最強無敵シルバー
可愛いって褒め言葉ですか?
「何故でしょうねえ・・・」
日本は差し出された花束を見て呟いた。
「何やざ?」
「いえ・・・何故皆さんお土産に花を持って来られるのかな、と」
オランダはアメリカのように突然やって来たわけでは無く、きちんと事前に来訪の打診はあった。
そのオランダを玄関で迎えた日本はチューリップの花束を受け取ったのだ。
「何もおかしう無いやざ」
「何故ですか?」
「男なら贈り物は花と決まってるやざ」
「そんな話は聞いたことがありませんが・・・まあいいです。どうぞ中へ」
「邪魔するやざ」
靴の脱ぐ習慣の無い西洋の国だが、オランダは慣れた仕草で靴を脱いで玄関を上がっていく。
さすがに鎖国していた頃から付き合いのあった国だ。
室内も日本の気分によっては忍者屋敷のように難攻不落となるが、普段の間取りは昔から変わっていない。
卓袱台の前に胡坐をかいて座るオランダは妙にはまっていた。
「お茶をご用意しますね」
「おーきんの」
一見するとヤンキーそのもので、目が遭うと難癖つけられるように見えるが意外と礼儀正しいのがオランダだ。
日本の文化をよく心得ているというべきか。
「美味しい羊羹をいただいたんです」
「ほうか」
お茶請けにと出された艶々した羊羹をオランダはためらい無く口に運ぶ。
その食べるオランダを日本はじっと見つめる。
「何やざ?」
「いえ、最近はお煙草お吸いにならないんだなと思いまして」
「色々面倒やざ」
「そうですね」
喫煙者には肩身の狭い世の中だ。
「ところで本日はどうなさいました?」
「ん、やっぱ可愛いわの。かたかったけのう」
「は?・・・まあ確かに一年ぶりぐらいですか。で、何が可愛いのですか?」
基本的に日本は自国だけで生きて行ける国だ。貿易や折衝も煩わしいだけで必要だとも思わない。
出来れば再び鎖国してしまいたいが、周囲の国々が煩いのでそれも儘ならない。無視しても良いが、そうするととばっちりを受けるその国の国民の皆さんが哀れだ。
「おめえのことやざ」
「・・・・そんなお年でしたか?」
「違う。可愛いもんは可愛いやざ」
「・・・・・・」
確かに日本はオランダに比べれば一回りも二回りも小柄だ。それは認めよう。
「どこに可愛いと言われて嬉しがる男が居ますか」
「ほうけ?」
「そうなんです」
スペインを出し抜くような策略家の癖に天然なところもある。
「今度言ったら水に沈みますからね」
日本はにっこりと国の水没を宣言した。
「おとろっしゃ」
「それで、本当は?」
「別に。菊に会いとうなっただけやざ」
「・・・・・・あなたという人は」
伸びてきた手が日本の頭をよしよしと撫でる。
(私のほうが年上だってこと、ちゃんとわかっていらっしゃるのでしょうかねえ・・・
可愛らしい花に免じて、日本は大人しくその手を受け入れた。