恋の噂
「・・・・暇だな」 「六代目?」 ぼそりと呟かれた言葉に側近の一人であるサスケが書類から顔を上げた。 「最近平和過ぎて・・・ボケそうだ」 「・・・・・・」 「いっそのこと、どこかで火種を起こしてやろうかな?煙ぐらいは漂ってくるだろ?」 「ナルトッ!」 「じょーだん・・・・だってばv」 「・・・・・。・・・・・」 妙な語尾のつく『ナルト』のしゃべりも今となっては嫌味でしかない。 「サスケは最近変わったことないのか?」 「・・・・特には」 里一番の耳目を持つナルトにとって、サスケにそんなことがあったとすればすでに耳に入っているだろう。 これもただの暇つぶしなのだ。 「他国のくの一に言い寄られたとか聞いたけど」 「・・・・。・・・誰にです?」 「えーと、最初に言いに来たのがカカシで、次に紅。ああ、シカマルもめんどくせーとか言いながらも ぼそぼそ言ってたな〜」 「・・・・・・」 呪う。絶対に呪ってやる・・・あいつら。 サスケは心の復讐リストに二重丸をした。 「・・で真相は?」 ナルトは深海色の瞳に好奇心の輝きを宿らせ、サスケの顔をのぞきこんだ。 「ありえませんっ!」 ダンッと机を叩いて立ち上がったサスケにナルトがにやりと笑った。 「軟派に見えて意外に硬派だもんな、お前。・・・あ、それとも」 「・・・・・・何です」 「他に好きな奴が居たりして〜。それで他は目に入らないとか」 にやり。 「!!・・・・・・・・。・・・・・・・・・」 絶対にこいつはわかっていて言っている。絶対にっっ!! 「・・・・・そうだ、と言ったら」 「拍手する」 ナルトが両手を挙げて、その仕草をしてみせる。 「・・・・・・。・・・・・・それだけですか?」 「おまけに飴もつけてやる。しかも、ぐるぐるキャンディーだ。」 「・・・・・それで俺が、喜ぶとでも・・・・?」 「うん」 「・・・・・・・・。・・・・・・・・・俺のこと、何だと思ってるんですか?」 「うちはサスケ」 ナルトは言って、楽しそうにサスケを眺めている。 里人には完璧すぎるほどの火影の姿しか見せないくせに、本性を知っている相手には時折こんな風に 悪戯っぽい顔を見せる。 「で、その相手は誰?」 「・・・・・言っていいのか?」 「駄目」 一言のもとにサスケの言葉を打ち落としたナルトの顔に浮んだ笑顔は、恐ろしく魅力的で、蠱惑的・・・ サスケが何と答えるか重々わかった上での確信犯。 「・・・・ナルト」 うなるようにサスケは、職務放棄してサスケをからかうナルトの名前を呼ぶ。 「何だってば?」 「・・・・・。・・・・・」 ―――― 駄目だ。勝てそうに無い・・・。 うな垂れるサスケに、今日も有意義な一日が過ごせたと満足するナルトだった。 |