■ 求めしモノ ■
「ナルト、ナルト、ナルト」 飢えた旅人が水を求めるようにイタチはその名を繰り返す。 それだけしかない。それだけしか意味が無い。そんな、狂気を秘めて。 「ナルト、ナルト、ナルト、ナルト、ナル 「うるさい」 一刀両断された。 罵られたイタチは、何故か無表情で周囲に喜びのチャクラを撒き散らした。 ただ今、イタチは先日ナルトの任務を邪魔した罪により『無視の刑』に処されている最中だった。 どんなにイタチが話しかけようと、傍に居ようとナルトは全くそれを『無』の状態で扱った。 その存在を、呼びかけを無視した。 しつこいイタチはそれでもお構いなしにナルトに話しかけてくるし、傍に寄り添おうとする。 こうなれば最早根競べだ。 ナルトは無視し続けた。 イタチも呼び続けた。 二人の攻防は、見かけた火影が顔を引きつらせるほどに・・・馬鹿らしかった。 しかし、その罰がイタチにとって、何をおいても効き目があることは確かで見るたびに憔悴の色を濃くしていく。病名、『ナルト欠乏症』、つけるならばそんなところだろうか。 そして、あまりのしつこさに・・・折れたのはナルトだった。 「イタチ、いい加減にしろ!」 怒鳴ってもイタチには全く効き目が無い。むしろ、ナルトに名前を呼ばれて至福そうでさえある。 ナルトは額を押さえた。 出会った当初も、それは1本も2本も確実に人として絶対にあるべき何かが抜けていた。だが、今よりもう少しはマトモでは無かったろうか・・・・・・ 「ナルト」 「・・・・・・」 「すまなかった」 謝るくせに、『もう二度としない』とは言わないのだ。この男は。 それを腹立たしく思いながらも、許している自分をナルトは殴ってやりたい気分になる。 いつから自分はこれほど甘い人間になった? 「この腕の中に閉じ込めて、誰にも触れられないように見られないように、私だけのものにできたら」 「・・・・誰を?」 「ナルトを」 ふざけるな、と飛んできた拳と蹴りをイタチは受け止める。 「けれど、そんなことは出来ないと知っている」 今は籠の中の鳥。けれど、その心には何者にも捕らわれぬ翼を持っていることを知っている。 イタチ程度に囲われるような器では無い。 「イタチ」 「今より、強く」 「・・・力を求めるな、などと馬鹿げたことを言うつもりは無い。けれど、覚えておけ」 「ナルト・・・?」 「どれほど求めた力を得ようと、求めたものを失わなかった者は無い」 お前の、うちはの初代然り。 「・・・どうすれば?」 では、失わないようにするためにはどうすれば良いのか。 己より年上の男は、ナルトがその答えを知っているのだと確信したように聞いてくる。 「は、それがわかれば誰も苦労しねぇよ」 イタチの無表情が困惑に僅か、崩れた。 「だが」 数歩歩いたところで、ナルトはイタチを振り返った。 「失われることが防げないならば、また得ればいいだけだ。それが奪われたものならば奪い返せ。逃げたものならば追いかけて捕まえろ」 お前のそのしつこさがあれば、不可能でも無いだろう? 去る者追わず、のナルトには考えられないことでも。 「そんなことを教えてしまって、良いのか?」 「良いも悪いも、もう聞いただろうが」 一度、音となった言葉を回収することは出来ない。 「ナルト」 「あ?」 「ありがとう」 いったい今のどこが感謝するべきところなのか。 ナルトは、自身で墓穴を掘り続けていた。 |
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うちのイタチはきっと馬鹿の子だな・・・(おい)