偶像









「俺さ・・昔からすげー疑問だったんだ・・・」
「あん?」
 中忍試験にのぞむ下忍の一人が遥か高みにいる火影の姿を眩しそうに見上げつつつぶやく。
 下忍の名前は何と言ったか・・・・思い出せないが、まぁいい。
「火影てさ・・・実はなる条件に”美形であること”てありそうじゃないか?」
「・・・・・・・・。・・・・・・・・・」
 現六代目火影はもとより、五代目、四代目・・・伝え聞く限りいずれも相当な美貌だったらしい。
「何か、俺・・・中忍試験でここまで来たことより、こうして火影様の姿を拝見できただけで幸せだ・・・」
「・・・・・・・・。・・・・・・・・まぁ、否定はしない」
 以上、中忍試験にのぞむ若き下忍たちの会話である。








「・・・・て、好きなこと言ってるみたいだけど〜、落としちゃう?」
 噂の火影の隣に立つカカシが笑いつつも、どこまでも本気な一言を漏らす。
「私情を挟むな、カカシ」
 火影の背後からカカシを睨むのは先日、側近を拝命したサスケである。
「・・・俺、前々からお前のことムカつくと思ってたんだよね・・・いきなり側近なんてなっちゃうし、あろうことか
 ナルトに・・・・っ!!」

「うるさい、黙れ」
 火影の静かな一声に二人は言い争いをぴたりと止めた。
 まさに鶴の一声。
 
 火影は流れるような動作で立ち上がると、一歩踏み出した。
 動きやすくという火影の依頼を受け、改良された火影の服の裾が割れて形のいい足がちらりと覗く。
 すかさずそこに目がいくカカシ。相変わらず変態だ。・・・いや、磨きがかかっているかもしれない。

「これより中忍選抜、最終試験を行う!」
 涼やかなナルトの声が試験会場の隅々まで響き渡った。



 





 遡ること二年前。
 五代目火影ツナデより、その座を譲り受けた六代目火影。
 御名を『うずまきナルト』と申される。

 中忍、上忍より格別の支持を受け、里の年寄の反対も抑え込んでの火影就任だった。
 その姿、麗しく。その能力(ちから)、全てを凌駕し。よって無双佳人と称された。











 さて、話は戻る。
 本日は火影が宣言したとおり、中忍選抜最終試験のよき日である。
 普通なら、将来有望な忍を探すためにやって来る自国他国の大名、有力者たちだが、六代目火影が
 就任してより、彼等の思惑は少々それていた。
 彼等が誰よりも見たいのは、『六代目火影』その人である。
 公の場に姿を現すことは滅多にないだけに、その姿を一目みたいという輩が集まっている。
 果たして噂通り、この世の二人と存在しないほどの美しさを持った火影なのか、その強さは偽りでは無い
 のか、好奇心と悪意をもって人々は火影の登場を心待ちにしていた。
 だが、そんな思いも火影の姿を視界に入れた途端、綺麗さっぱり消え去った。

 何の装飾もない白い装束を身に纏っただけの姿。
 だからこそ、その美しさは一種神がかっていた。視線が引き寄せられる。息が止まる。
 この世のどんな宝石よりも美しいサファイアの瞳には強固な意志の輝きが宿り、その視線が僅かとは言え
 注がれれば、もう何も考えられなくなる。思考が白熱する。
 彼を前に、正気を保っているのは至難の技だった。
 



「あー、やだやだvまたストーカーが増えるかもね♪」
「一番性質の悪い奴がよく言う」
「サスケ・・お前、仮にも恩師にその言いようはないんじゃない?」
 カカシとサスケ。火影を間に挟んで犬猿の仲である。
「本当のことを言って何が悪い」
「ナルト〜、あんなこと言ってるよ〜」
 ナルト、カカシをちらりと見た。
「確かに、本当のことだな」
「ナルト〜〜っ!!!」
 この二人、いや三人のやりとりはもうほとんど木の葉名物となっている。
 他の人間は相手にするのが馬鹿馬鹿しいのか見て見ぬふり。

「・・・・うずまきナルト」
 
 そこへ抑揚の無い低い声が掛けられた。
 サスケとカカシが苦い顔をしてその人物を睨みつける。

「ああ、我愛羅。久しぶりだな。今回も風影の代理、ご苦労さん」
「大したことでは無い」
 ナルトが火影に就任して以来、砂の国は風影本人ではなく、代理で我愛羅がやって来るようになった。
 里の一部は、『なめられている』と思ったらしいが、ナルト本人は我愛羅の力を風影と同等に評価している
 ので否やは無い。国交も正常化して久しく、次期風影と噂される人物の不興を買うこともなかろうと木の葉
 側は沈黙した。

「・・・多いな」
 主語を抜かしてしゃべるのは我愛羅の癖だ。
「木の葉の下忍も、自国で無様な真似は出来ないからな」
 ナルトは我愛羅の省かれた主語を正確に把握して受け答えする。
 だが、決してそれだけでは無いことをカカシとサスケは知っている。
 下忍連中は身分不相応にも、中忍選抜試験に勝ち抜いて火影自らに声を掛けられることを願っている。
 ・・・いや、ほとんど祈っていると言っていい。
 下忍、中忍、上忍・・・若い連中が無双佳人と称えられる火影に抱く思いは信仰心に近い。

 絶対者。
 それが、六代目火影。うずまきナルトである。


「さぁ、第一試合だ。楽しませてもらおう」
「・・・・そうだな」
 ナルトと我愛羅は一際高い位置に設けられた椅子に座し、広場を見下ろしたのだった。



 









::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
スレナルで、初火影ナルトです♪
でもいきなり中忍試験でどういった経緯で火影になったかは
書いてませんが・・・まぁ、それはちょっと長くなりそうなので
別にUPさせていただく予定です。
サスケがナルトの側近になった話はすでに某所にUP済み(笑)
(普段は閲覧不可能な場所ですので、探してもダメです)
読んでなくても話の流れにはさほど関係ないので大丈夫でしょう。
・・・・・おそらく。


BACK