忍の里には思いのほか、孤児が多い。
 それは当たり前。
 親たちは命がけで仕事している連中がほとんどで・・・帰って来られない
 奴らだっている。

 けれど。
 俺と、ナルトはその中でも異質だった。
 一族全てを実の兄に殺され、復讐を誓った俺。
 両親がおらず、それにも関わらず何故か里人たちに忌避されているナルト。

 俺たちは常に孤独で一人だった。
 何者にも頼れず、修行に打ち込む日々。

 無口になって当然だろう?
 無愛想で何が悪い。
 言いたい奴には言わせておけばいい。
 そんな奴らは俺には必要ない。
 そう思って生きてきた。
 だが・・・。

 ナルトはそうでは無いらしい。
 あいつは無視されても突っかかっていくことをやめない。
 おしゃべりで、ころころ表情が変わって、一時たりとも静かにしてない。

 何故?
 お前の孤独はそんなもので癒されはしないだろうに。
 空回りする様はいっそ哀れだ。
















「サスケってさ、何でいつもむすっとしてんの?たまには笑ってみろってば?」
 いつものDランクの任務の帰り道。
 並んで歩いていたナルトが話しかけてきた。
「必要も無いのに笑えるか。お前とは違うんだよ、ウスラトンカチ」
 冷たく返せば、想像通りむきになって突っかかってくる。
 ・・・・・はずが今日は違った。


「サスケ、お前って可哀相な奴だってば」


「な・・っ!?」
 まさか、ナルトにそんなことを言われるなど、それこそ予想外のことでサスケは
 咄嗟に言葉が出てこない。
「笑うっていうのは結構、簡単にできるってば。どんなに苦しい時だって、どんなに
 ・・・・・冷たくされたって。口の端を上にゆがめて目を細めるだけ。それで笑って
 いるって皆思ってくれるってば」
「・・・・・・」
「そんなの本当に笑っているとは言えないけど。だって、そうでもしないと絶望して
 しまいそうだったから。そんなの・・・・・・・・・嫌だ」
「・・・・・・・・・」
 ドベでウスラトンカチで何も考えていないと思っていたナルトの意外な言葉。
「俺は強くなりたい。・・・全てを許せるほどに」
 この運命を。
 己を忌避し、蔑む里人たちを。・・・己の敵さえも許せるように。
 だから、笑っていたい。何ものにも負けないように。
 それが本当の笑いでなくても、いつか本当に心から笑えるように。

 それはサスケが求める強さとは違う。
 けれど、それも”強さ”。

「・・・なら、俺は笑わない。絶対に」
「っ!!何でだってば!」
「それが俺の”強さ”だからだ」
「・・・・・。・・・・・違うってば、サスケの馬鹿!」
「何だと、ドベ!」

「そんなの強さ、て言わない。そういうのは”弱さ”て言うんだってば!」

「・・・・言ってくれるじゃねぇか、俺に一回も勝てねーくせに」
「むっ!そんなのすぐに勝ってやるってば!俺は火影になる男だからな!
 火影になったらサスケなんて顎でこきつかってやるんだってば!」
「ふん、出来るもんならやってみろ」
 売り言葉に買い言葉。
 

「ああ、やってやるってば!絶対サスケを心から・・・大笑いさせてやるんだからな!
 覚悟しろってば!」
「ふん、せいぜい頑張れよ」
「く〜〜っっ!俺は本気だからなっ!!」
 互いの家への分かれ道。
 狭間に立ってこぶしを握りしめて絶叫するナルトを背後に俺は無視して歩き出す。


 
 笑う・・・か。
 そうだな。
 いつか。俺の復讐を果たした、そのときは。
 その瞬間にこそは。

 笑っているかもな。・・・・・・・たとえ歪んだものであろうとも。










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