウリィ、あと少しなんだから頑張りなさいよっ!」
ふぅぅぅぅ。
今も昔も変わらずそういうことには鈍いリナである。
・・・・・・・・ま、昔よりもずっと綺麗になったけどな♪
「リナ・・・愛してるぜ♪」
「な・・・っ何言ってんのよっ!!」
「何って・・・・俺の正直な気持ち♪」
「・・・・う゛・・・・こ、こんな所で言わないでよっ!!」
「だったらどこならいいんだ?」
「・・・・・・・・・・」
この勝負はリナの負けである。
思うことを素直に口に出すガウリィ。
照れてしまって言えないリナ。
二人の勝負はみえている(笑)。
「リ~ナ~、リナ~」
照れてずんずん先に進むリナをガウリィが呼ぶ。
「う、うるさいわねっ!そんなに何度も呼ばなくても聞こえてるわよっ!!」
・・・・・やはりディランは居なくて正解だったろう。
この二人の邪魔は馬に蹴られたって出来やしない。
たとえ息子であろうとも。
あてられるのが関の山である。
「あたしだって・・・・・ガウリィのこと愛してるわよ・・・・」
ぼそっと呟くリナ。
その言葉が聞こえているのかいないのかガウリィの顔には満面の笑みがあった。