Wish
目の前は真っ暗で
冷たい檻が全身を包む
深く深く沈みゆくカラダ
ゆらりゆらいで
オレは
闇へ消えていく
ただ
消えていく
「バカやろうっっ!!」
ルフィの耳に怒声が届く。
けれどはっきりとは聞こえずわんわん・・と耳の中で反響する。
(……何をサンジは怒ってんだろう?)
いつも以上にぼやぼやする頭でルフィは考える。
「だから言っただろうが!周りに誰もいねぇときに船首に座るんじゃねぇっ!!」
「……っ」
だってあそこはオレの特等席だ!……と叫ぼうと思ったら声が出ないことに気がつく。
途端にセキにむせた。
「おいっ大丈夫か!?」
サンジが慌てて背中をさする。
「あーしんどかったぁ!」
ようやく咳きが止まったルフィは甲板に身を投げ出した。
「しんどかったのはこっちだ!」
サンジがタバコを取り出して火をつける。
「ん?どうした?」
「だーっ!」
全く自分が溺れていたことに自覚のないルフィに、これでは助けたサンジは報われない。
「ったく、てめぇは当分、あそこには座るな」
「いやだ!」
「いやだ、じゃねぇっ!お前が落ちるたびに助けるこっちの身にもなってみろっていうんだ!」
「……オレ、助けるのイヤか?」
「……そういうことを言ってるんじゃね、このくそゴム」
「じゃぁ何なんだよっ!」
ルフィが身を起こしてサンジにすがりつく。
「……」
「やっぱイヤなんだろうっ!サンジはオレのこと嫌いなんだ!」
「違うだろっ!オレはテメーが心配だかっ……!」
どうやら口を滑らせてしまったらしいサンジはふいっとルフィから顔をそらして煙をくゆらした。
奇妙な沈黙が二人を包む。
最初に口を開いたのはルフィだった。
「……心配……サンジはオレのこと心配したのか?」
「……ワリーかよ」
「悪くねぇぞ!」
サンジの向うでルフィがしししっと笑う気配がする。
「すっげー嬉しい!」
(……このクソ船長め。わかってやってんじゃないだろうな!)
「とにかく、あそこには座るなよ」
「イヤだ!」
「ルフィ!」
「だってオレが落ちたらサンジがまた助けてくれるんだろ?」
己に与えられた絶大な信頼。
それにサンジは眩暈がする。
勘違いしそうになる。
それが『オレだけのものだ』と。
「オレが落ちたときはいつだってサンジが助けてくれたもんな!」
そう、何も考えずただ必死に追いかけてしまう。
ルフィを求めて。
「サンジ」
「……何だ」
「オレはサンジが居るから大丈夫だぞ!」
浮かべる笑顔は太陽のようで。
(ああ!くそっ!)
心の中でサンジは悪態をつくと、しししっと笑い続けるルフィを己の腕の中に捕えきつく抱きしめた。
「サンジ?」
「……黙ってろ」
(ああ、俺の負けだ!わかってんだよっ!そんなの最初から!!どうせ惚れた奴の負けなんだよっ!!)
「ルフィ、その代わり約束しろよ」
「おう」
内容もわからないのにルフィは気楽に返事をかえす。
「お前を助けるのは俺だ。他の奴には絶対にゆずらねぇ。わかったな?」
「おうっ!オレを助けるのはサンジだけなんだな!」
(ホントにわかってんだろうな、こいつ……)
腕の中で笑うルフィを放さずサンジは新たな悩みを増やすのだった。
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オールドブルー
それは俺の夢
見つけるために海賊になった
けれど
今
何よりも囚われるのは
光の届かぬ深海の黒
ルフィ
俺の願い