最強無敵シルバー

宇宙一周ウルトラクイズ


『イスカンダルに行きたいかーっっ!!」」


 甲子園球場に集められた各国は特設の雛壇でメガホンと使って叫んでいる菊の姿に絶句した。
 普段の物静かな様子の日本からは想像が出来ない姿だった。
 しかも”イスカンダル”てどこだ?
 何処の国の年だ?お前知ってるか?などなど各国が小声で話している。
「お兄さんは知ってるぜ~」
 そんな中フランスだけが得意げに言う。
「何だ、お前の国か?」
 仏頂面のイギリスにノンノと指を振る。
 何だかいらっとしたイギリスは殴りたくなった。
「イスカンダルって言うのは菊ちゃんのところのアニメに出てくる架空の惑星だよ」
「「惑星っ!?」」
 都市どころか国でも無い。
 しかも架空とはいったいどういうことだ。
「テーマパークでも作ったのかな~」
 イタリアが言えば、他の国も有り得るなと頷いている。
「皆さん、ノリが悪いですよ」
 壇上から日本が各国に注意を入れた。
「イスカンダルはイスカンダルです。我が国が造った人工の惑星です」



「「「「はあぁっ!?」」」」



 とんでも無いとをごく当たり前のようにカミングアウトされた各国はクイズどころでは無い。
「何だいそれっ!僕は聞いて無いんだぞっ!」
 とアメリカが叫べば、中国も聞いて無いと騒ぎ出す。
 しかし日本は慌てず騒がず、当たり前じゃないですかと宣った。
「私の家出用に造ったのですから言ったら意味が無いでしょう?」
 どうやら日本は本気でそのためだけに惑星なんてものを創り上げたらしい。
 もう家出とかいう次元の話では無くなっているが、あくまで日本は本気だった。
 それが日本の冗談だったらどれだけ良かったか……惑星創造なんて、宇宙科学の常識を足蹴にするような事柄でもあいにくと日本なら実現しそうなのである。いや、事実しているのか。
 しかし、それならば何故それをここにきて暴露したのか。
「菊、お前さん何を謀んでる?」
 アジア以外の国では最も付き合いの長いオランダが雛壇の下で聞いてくる。
 童顔で真面目で清廉潔白な印象のある日本だが、実は結構腹黒いところもある。
 それをオランダは知っている。
「いえ、そんな……」
 にっこり笑ってかわそうとする日本。ますます怪しい。
 じと目で見続けるオランダに、笑ったまま日本は独り言のように呟く。
「別に、私が家出しなくても邪魔な国を惑星に送り込んでそのまま惑星ごと消滅させてしまえば、後顧の憂いも無くなるかなあなんて、考えて無いですよ」
 考えているんだな。
 常識外れな日本の恐ろしい謀みに、さすがのオランダも表情が凍る。

「さあ皆さんっ!惑星イスカンダル目指してクイズを始めますよっ!」

 そんな日本の考えなど露知らず、地球以外の土地を狙って俄かに各国が勢いづく。
 領土意欲が旺盛なのは良いことだが、日本がそんなに優しい訳が無いと早く思い出したほうがいい。
 
「さあでは第一問いきますよ!我が日本の現在の首都は次の三択のうちのどこでしょう!
 1、東京  2、大阪  3、大和 これだと思うところの番号の下に集合して下さい!制限時間は10秒です!」

 こんな問題を間違える訳が無いと多くの国々が1の選択肢に集合する中、懸命なる数国と天然な一部の国は2と3にばらけていく。もちろんオランダは3を選んだ。
 
「では解答です!正解は…………1の東京!1を選んだ皆さん、おめでとうございます!次の第二問は場所を移動しますよ~」
 世界に喜び沸いている国々を見ながら、オランダは空を見上げた。
 生贄となる国は果たして無事に戻ってくるのだろうか。
 それとも地球から消滅してしまうのか…………さわらぬ神に祟りなし、と日本の諺にある。

 上機嫌に笑顔を振りまく日本の罠は刻一刻と国々を追い詰めるのだった。
 その後、各国がどうなったかは…………。