「まま、あれがほしい!」
ルシアは店先に並んでいた靴を指差し、リナを見上げて叫んだ。
空は晴れ渡り、気温もほどほどで。お買い物には最適な日和。
リナとルシアは近くの街へ食料やら、マジックアイテムやらの買出しに来ていた。
いつも金魚の糞のごとく、ついてくるはずのゼロスやセリスは獣王に呼ばれて居なかった。
二人だけのお出かけ。
リナに手を繋いでもらって、ルシアはとてもとてもご機嫌だった。
それだけで満足していたのだ。
けれど、店に並んでいたソレを見た瞬間。ルシアはどうしても我慢できなくなって叫んでしまった。
「ん?何?」
「あれ!」
リナが優しい眼差しでルシアを見、指差された方向に視線を向けた。
「・・・靴?あれが欲しいの?」
「うんっ!ほしいのっ!!」
ルシアが指差したのは、真っ赤な靴。
ほどよくなめされた革は店の光を受けてつやつやと輝いていた。
そう、まるで。
ルシアはリナを見上げた。
(・・・ままのめ、みたい・・・・もちろん、ままのほうがずっときれいだけどっ!!)
リナの目と同じ、赤い色。
だから欲しくなった。どうしても手に入れたいと思った。
リナに買ってもらいたいと思った。
「うーん、ルシアにはちょっと大きいんじゃないかしら・・・はいてみる?」
「うん」
リナに言われて、ルシアは素直に試着してみる。
確かに少し大きい。かかとが余っている。
「・・・・やっぱり大きいみたいね」
「・・・・・・」
ルシアはリナを見上げる。
じーっとじーっと、願うように見上げるルシアの瞳に、リナは苦笑を漏らした。
「・・・まぁ、すぐに大きくなるかしら。・・・おっちゃーんっ!これ頂戴っ!!」
「!?・・・ままっ!だいすきっ!!」
ルシアに靴を履かせるためしゃがんでいたリナに抱きついた。
思いっきり、ぎゅっっと。
「あたしも、ルシアのこと大好きよ」
ルシアの大好きな笑顔が浮んだ。
(まま・・・大好き。この世でいちばん、なによりも)
ままの色。
ルシアだけの、赤。