□ パパの愛 □



「ナルト〜〜く〜んっ朝だよ〜〜!起きなさい〜〜」

 階下からの声に、ナルトは飛び起きた。
 
「ナールートーくーんっっ!」
「うるさいっ!起きてる!!」

 いつぞやしぶとくベッドを恋しく抱きしめていたら、鍵をかけているはずの扉を撃ち破り・・そう、文字通り
 銃で扉を穴だらけにして、飛び込んできた注連縄に、号泣しながら抱きしめられるという、―――何故、
 少々寝汚いだけでこんな目に遭わなければならないのか―――悲惨な事態になったのだ。
 それ以来、ナルトには注連縄の朝の第一声は、敵を告げる声にも等しくなった。

 そんなことを意識の闇の彼方に葬り、前日に用意していた下士官の服に着替える。
 一週間前から、ナルトは訓練学校を卒業して晴れて軍人として働き始めた。

 ――――ということに表向きはなっている。

 ナルトは鏡の前で服の皺やねじれを直して、階下へ下りた。
 そこに待ち受けていたのは、朝からボリュームたっぷりの朝食と・・・暑苦しいこと限りない父親である。

「ナルトく〜〜んっvvやっぱり水兵の制服が可愛いね!!あ、もちろんナルト君は何着ても似合うんだけどね!
 よしっ、じゃぁ今日も記念の一枚を・・・」


「やめろっ!」


 カメラを構えてナルトをシャッターに納めようとする注連縄に、問答無用で銃の一発。
 ほとんど至近距離にも関わらず、見事にかわす注連縄。
 ちっと舌打ちするナルト。

 ごくごく、普通の光景である・・・・・・・・この家の。

「いい加減にしろよ!毎日毎日毎日毎日毎日毎日・・・っそんなに同じ写真を撮って楽しいか!?」
「うんっ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 力いっぱい頷かれてしまった。
 ナルトはがっくりと首を折り、椅子に腰掛けた。


(―――― 本気で俺、家出てーー・・・)


 人生12年。この短い生の中で、幾度こう思ったことか。
 そして、幾度実行に移そうとしたことか。
 その度に注連縄の邪魔が入ったのだが・・・。

「今日はナルトの好きな超特大ダシ巻き卵焼きに、鮭の塩焼きでしょー、お豆腐となめこのお味噌汁にー・・」

 ナルトが暗雲を背負う中、注連縄は相変わらず上機嫌で朝のメニュー説明へと突入する。
 ゴーイングマイウェイ。
 自己中。
 
「・・・・・・・・・ふぅ」

「どうしたのっ!?ナルト君っ!風邪!?そ・・・そう言えばちょっと顔色が悪いような・・」
 誰のせいだ、誰の。
「無理しちゃ駄目だよ!今日はお休みしなさい!ね!?ちゃんと連絡しておくから!」
「・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・」
 おろおろ、あたふた、うろうろ・・・注連縄は足を家具にぶつけながら、薬は、お医者様は、と熱さましは、と
 家中を駆け回り始める。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁぁぁぁぁ」


 確かに、頭が痛い。
 ナルトはそんな父親の姿を眺めながら、遠い目をするのだった。










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・・・どのあたりが軍隊ものなのか?(笑)
いや、これはナンバー0なので(言い訳だ/笑)