最強無敵シルバー

ほどほどにどうぞ


 最強無敵、それが日本の代名詞である。
 しかも、彼はとても寛大でもあった。その強さゆえに多少のことは大目に見る。
 多少のことは。

「耀さん」
「昔のように、にーにと呼ぶある」
 日本の蟀谷がぴくりと引きつった。数少ない自分より年上のこの国は、図太い。
 どんなに向けられる視線がブリザード並みに冷たくても気にしていないように、見える。
「呼べば昔のように尊敬に値する存在に戻っていただけるのでしたら」
「遠慮なく尊敬すればいいある!」
「それこそ遠慮します。・・・だいたい何なんですか、あのエセキャラクター」
 似せる気さえないのか、名前だけ拝借できれば良いのか・・・不細工すぎる。
 著作権侵害がどうのこうの言う前に、そのエセ具合が日本のキャラクターを侮辱しているとしか思えない。
「可愛いある」
「いったいどのあたりが?」
「・・・リボンがついてるある」
「・・・・・・・。・・・・・・・・」
 本気で言っているのだとしたら、その感性を疑うか、とうとうボケが始まったと嘆くべきだろう。
「即刻撤去して下さい」
「嫌ある。我が国の国民が喜んでるある。菊に言われる筋合いは無いある」
「ほぅ・・・」
 すっと日本の目が細まった。
 イタリアが見ていたなら泣いて逃げ出していたことだろう。
 誰よりも長い付き合いだというのに中国はわかっていない。日本がどれほど二次元を大切にしているか。
 頑張ってそっくりにしつつも誤魔化しながら作るエセキャラならば構わない。それだけそのキャラに価値を見出してくれているのだなと寛容にもなれる。
 しかし。
 全く似せる努力の欠片もなく、ただ『それらしい』外見だけを取り繕うなど・・・許せるか。
 許せるわけが無い。(反語)
「どうあっても、断ると?」
「そ、そうある!」
 少しどもりつつ、視線を逸らしながらも中国は頷いた。
「わかりました」
「は」
「国交を断絶します」
「!?」
 驚愕して固まる中国に、日本はそれはそれは柔らかな微笑を称えて告げる。
「二度とお会いすることも無いでしょう」
「に・・・日本!」
「それではごきげんよう」
 一切の未練も残さず日本は踵を返す。
「ま・・・・待つあるっ菊!!」
 制止の声にも振り返らない。
「菊!!・・・・・・・・・・・・わかったある!!処分するある!!」
 それでも日本は止まらない。
「・・・・すまなかったある!もう二度としないあるっ!!」
 必死な中国の叫びに、日本は小さく溜息をついて歩みを止めた。
「絶対ですね?」
「絶対ある」
「約束破ったら今度こそ、潰しますよ?」
「わ、わかったある・・・・・・・・・・・・・・・・・昔はもっと可愛かったある・・・」
 日本は振り返り、にっこりと笑った。
「子供は成長するものです。それに私に『強くなれ』と教えてくださったのは、貴方でしょう?」
 誰にも負けることなく。強くあれ、と。
「私は貴方の言葉に素直に従っただけです。・・・・哥哥」
「!?菊・・っ!」
 最近では滅多に口にされない呼称に中国の顔が輝く。
「では、一週間以内にお願いします。遅れたら断絶ですよ。断絶」
「そんな!無理ある!」
「無理なら、遊園地ごと地盤沈下起こしますよ」
「・・・鋭意努力するある・・・・お前は、時に鬼ある・・・」
「ありがとうございます」
 日本はにっこり微笑んだ。