「僕に・・・『愛』を教えて下さるんでしょう?」
リナは不機嫌だった。
近隣の盗賊団を跡形もなく壊滅させ、それでもなお森を一つ消し去ってしまったほど。
「う~~~~~もうぅっっ!!!!」
自慢の栗色の髪をがしがしっと掻きまわす。
「何だってあたしがこんなにイライラしなくちゃいけないのよっ!!」
ダンッ!!
バキッ!!
リナの鉄拳をまともに食らった机がまた一つ、その役目を終えた。
「どうした~リナ、『あの日』かぁ?」
バキッ!!
不用意な発言をしたガウリィがリナの無言の裏拳を受け、うずくまった。
「・・・・・命知らずだな・・・ガウリィ・・・」
「ああっ!!火に油を注ぐようなことをぉぉぉっ!!!」
呆れた顔のゼルと降りかかる火の粉を恐れるアメリアが、一歩、後ろに下がった。
「ところでリナの奴は何をそんなにいらついているんだ?」
本人に聞くのを恐れたゼルガディスがアメリアへと尋ねる。
「私も詳しくはわからないんですが・・・ゼロスさんが関係しているのではないかと」
「・・・・・・また、あいつか」
「はい、またあの人・・・・いえ、あの魔族です」
「そういえば、あれから姿を現さないな・・・・」
「はい」
「もしかしてそれが・・・・不機嫌の原因か?」
「・・・・・もしかすると・・・・」
バキィィッッ!!!
「「・・・っっっっ!!!!??」」
「そんなわけないでしょうっ!!!!」
何時の間にか至近距離にいたリナが二人に叫ぶ。
「お、落ち着いて下さいっ!!リナさんっ!!」
「そうですよ、そんなにイライラしてはお肌に悪いですよ」
「「「「ゼロスっ(さん)!!!」」」」
4人の声が揃った。
「お久しぶりです、皆さん。相変わらずお元気そうで何よりです」
「お前に言われてもな・・・」
ゼルガディスは苦い顔だ。
つかつか。
「・・・・リナさん?」
つかつかつかっ。
バキィィッッ!!!!!
リナ、痛恨の一撃!!!
ゼロスはMAXのダメージを受けた。
「な・・・・何するんですかっ、リナさんっっ!?」
「自分の胸に聞いてみなさいっ!!!!」
その言葉に律儀に胸に手をあてるゼロス。
「・・・・・どうも心当たりはないみたいなんですが?」
「・・・・・・ふんっ」
ゼロスの言葉にリナはそっぽを向いた。
そんなリナにとまどうゼロス・・・・・・・のように見える。
だが、リナはそれ以上言葉を重ねようとはしなかった。
「何だかこの間の神殿から帰ってから様子が変なんです」
「ちょ・・・っ!?」
突然説明をはじめるアメリアを慌てて止めるリナ。
「そうなんだよな~。ゼロス、何か知らないかぁ?」
だが、代わって今度は裏拳で沈んだはずのガウリィが口を出してきた。
「ガウリィっ!?」
「神殿で何があったか知らんがリナの機嫌が悪いと周りの被害が甚大でならん。お前が原因なら何とかしろ」
ゼルが椅子に腰かけて言う・・・目が据わっている。
余程リナの所業に腹を立てていたらしい。
まぁ、毎日毎日夜中に爆破音がしてはそれも仕方が無いと言えよう。
「はぁ・・・そうですね。ではちょっとリナさんをお借りします」
「ちょっとっ!?」
「「「どうぞどうぞ」」」
文句を言おうとするリナとは反対に3人はにこにこ笑顔で送りだす。
「あんたたちっ!!!!」
「では、リナさん♪」
「行かないわよ」
「よろしいですよ。無理にでも連れて行かせていただきますから♪」
「なっ!?」
言うが否やゼロスはリナの腕をとると
「それでは、皆さん。ごきげんよう」
と空中へ姿を消したのだった。