ぷれぜんと ふぉー ゆー











「お届けものでーす。うずまきナルトさん!ハンコ下さ〜いっ!」

「こんな時間に何だってばよ・・・」
 仮の住居に居たナルトは夜中にやってきた配達屋に普通にキレそうになった。
 こんな時間に営業やってんのはどこの配達屋だ。・・・速攻出向いて潰してやる。
 無視してやろうと思ったが配達屋の気配は消える様子が無く、扉を叩いている。近所迷惑極まりない。
 このあたりの住人は忍が多く、少々の物音ではびくとはしないとはいえ・・・。

「うずまきナルトさーんっ!!!」
「わかったってばよ!」
「あ、どうもすみ・・・」
 配達屋の兄ちゃんは、出てきたナルトの姿を見て固まった。

 タオルを一枚腰に巻きつけて・・・白い肌が惜しげもなく露にされている。
 細い腰に手を当て、不機嫌そうに睨みつけてくる蒼海の色をした瞳は深く、しっとりと濡れて金髪は首筋にかかって、鎖骨に雫を垂らす。
 下忍の頃のやんちゃな面影などなく、まだ少年らしさは残るとはいえ蛹が羽化するように美しき何かに変化しようとするナルトの姿は、若い兄ちゃんには刺激が強すぎた。
 ナルトは固まってしまった兄ちゃんに声をかけることもなく、手に持っていた荷物を奪いとり、さっさと扉を閉めた。もちろんハンコを押した伝票を顔に押し付けて。



「差出人は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 差出人の名前にナルトは己に重力が10倍になってのしかかった気がした。



           『うずまきイタチ』



「またあいつは・・・・・・・・」
 里に反旗を翻しておきながら、堂々とこんなものを送りつけてくる。
 それだけ自分の実力に自信があるのかと言えば、そうでは無いことをナルトは知っている。ただ単に、イタチは何も考えていないだけだ。イタチはナルトに関することだけ恐ろしいほどの馬鹿になる。底抜けの馬鹿だ。世界一の馬鹿だ。

「いったい何を送ってきたんだか・・・」
 30センチ四方の四角い箱を開けてみる。危険物の反応も幻術もかけていないということは、本当にごく普通の送付物なのだろう。その内容が世間一般に対して普通であるかは別として。
 まず一番上に載せられてた巻物を手にとり、開いてみた。



『 ナルトへ。 誕生日おめでとう。 愛をこめて送る 』



「・・・・・・・・。・・・・・・・・」
 どんな『愛』がこもっているのか、ますます見たくなくなった。
 しかし。
「そうか、今日だったのか・・・」
 そんなことなどすっかり忘れてナルトは朝から任務に勤しんでいた。
「律儀な奴・・・」
 毎年イタチはナルトの誕生日に何かを贈ってくる。ナルトが任務で里に不在のときには帰宅したときに荷物が到着するように待っている。・・・誰も知らないはずの予定を把握されていて盗聴器でも仕掛けられているのではないかとナルトは身辺を鬼のように探し回ったものだ。
 さて今年の荷物のメインは何なのか。
 去年は確か・・・何かよくわからないどこかの不気味な気配漂う民族人形と新術の巻物だった。もちろん巻物だけ有難く頂戴して不気味な人形は灰にした。
 ナルトは遠い記憶に封印をかけながら、小さな箱を取り出した。
 嫌な予感がする。
 開けるべきか、開けざるべきか。
「・・・・・・。・・・・・よし」
 意を決したナルトは箱の蓋を開け・・・・・・・・・・・・・・閉じた。




『 二人の十年目の記念に 』




 何の記念かなど問わないほうが良いだろう。
 ナルトは見た目は何の変哲もない銀色のわっかを森の奥の地中深くへ埋めたのだった。










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