ありがとう



 毎年必ず訪れる大切な日。

 知られないように密かに準備するのもいいけれど、やはり相手が本当に欲しいというものがあげたい。だから、自分もその日を楽しみにしているのだと・・誰かにその日が訪れるたびに綱吉は、『何が欲しい?』と尋ねるのだ。

 そして、今日は9月9日。
 自称右腕、最近では周囲も認める綱吉の懐刀。獄寺の誕生日。

 毎朝そうするように、朝食の後少しして執務室に大量の書類を抱えて現れた獄寺を綱吉はにっこり笑って迎え入れた。

「十代目?」
 何やらいつもと違うものを感じた獄寺が首を傾げる。
 それに気づかないふりして、綱吉はいつもの位置に書類を置かせて退出しようとする獄寺を引き止めた。

「隼人」
「はい。何でしょう?」
「今日は何の日か知ってる?」
「……」
 聞かれたからには何か答えなければ!!と獄寺の優秀な頭脳が凄い速さで動いているのが傍からでもわかった。

「わかりましたっ!十代目が初めてお言葉を発された日ですね!」
「いや、覚えてないし」
「では……十代目が・・」
「はいはい」
 相変わらず獄寺の頭の中は綱吉のことだけで埋め尽くされている。

「今日は隼人の誕生日でしょ?」
「っっ!!!!」

 獄寺の目が大きく見開かれ……そして、いきなりしゃがみこんだ。
 ……がツナも別にあわてない。
 何しろここ数年繰り返されている行為だ。

「十代目が十代目がオレの誕生日なんかをっ」
 感動に打ち震えている。
 綱吉はオーバーだなぁと苦笑しつつ、獄寺に歩み寄りその手をとった。

「何か欲しいものがある?」

「そそそ、そんなっ十代目に覚えていただけただけで十分です!それ以上なんて!」
「そんなこと言わないで、隼人には日頃お世話になってるんだし」
「とんでもないっ!オレ、十代目にご迷惑ばかりおかけしてっ!!」
 あ、ちょっとは自覚があったんだ、と綱吉は心の中で思った。
「じゃ、どうしても無い?」
「オレ、ホント……十代目のお傍に置いていただけるだけで十分です。これ以上望んだらバチがあたりますよっ!」
 バチって……日本人じゃないんだから……
 まぁ、それでも獄寺なら何も言わないかな、と綱吉も予想していた。
 だから。

「それじゃ……」



 Happy Birthday Dear 隼人



「いつも、ありがとう」















「おい、ツナ。何か獄寺の奴がすげー勢いで走り去って、ロビーの大理石の柱で頭打ち付けてたぞ」
「ははははは」
 山本の言葉に、綱吉は乾いた笑いを漏らした。






 感謝の証は、額へのキス。