たぶん、人はそんなこと思わないだろうけれど。 ナルトはこの瞬間が一番好きだった。 また、もう一年アカデミーかと思われたナルトも不幸中の幸いで漸く下忍となれたナルト。 まぁ、正式な下忍と認められるにも試練があったけれど・・・ 本日、初の任務。 わくわくする心を抑えきれないで、ナルトはカカシに続いて任務受付所に入っていく。 そこには火影とイルカが待っていた。 「じっちゃん!イルカ先生!」 にししっと笑ったナルトの顔は柄にもなく照れているような。 イルカとしても教え子の初任務に嬉しさを隠し切れず目をなごませている。 「では、カカシ隊第七班の任務は・・・」 「何だってばよ!」 「ちょっと、ナルト。あんたうるさいっ!静かに聴いてなさいっ!」 「・・・・・ふん」 組んだばかりのスリーマンセル。まだまだ意気投合とは遠いらしい。 「おほん、『老中屋敷 草むしり』」 「えぇーーっ!何だってばよ、それ!!」 ぶーっ、とナルトが顔をふくらませる。 「もっと忍らしい任務がいいってば!」 「ナルト〜、そうは言うけど老中屋敷の草むしりって結構大変なんだぞ〜」 そういうカカシは体験したことがあるのか、苦笑する。 どうやら定期的に来る依頼なのだろう。 「老中屋敷ってのは広いからな〜」 カカシは笑って答える。 ナルトもサクラも・・・サスケでさえこの時、それはちょっとオーバーに言ったくらいに 思っていた。・・が、現場に到着した途端、それがカカシの言葉が冗談でも何でもなく いや、むしろカカシの言葉が冗談であれば良かったのにと思うことになるのだが・・・・。 「う〜〜〜っ!取っても取っても終わらない〜〜っ!!」 草むしりを開始してすでに7時間。 途中休憩に昼休みなんぞあったけれど・・・それ以外はひたすらに草むしりを続けた。 ・・・はずなのに、一向に終わりが見えようとしない。 一面、緑が生い茂る。もちろん、『草』だ。 座ったままでいるとそれが視界を覆いつくし、この作業は永遠に終わらないかもしれないと 不安な気分にさせる。 もしかすると取った先から生えてたりして・・・・・・冗談では、無い。 ナルトが不満を漏らせばすかさず突っ込みを入れるはずのサクラも腰は痛いわ、体中に 草の匂いは染み付くは、でそんな元気も無い。 相変わらず無言のサスケも・・・心なしか朝に比べてペースが落ちている。 変わらないのは、その三人を本を読みつつ眺めているカカシだけ。 「さてっと・・・」 そのカカシが本を懐にしまって腰掛けていた門柱から下りてきた。 「そろそろ暗くなって来たから今日の任務はこれまでね〜」 「疲れたってば〜〜っ!!」 途端にナルトが大の字になって草の上に倒れこむ。 「あははは、でもまだ全部済んでないから明日も草むしりね」 「「「・・・・・・・・・・・・・・明日も・・・」」」 相当に嫌そうな顔をありありと浮かべた子供たち三人にカカシはそういえば自分も 嫌だったんだよな〜と過去を思い出してみたりする。 「それじゃ明日も同じ時間にここに集合。解散!」 言うや否や姿を消してしまうカカシ。 「あ〜もうっ!早く帰ってシャワー浴びよう!草の匂いが染みついちゃって・・・」 サクラがくんくん、と自分の体を匂って顔をしかめる。 「う〜俺ってばもう動けない・・・・」 気張っていたぶん誰よりも余計な力を使っていたナルトはごろごろと草の上を転がって 放っておけばここで寝かねない。 「おい、ウスラトンカチ」 「むきーっ!ナルトだってばよ!」 「ふん、そのままそこで寝たら風邪をひくぞ・・・ああ、馬鹿は風邪をひかないと言うから お前は大丈夫か」 「くそ〜〜っ!ムカつく、サスケ!!」 先ほどまでへたばっていたのが嘘のようにナルトはサスケへと掴みかかる。 それをひょういっとかわして、サスケはナルトに背を向けた。 「逃げるのかってば!」 「馬鹿、帰るに決まってんだろうが」 「あ、あたしも帰る〜vv」 (サスケ君と一緒にv) 「サクラ、お前は逆方向だ」 (がーーーんっ) 「あ、サクラちゃんっ!俺が送って行くってば!」 「いらないわよっナルトなんか!」 今度はナルトががびーんと硬直する。 そんな二人に付き合っていられるかとサスケはさっさと歩きだし、サクラとナルトが 慌ててそれに続く。 3本の別れ道。そこで各自別れる。 「じゃ、サスケ君。明日ね〜vvv・・・ついでに、ナルトも」 ついででもサクラちゃんが手を振ってくれて嬉しい、と思うナルト。 その駆けていくサクラの背中を見送って、ふと視線を脇にそらすとサスケと目が合った。 「な、何だってば・・・」 「ふん、寝坊するなよ。ドベ」 鼻であしらうように言われて、カチンときた。 「サスケこそ遅れるなよっ!」 「俺はウスラトンカチとは違う」 「くっ〜〜っ見てろっ!明日は誰よりも早く集合してやるってば!!」 「せいぜい、頑張れよ」 まるで興味なさそうなサスケはいまだに怒っているナルトに背を向ける。 「・・・・また、明日。ドベ」 「・・・・っ!ドベじゃないっ!ナルトだーーーっ!!」 一瞬、驚いたナルトはすぐさま、叫び返した。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・また、明日!サスケ!!」 すでに数メートル離れたサスケがひらひらと手を肩越しに手を振ったのが見えた。 それから、この瞬間が好き。 一日の終わり。任務の終わり。 皆から『また明日』と声を掛けられる瞬間が何よりも・・・・尊い時間だから。 ナルトは満面に笑みを浮かべて、こう返すのだ。 「また明日っ!!」 |
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別れの言葉。
「さようなら」は少し寂しいですけど、『また明日』て
いうのはいいですよねv
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