骸(むくろ)



 それは
 感触の無い空気のように
 ただ

 どうしようもなく



 失われていく

 
 




「マリリアード」
 
 わかっていたことだ。
 あいつだけが、ただ一人、己の愛した友。
 孤独な自分の世界に、ただ一つ在った光り。

 永遠に失われたその光りが、どれほどに尊いものだったか。





 あの姿を二度と見ること叶わぬなら、視覚など不要だ。

だから視覚を閉じた。
  

 己の名前を呼ぶ、あの声を二度と聞くこと叶わぬなら、聴覚など不要だ。

だから聴覚を閉じた。 


 あいつに呼びかけることのできない、声など必要ない。

だから発声機能をなくした。



 ここに在る、己はあいつが残した残滓。
 
  ”私のかわりに、どうかラフェール人たちを……”

 もちろん、叶えてやろう。お前の最後の願いだ。
 ただし。

 マリリアード。
 お前の命を奪った、全てのものに罪の代価を払わせるまで。

 そして。
 ジ・エンド。

 俺は、お前と同じ所へ旅立つことができる。

(マリリアード・・)

 もうお前の声が俺の名を呼ぶことは無い。
 もう二度と、永遠に。

 全ては、己の手をすり抜けて逝った。









 ここに在るのは、空っぽの


    骸(むくろ)