2.赤いくつ


「まま、あれがほしい!」

 ルシアは店先に並んでいた靴を指差し、リナを見上げて叫んだ。






 空は晴れ渡り、気温もほどほどで。お買い物には最適な日和。
 リナとルシアは近くの街へ食料やら、マジックアイテムやらの買出しに来ていた。
 いつも金魚の糞のごとく、ついてくるはずのゼロスやセリスは獣王に呼ばれて居なかった。
 二人だけのお出かけ。
 リナに手を繋いでもらって、ルシアはとてもとてもご機嫌だった。
 それだけで満足していたのだ。
 けれど、店に並んでいたソレを見た瞬間。ルシアはどうしても我慢できなくなって叫んでしまった。

「ん?何?」
「あれ!」
 リナが優しい眼差しでルシアを見、指差された方向に視線を向けた。
「・・・靴?あれが欲しいの?」
「うんっ!ほしいのっ!!」
 ルシアが指差したのは、真っ赤な靴。
 ほどよくなめされた革は店の光を受けてつやつやと輝いていた。
 そう、まるで。

 ルシアはリナを見上げた。

 (・・・ままのめ、みたい・・・・もちろん、ままのほうがずっときれいだけどっ!!)

 リナの目と同じ、赤い色。
 だから欲しくなった。どうしても手に入れたいと思った。
 リナに買ってもらいたいと思った。


「うーん、ルシアにはちょっと大きいんじゃないかしら・・・はいてみる?」
「うん」
 リナに言われて、ルシアは素直に試着してみる。
 確かに少し大きい。かかとが余っている。
「・・・・やっぱり大きいみたいね」
「・・・・・・」
 ルシアはリナを見上げる。
 じーっとじーっと、願うように見上げるルシアの瞳に、リナは苦笑を漏らした。
「・・・まぁ、すぐに大きくなるかしら。・・・おっちゃーんっ!これ頂戴っ!!」
「!?・・・ままっ!だいすきっ!!」
 ルシアに靴を履かせるためしゃがんでいたリナに抱きついた。
 思いっきり、ぎゅっっと。
「あたしも、ルシアのこと大好きよ」
 ルシアの大好きな笑顔が浮んだ。

 (まま・・・大好き。この世でいちばん、なによりも)








 ままの色。
 ルシアだけの、赤。