甘さ ≒ 弱さ
「ナルト、ちょっといい?」 「・・・・・・・何だ」 珍しく、おちゃらけた雰囲気ではないカカシの声にナルトは振り向いてやった。 しかし、ただ今下忍の任務中。 どうせならば終わってからにして欲しいものだ。いくら影分身でナルトがさぼっていたとしても。 「あのさぁ、何でそんなにサスケのこと嫌いなの?」 「馬鹿か。”嫌い”なんじゃない、”憎い”んだ」 「・・・・えーと、それじゃぁ、どうして憎いの?」 「何でそんなことがお前に関係ある。教師として目覚めたとか?・・・は、お笑いだな」 情け容赦ないナルトに、カカシはくじけそうになる。 カカシとしては、サスケがナルトに嫌われようが憎まれようがどうでもいいのだが、木の葉の忍として お金を貰っている身としては、逆らえぬ世のしがらみというものがあり。 ちょっと前から気になっていたこともあり。 ナルトに聞いてみたのだが・・・まぁ、大方の予想通り、応えてはもらえないようだ。 「・・・・・・・・・・イライラする」 ぽつり、と吐き出されたナルトのセリフをすかさず、カカシを受け止める。 「何が?」 「自分の弱さに気づかないところだ」 「・・・・十分気づいてると思うけど?」 だから、サスケは誰よりも強くありたいと望み、修行にあけくれている。 焦燥さえ抱いて、強くなろうと死に物狂いで足掻いている。 「強さの意味を知らない。それが弱さだ」 「・・・・・・・」 「ぬくぬくと血族と里に守られて生きてきた甘ちゃんにそれを理解しろ、というのが無理なのかもしれない けどな・・・・・己の馬鹿さ加減に全く気づいてない」 「んー。あいつも復讐一直線で、周り全然見てないからね〜」 「・・・カカシ、何を珍しいことをしてる?」 サスケを庇うようなカカシの発言にナルトは眉をしかめた。 「え?何何!嫉妬してくれた!?」 「・・・・・・・・・・・底抜け馬鹿」 「ひど〜い、カカシ泣いちゃうぞぉ」 「勝手に泣け」 気持ち悪いカカシのシナにナルトが腕をさする。 鳥肌が立ったらしい。 「お前だってわかっているだろ。いくら俺のことを愛してるだの、好きだの、馬鹿げたことを言っていた としても・・・・お前は殺せるだろ、俺を」 「・・・・・・・・・・・・どうかな、難しいかも」 ナルトは薄く笑う。 「サスケは無理だ。あいつは俺を殺せない・・・・いや、実際のところ、復讐相手のイタチも無理かもな」 「・・・・きついね〜」 「事実だ。それがあいつの弱さ」 「・・・・無自覚の弱さ、かな」 「あいつは駄目だ。どんなに技術を身につけても・・・・”忍”にはなれない」 それが、サスケへのナルトの評価。 「イタチには勝てない」 「・・・・・・・・イタチを、知ってるの?」 「愚問だな。俺がいつから暗部に所属していると思っている」 「あー、それもそっかぁ・・・」 「・・・で、お前が本当に聞きたかったのはイタチのことか?」 「あ、バレた?」 これ以上付き合っていられないと、ナルトは立ち上がった。 視界の先では、そろそろ下忍たちの任務が終わりを迎えようとしていた。 「・・・カカシ、サスケは弱いが、お前は甘いな」 「・・・そんなこと言われたの初めてだよ」 カカシが覆面の奥で苦笑を漏ら気配がした。 「だから、”無自覚”なんだろ」 吐き捨てるように言うと、ナルトは影と一つになるべく姿を消した。 「・・・・・ナルト、お前は優しすぎるよ」 |