スキンシップ


「エースっ!!」
「ルフィっ!!」
 
 兄と弟は抱きしめあった。












 散々に擦れ違い続け、漸く出会った兄と弟。
 弟は再会に喜び、兄は……。
 昔の面影を残しつつも更に可愛さを増した……多分に兄の贔屓目が入るが……弟に感動していた。

「ルフィ、元気だったか?」
「おうっ!エースこそ!」
「元気だったぞ。大きくなったな、ルフィ」
 親父くさいセリフと共にくしゃり、とルフィの髪をすく。
「大きくなったぞ!もうすぐエースを追い抜かしてやるからなっ!」
 どう考えても無理なその願いに、エースはただ笑いかけてやる。
 無理だと、言ってムキになるルフィを見るのも楽しいが今は笑顔が見たい。
 久しぶりにルフィの顔を思う存分堪能したい。

 エースは心の命じるままに、ルフィに顔を近づけ手のひらで包みこんだ。
「ルフィ」
 愛しい、ルフィ。
 フーシャ村で別れた時と寸分も変わらぬ純粋な笑顔。
 涙を呑んで別れた日のことを思い出す。




『エース、行くのか?』
『……ああ』
『もう、戻って来ないんだよな?』
『……ああ』
『……』
『……ルフィ』
『……から』
『え?』


『絶対に追いついてやるからっ!』






 たとえ、俺が逆行したからとはいえ……お前はここまでやって来たんだな。
 仲間をたずさえ、敵を蹴散らしながら。
「ルフィ」
「エース、くすぐったいって!」
 滑らかな頬の感触を楽しみ、愛しさのあまりぎゅっと抱きしめる。
 簡単に腕の中に閉じ込めてしまえる小さな細い体。
 
 ああ……。
 愛しい、愛しい……俺のルフィ。











「……なぁ、あいつ殺してもいいか?」
「……そうだな」
「お前らも偶には意見が合うんだな……だが、殺すのはヤバイと思うぞ?」
 船上でギャラリーに構わず、ルフィといちゃいちゃしまくる、ルフィの兄とやらにゾロはすでにキレ、サンジもかなりヤバげだった。

「でも、あれはスキンシップでしょうから」

「「「「どこが?」」」」
 控えめにとりなすようなビビのセリフに一斉にツッコミが入る。

「いい、ビビ。ああいうのをブラコンて言うのよ」
「え、はぁ……」
 ナミの言い聞かすかのような言葉にビビは頬をひきつらせる。

「……!?あいつっ!」
「俺のルフィにっ!」
 ゾロとサンジが叫び声をあげる。
 視線の先には……。


 ルフィにチューするエースの姿があった。








「「……殺(や)る」」
 ゾロとサンジは、この日。最大のライバルに出会ったのだった。





















「なぁ、ナミ」
「何?」
 エースが去り、夕食が間近に迫るゴーイングメリー号の船上でルフィがナミに
 声をかけた。
「ゾロとサンジが変じゃねぇ?」
「……そう?」
 (珍しく鋭いわね・・・)


「腹でも壊したのかなぁ……?」
「……。……(それは無いわよ・・)」


 サンジとゾロの思いが届く日は果てしなく遠いかもしれない。