今日もいい天気だった。
船上からは白いカモメが飛んでいるのが見え、青い波がゆるやかにうっている。
そんな心地よ~い天気の日にただ一箇所、何故か暗雲たちこめる場所が存在した。
「腹減ったなぁ~」
麦わら帽子をかぶった小柄な船長がせつなそ~に呟いた。
船べりには船長、ルフィを真中にはさみ、左にサンジ、右にゾロが陣取って釣り糸をたれている。
しかし。
釣り糸をたれ、はや1時間。
どの竿にもひきがきた様子はこれっぽっちもない。
「あのクソ馬鹿が魚がいいなんて言い出すからこんなことになったんだ!
ルフィ、剣術馬鹿なんかほっとこうぜ。俺が今からくそ上手いもん料理してやる」
「何だと!!だいたいおめぇがこのあたりに魚群があるなんていい出したんだろうがっ!!」
「何だとっ!!」
「何だっ!!」
喧嘩売ってンのか?ああ?買うぜ?
はん、いい加減どっちが強いかはっきりさせようじゃねぇか!!
のぞむところだっ!!!
ぽちょん。
釣り糸が海に音をたてる。
「……またかよ」
ルフィはぼそりと呟く。
そう、この2人はこの1時間のうちに数えるのも馬鹿なほど全く同じやりとりを繰り返しているのだ。
はじめこそ、ししし、と呑気に笑っていたルフィだがさすがにいい加減うんざりしてきたらしい。
だが、いったいどうしてこうまでこの2人が仲が悪いのか・・・それが自分のせいだなんてことにはちっっっとも気づいていなのだ。
しかも、
『まぁ、喧嘩するほど仲がいいって言うもんな』
などと抜けたことを思っていたりする。
つくづく報われない2人である。
万人に愛される人間なんていやしない。
しかし、である。
それでも愛されてしまう人間はいる。
それは受身ではない。
愛し、愛され。
愛され、愛す。
そして、ルフィはその太陽のような笑顔ですべてを魅了する。
罪な男……と言うのかもしれない。
「なぁ、ナミー、俺腹減った~」
「まったくしょうがないわねぇ、少しなら食べてもいいわよ」
ナミは微笑みそうになる顔を根性でしかめっつらにして背後のみかん畑を指差した。
「うわ~いっ!!」
釣りざおを投げ捨てみかん畑に一目散に走り出したルフィ。
おそらく彼の頭には喧嘩をしている男2人のことは片隅にもない、だろう。
「「ルフィッ!!」」
それに気づいたサンジとゾロが口を揃えて叫んだ。
だが、ルフィはやはり聞いちゃいない。
「ふふ、こういうの漁夫の利ていうのよね♪」
もちろん釣られたのはルフィ。
損したのは、男2人である。
そして・・・・・・・・
彼らの旅は続く♪