禁色
平安時代
天皇以外には着ることを許されぬ
禁断の色があった
コートの裾が翻る。
その美しいパープルに目をひかれ、視線を上げれば・・・・・・・・
一点の非の打ち所のない秀麗な美貌。
その色はまさに”彼”のために在ると言っても過言ではなかった。
「新一てさぁ、紫が似合うな」
「はぁ?」
快斗はそう言って、コートに手をふれる。
手触りは極上のベルベット。
上質な素材に高貴な色。
それらを身に纏い、従える新一。
道行く人間の全てが目を奪われ、視線で追わずにはいられない。
「快斗」
花が咲き誇るような笑顔で笑いかえられれば、それだけで満たされる気がする。
その笑顔に誰が逆らえるだろう?
「それじゃあ、お前は腹黒いくせに白が似合うよな」
快斗の言葉に隣にいた新一が面白がるような色をのせてそう言った。
「それはお褒めにあずかり光栄デス・・・・一言余計な気もするけど」
「まぁ、自分で似合うって思ってなきゃあんな格好はしないよな」
「・・・・まぁね」
新一の言葉に苦笑しながらも快斗は否定しない。
<絶対的な自信>
それが自分たちを支えるもの。
自信なくして、他人を罠にかけることはできず。
助けることもできない。
自分を信じずして他人に己を信じさせることができるわけがない。
『探偵』
と
『怪盗』
相反する存在でありながら惹かれずにはいられない者同士。
「ホント、俺って新一に落ちてるよなぁ・・」
「バーロー」
かえってくるのは素っ気ない言葉だったが新一の頬がわずかに赤くなったと思ったのは
快斗の心がみせる幻だったのだろうか・・・。
「わけわかんねーこと言ってないでさっさと行くぞ」
「カシコマリマシタ」
快斗はふざけた口調で優雅にお辞儀を、新一に手を差し出した。
「お手をどうぞ、名探偵♪」
その手をぱしんっと叩くと新一は歩き出した。
「あ、おいっ!!待てよっ!!」
これ以上ふざけていられない・・・と快斗を無視して先に行く新一を慌てて追う快斗。
追いついた快斗が新一の耳元で何かを囁き、笑みが浮かんだ。
ある晴れた休日。
平穏な日々。
寄り添う二人は何処かへと消えていった。