■ 椿姫 ■
(ツバキ)
本文抜粋
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「何それ?」 「おせちだ」 卓の上に置かれた包みを解くと、三段重ねの重箱が現れた。 中を覗いてみると、色とりどりの素材がバランスよく配され、良い匂いを漂わせる。 「誰が作った?」 「私だが」 無表情に自己申告するイタチに、笑いがこみあげる。 いったいどんな・・・・・・といってもこの無表情でだろうが・・・うちはの次期当主たる身が台所に立ち、おせちなど作ったのか。 周囲の反応を思うとおかしくてたまらない。 元々手先が器用なイタチであるが、料理にまでその才能を如何なく発揮したらしい。 「味の保証は?」 「食べられる」 美味いということだな、とナルトはイタチの言葉を頭の中で変換した。だいたい、ナルトに惚れぬいているイタチが不味いものを持参するわけがない。 「あんたも任務が入っていないのか、珍しいな」 「おせちを作るからと休みをいただいた」 「―――― まぁいいけどな」 そんな理由で休みを貰える里の暗部に、僅かな不安を覚えたが・・・ナルトに心配してやる義理は無い。 「しばらくここに居ていいだろうか?」 「は、別にいいけど。いつまで?」 「とりあえず、三が日が終わるまでは・・・」 「ふーん」 親族の挨拶などを受けなければならないだろうに、雲隠れか。影分身あたりでも置いてきたのだろうか。 親族を持たないナルトにはどうでもいいことなので、勝手にすればいい。 「じゃ、ちょっと早いけど熱燗しておせちを食うかな・・・」 「手伝おう」 勝手知ったる他人の家ということのなのか、ナルトが案内するまでもなく台所へと歩いて いく。その背中に『うちは』マークを見たナルトは、初めての出会いを思い出し、つい口元を 緩めた。 出会いから月日はそう経っていないのに、イタチは驚くほどナルトに近い部分に立っている。 うちはの次期当主たるイタチは無表情な外見からはわからないが、相当無茶苦茶な人間である。有能ではあるが、万能ではなく、任務でパートナーを組むと三回に一回は妙なことを仕出かしてくれる。 おまけにナルトに惚れたと宣言すると、冗談だとナルトが笑っているうちに婚姻届を出していた。いったいどうやって里に受理させたのか、ナルトが確認すると、『うずまき』が『うちは』に変更されていた。この段になってさすがのナルトも腹を立て、火影に苦情を申し出た。するとイタチは、またもや訳のわからない勘違いをし、今度は自分が『うちは』から『うずまき』に戸籍がえ。 ――― もう勝手にしてくれ、とナルトが匙を投げたのも無理からぬところであった。 妙なものに気に入られると、苦労するものである。 |
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同人誌『椿姫』より抜粋の小説です。
書いてみて、どうやら思っていた以上に二人は
心を通じ合わせていると(爆笑)わかりました!
でも、この椿姫はいずれ訪れる別れへの前奏曲。
どのような展開になっているかは、同人誌をご覧下さいませ!