最強無敵シルバー

ほのぼのは仕様です


 光のどけき春の日に~・・・そんな詠の思い出されるあるうららかな春の日。
 ふと日本は思い立って行動に移した。

 ・・・それがこの騒動の原因なの、だろうか・・・聊か納得がいかないと日本は理不尽を嘆いている真っ最中。
 目の前の庭では、各国が乱闘していた。
 うららかな春をほのぼの楽しむどころでは無い。
 ただ日本は招待状を出しただけだ。『花見をご一緒しませんか?』と。


         ギリシャだけに。


 それが何故、アメリカもロシアもイギリスも中国も・・他諸々増殖しているのか。
 日本は静かに花見がしたかっただけだ。
 そのために同じくほのぼの属性であろうギリシャにだけ声を掛けたのだ。
 ちょっと国が大変そうだけど大丈夫だろうか?いやギリシャさんなら気にしないだろう。よし誘おう。
 そんな日本の思惑通り、ギリシャは特に悩むことなくすぐに返事と共にやって来た。
 
        その他大勢も巻き込んで。

 何が悪かったのだろう。
 目の前の乱闘を見つめながら、やや現実逃避ぎみ珍しく思い悩む。

「ヘラクレスさん」
「何、菊?」
 縁側に猫のように自堕落な格好で横たわっているギリシャはどこまでも他人事だ。
「お花見のこと誰かに仰いました?」
「ん、サディクの馬鹿に言った」
「・・・・・・・」
 険悪の仲の二人。その光景がまじまじと脳裏に思い浮かんだ。
 道理でトルコが日本の顔を見るなり涙目で訴えた訳だ。
 日本としては特にトルコよりギリシャを贔屓したつもりは無い。ただ『ほのぼの花見』が目的だったので、酔うと絡みはじめるトルコを選択に入れなかっただけだ。
 ほら、正当な理由がある。
          それを日本激愛の各国が納得するかは別として。

「私は静かに、ほのぼの花見がしたかっただけなのですがねえ・・・」

 今や見事な枯山水の庭は、荒れ山水に変貌しようとしている。
「あ・・・」
 アメリカが中国の飛び蹴りを受けて桜の幹に打ち当たった。
 かなりの衝撃だったのか、満開だった桜の花びらが無残に散っていく。
 日本の背中に黒いオーラが立ち上った。
 そんな不穏な気配など気づくこともなく、アメリカは中国にやり返すべく起き上がり向かっていく。その荒々しい足取りに白砂が巻き上がり水紋は影も形も無い。
 その傍らでロシアとイギリスはよくわからない念力争いで景石を浮かせ、互いにぶつけ合っている。
 二人がよけた石は逃げ回っているイタリアに当たり、ヴェ~という声と共に地に沈んだ。

 トルコが来るのはまだよしとしよう。
 だが、何故何の関わりも招待した覚えもない彼等がやってきて庭を荒らしまくっているのだろうか。
 これを暴挙といわずして何を言う。。
 日本はよく我慢した。我ながら褒めても良い・・・そう思いつつ、ゆらりと立ち上がる。

 その横でトルコが顔をひきつらせ、ギリシャはそっと逃げ出した。

「ええ、いいでしょう。それほど暴れたいと言うのならば思う存分に暴れていただきましょう・・・」

 日本はキラリと黒曜石の瞳を宙に向けた。
 同時に、晴れ渡った青空から何かが物凄いスピードで暴れまわっていた彼等の中に突き刺さる。
 瞬時に動きを止める一同。目を向ける一同。

 そこには小型クレーターが出来、煙が立ち上っていた。
 クレーターの底は見えない上、周囲は高温でやられたらしく溶けている石もある。

「「「「「「に、日本・・・?」」」」」」

「皆さん、元気が有り余っていらっしゃるようですね。ええ、よくわかりました。それなら丁度良いものがあったこを思い出しました。一昨日打ち上げた人工衛星のレーザーの試し打ちがまだだったのです。どれだけ正確に獲物・・・いえ標的を狙えるか、試してみませんと・・・ね」

 日本の目はどこまでも本気だった。









 各国が全身全霊で謝り倒したのは言うまでも無い。
 死ぬ気で庭を元通りにしたことも、蛇足だろう。