最強無敵シルバー

転んでもタダでは起きません!


 日本の目の前でフランスが頭を擦り付けて土下座していた。

「この度は誠にっ誠にっ!うちのせいで多大なるご迷惑をお掛けし申し訳ございませんっ!!!」

 イギリスあたりが見ればフランスの偽者だろっと叫びだすほどまともだった。
 ふざけたところの欠片も無い。
 その様を日本は、ほうじ茶を飲みながら無表情に見下ろしていた。
 無言でじっと。
 フランスは頭を下げ、土下座したまま微動だにしない。
 そして30分が経過した。
「フランスさん」
 そろそろ足が痺れて立てなくなったのでは無かろうかと思いながら日本は声を掛けた。
「前にも似たようなことがおきかけたことがある気がするんですよね……」
 びくっとフランスの体が震えた。
「老体なので、記憶が定かでは無いのですが……その時もわざわざ足を運んで、ええ、そう言えばアーサーさんを止めて欲しいってことでしたかねえ。遠くまで足を運んだ私に、なるほどフランスさんは恩を仇で返した、と」
「いやっ!本当にっそんなことはっ思いは全く無かったんだって!まさかあいつらが日本人を人質に取るなんていう命知らずの真似をするとは夢にも……」
 真っ青になって言い募る。
「夢にも?」
「……本当に申しわけございませんっ!!!!」
 がばり、と再び頭を打ち付けんばかりに下げる。今回ばかりは本気で反省しているようだ。
 もちろんそうして貰わなければ、日本は確実にフランスを潰してアフリカ大陸を半分にしていただろう。
 そんな物騒な日本の思考を読み取ったわけでは無いだろうが、事が起こるやフランスは真っ先に日本にやってきた。
 だが物事で重要なのは事後の改善ではなく、どう予防していくかだ。
「さて、どうしましょうか。……同じ人間であるのにどうしてこう諍いあうのでしょう。宗教がどうのこうのと言いますが、実際はただの利権争いですよね?テロ組織に手を貸した者は片っ端から闇討ちしましょうか」
「……本当にやりそうで怖いです」
「もちろん。きちんとフランスさんが対策して下さらないなら、本気ですよ?」
 にこりと笑ったその顔が、心底怖いとフランスは思った。
「ま、不幸中の幸いだったのは。皆、危機を察知した時に秘密裏に作っていた地下シェルターにダミーと入れ替わって隠れていたので無事だったことでしょうか」
「へ?」
「秘密裏に脱出させましたのでご存知無いかたもいらっしゃるでしょうけれど」
「え……いやいや!だって遺体が……え!?」
「ダミーですよ。よく出来ているでしょう?……ま、他の国の方々にはわざと黙っていましたけれど」
 それで同情ひければよし。日本の復讐に慄いてもよし。
 余波を恐れて大人しくなれば、更によし。
「……聞いていると今回の黒幕が実は菊ちゃんなんじゃ、て思っちゃうな~・・・あはは、ははは……はぁ」
 疲れたように肩を落としたフランスをちらりと見て、日本は空を見る。
 この繋がる空の下、いつもどこかで、争いが起こっている。

(不毛ですよ……有限なものには限りがあるというのに)

 人の欲望は、いつか世界を……自分たちを滅ぼしてしまうのだろうか。
 でも日本は信じているのだ。自分の民を。

「ちょっとヤマトで宇宙旅行してきましょうかね~……」
「俺が皆にフルボッコにされるからやめて!お願いだからっ!!!」
「じゃ、三日以内に対策を講じて下さい」
「菊ちゃんっ!!!」
 それから暫くフランスは喚いていたが、日本は無視した。










 三日後。フランスはとりあえず、地球にまだ存在していた。