ドンッ!!
バキィィィッッ!!!!
背後から何かに突撃され、ゼルガディスは丁度目の前にあった石柱に頭をぶつけて真っ二つに折った。
「・・・・・・・・・・・う」
いかに合成人間とはいえ、この衝撃はかなりきたらしいゼルは一言うめいた。
しかし何とか頭を押さえながら起き上がると、元凶を振りる。
「・・・・・・・・・・・・・・何の冗談だ、ゼロス?」
そこには3,4歳の年恰好をしたゼロスが立っていた。
「パパじゃないよっ!ぼく、セリスっ!!」
「・・・・・・・・・・パパ?」
なんとも言えない珍妙な顔になったゼルガディスが長い沈黙の後、呟いた。
パパ?
パパとは・・・・・・父親のことか・・・・・?
あいつが・・・・?
あの魔族が・・・・?
誰と・・・・・・・?????
いや、それよりもあいつが子供なんか産めるのかっ!?
いや、産むのは相手だろう・・・なんてことは今の混乱状態のゼルには思いつかない。
「ねぇ、おじちゃん。パパ知ってるの~??」
おじちゃんっ!?
再び突っ伏しそうになったゼルである。
「俺はまだ”おじちゃん”なんて言われる年じゃない」
静かに、しかしセリスと名乗ったゼロスの子供にゼルの顔が迫る。
「え・・・・うん、わかった!!おじちゃん♪」
・・・・・・・全然わかってない。
がっくりと肩を落としたゼルはとりあえず尋ねる。
「本当にお前はあのゼロスの子供なのか?」
「うんっそうだよ♪」
はーいっ、と手をあげる様子はそこらの子供と変わらない。
いや、素直でさえある。
・・・・・・どう考えてもゼロスの子供というのは無理が・・・・・いやいや!!
他人の空似でここまでそっくりなんてことは・・・・・
「それで肝心のその親はどうした?」
「んとねっ、ママとらぶらぶするからお外にあそびに行きなさいて言われたの~vv」
「ママっ!?・・は、母親もいるのかっ!?」
当然相手は魔族だろう・・・・でも待て。
魔族が”らぶらぶ”なんてするのか・・・・・・・??
そんな感情があるのかっ!?
もしかして”らぶらぶ”には俺の知らない意味が隠されているのかっ!!!??
ゼルの思考が暴走する。
「ねぇ、おじちゃんのなまえは何ていうの~~??」
「・・・は、俺は・・・ゼルガディスだ」
セリスの言葉に我にかえったゼルが名乗る。
「あっ、”ぜる”だぁ~~~っ!!」
子供が何故か”ぜる””ぜる”と・・・・まとわりついてくる。
・・・・・・・・・・・・・ちょっと待て。
俺をそんな風に呼ぶ奴はそう多くはない。
しかもゼロスは違うということは・・・・・相手が自分のことをそう呼んでいる
ということだ。
とうことは、だ。
ゼロスの相手は俺の知り合い!?
俺に魔族の知り合いなんていないぞっ!!
・・・・・・・まさかっ!?
「おい」
「なに?」
「もしかしてお前の母親は・・・・・人間か?」
「うん、そうだよ♪」
「・・・・・っ!?」
ということはだ!!
ゼロスの奴が人間と子供まで作って”らぶらぶ”するから子供を追い出したと言うのかっ!?
そんなことが有り得るのかっっっ!?
「・・・・聞くが・・・・・・その・・・・・・名前は」
聞きたいような聞きたくないような気持ちで搾り出すように尋ねようとしたゼルの耳に
「ゼル~~~~っ♪」
回れ右したくなる声が届いた。
「・・・リナ・・・」
それでもこの子供とは無関係であることに一縷の望みをかける。
が、しかし。
「リナママ~~っvvv」
足元の子供の嬉しそうに呼ぶ声にゼルは世界の崩壊を感じた。
「・・・・何やってるの、ゼル?」
駆け寄るセリスを抱き上げたリナが折れた柱にすがりついて溶けそうになっている
ゼルに声をかけた。
「・・・・・いや、何でもない・・・・それより、その子供は?」
「セリス、あたしの子供よ。セリス、ちゃんと挨拶した?」
「え・・・・と・・・こんにちわ、ぜるがでぃすお兄さん」
リナの腕の中でぺこりとゼルに御辞儀したセリスを良く出来ました~とリナが頬をすりすりしている。
「・・・・・・・・・・・・・。」
こいつ・・・・・絶対にゼロスの子供だ。
今の一言で確信したゼルだった。
「リナ・・・・・まさかゼロスの奴と子供を作るとはな」
「う~ん、あたしも不思議なのよね~・・・成り行き?」
「おい゛」
「まぁ、いいんじゃない。ゼロスの奴はあたしのこと好きだって言うし・・・あたしもあいつのこと嫌いじゃないしね♪」
「そうか・・・・」
「違いますよ、リナさん。”好き”じゃなく”愛してる”んですよ」
空間を渡り、ゼルとリナの間に現れたゼロスはいつものように人差し指をたててちっちっち、とふる。
「ね、リナさん」
そしてリナの頬へちゅっ!
「な、何すんのよっ!!!」
バキィィッッ!!!
ゼロスの頭にリナの強烈なエルボーがはいった。
「・・・・・・・相変わらず容赦ないな」
「ふんっ、人前でするからよっ!!」
「・・・・・・人前でなければいいのか?」
「う、うるさいわねっ!!」
照れたリナが三白眼で睨みつけてくる。
これ以上刺激するのは生死にかかわるだろう。
「・・・・でいったいこんな山奥に何をしに来たんだ?」
「そうそう、ゼルにセリスを見せておこうと思ってね♪アメリアのとこにはもう行ったし」
「・・・・・・反応が目に見える」
「ははっははっ」
「アメリアおねえちゃん、おかしくれた~♪」
「いつよ?あたしは貰ってないわよ!!」
「・・・・・・子供と同レベルで争うな、リナ」
ゼルはずきずきと痛む頭をかかえる。
「いいのっ!!セリス、今度そういうことがあったらママに報せるのよ?じゃないと竜破斬で吹っ飛ばすんだから」
「・・・・・おいおい」
「はーい♪」
「・・・てお前も肯くな!」
ハチャメチャな親子に振り回されるゼル。
「あ、ゼル。この辺て町ないし夕食ごちそうになるわね♪」
「・・・・・・・・・・・・・・本気か?」
「もちろん♪」
「ごちそうさまです♪」
復活したゼロスが答える。
「ごちそうしゃまです♪」
それを真似するセリス。
にっこり笑う親子3人。
どうやら今日は俺の大厄日らしい・・・・・・・・・・・。
夕日に向かって黄昏るゼルガディスだった。