「「「「「何だとっ(ですって)!!!」」」」



 そんな叫び声が火影の執務室に響いたのは漸く厳しい冬の寒さが緩みかけた、早春のある朝
 のことだった。















「ナルトが行方不明だと!?」
「どういうことよっ!」
「ほ、火影様が・・・・?」
「ナルト〜〜」
 おわかりだろうか?今の発言は上からサスケ、サクラ、イルカ、カカシ、の順だ。
「これが俺の家に投げ込まれてたぜ・・あー、面倒くせぇ・・・なんで俺の家なんかに・・・」
 久々の休みだったのに、とシカマルはひらひらと皆の目の前に手のひら大の紙を揺らす。
 その紙に一斉に詰め寄る一同。かなり怖い。
「何・・・?・・・『火影は預かった。命が惜しくば例の禁術書と交換だ』・・・・?」
「”例の禁術書”?」
 イルカが首をひねり、サクラに知っているかと訪ねる。
「いえ、知りません。・・・そんなものあったかしら?どうせならもっと具体的に書いて欲しかったわね。
 これじゃあ偽者掴まされても苦情は言えないわよ。ほら、よく通販であるじゃない?『広告の商品と
 違うじゃないかっ!』『いえ、これはあくまで一部参考でございますから』・・て」
 いや、それは違うだろ。
 皆は心の中でサクラに突っ込むが木の葉の隠れ里、影の実力者に逆らう馬鹿はここには居ない。
「・・・最近、持ち帰った禁術書かな〜」
「心当たりがあるのか?」
「ん〜〜〜」
 皆の期待がカカシに向いた。カカシはにっこり。
「無い」
 
「・・・・こいつに期待した俺が馬鹿だった・・・」
「サスケ君・・・今さらよ・・・」
「ははは、君ら何気に失礼だな〜〜」
「今さら、だろ」
「そうね、今さらよ」
「・・・・せんせー、ちょっと傷ついたぞ・・・・」
 元教え子たちの冷たい仕打ちに、カカシは部屋の隅でのの字を書き始める。
 もちろん、そんな姿は不気味なだけで誰も同情なんてしやしないのだが。
「とりあえず、暗部のほうに最近里に不法侵入者が居なかったか確認してみよう」
「そうね、私は諜報部のほうへ顔を出してみるわ。イルカ先生」
「ん?」
「先生は溜まってる仕事、お願いします」
「・・・・・・・・。・・・・・・・わかった」
 それがいったいどれだけの量になるのか、考えるだけでイルカは眩暈がした。
「おい、カカシ」
「何?」
 サスケの不遜な物腰にも元教師はびくともしない。
「てめぇも暗部と一緒に働いて来い」
「言われるまでも無いよ。じゃねっ!」
 一瞬で姿を消したカカシに、サスケは大きくため息をつく。
「・・・・こと、ナルトのことに関すると動きが早いんだ・・・」
「それこそ、今さら、よ」
 サクラの言葉を誰も否定しなかった。
「シカマル」
「何だ・・・めんどくせー」
「そんなこと言ってもナルトのこと放っておけないくせに。イルカ先生の補佐お願い」
「・・・・・・・・・りょーかい」
 重ねて言うが、木の葉の隠れ里、影の実力者に逆らう馬鹿はここには居ないのだ。





















 その頃。
 誘拐されたはずのナルトは、甘味処であんみつパフェを食していた。
 その向かいに座っていたのは・・・・

「今日はどうしたんだってば?珍しいね、イタチ」
 そう、木の葉の隠れ里を抜けたはずのイタチだった。
 ナルトが五代目火影に就任してから、実はちょくちょく姿を現していたのだがここ最近は忙しかった
 のか顔を見せていなかったのに、朝サスケがナルトを呼びに来る前に現れてお茶に誘われたのだ。
 こんなところをサスケあたりに見られれば『火影が抜け忍なんかと茶してんじゃねぇっ!』としばかれ
 るのは確実。
「五代目火影さまのご機嫌伺いに参上致しました」
「・・・ぷっ!あはははっ、何だってば!そんな畏まるの似合ねってばよ!」
 ナルトはスプーンを振りながらイタチの物言いに爆笑した。
「いや、本当だ。しばらくナルトの顔を見ていなかったから寂しくてな」
「またまた〜!本当はサスケに会いに来たくせに!」
 クールを装うイタチだったが、実は弟であるサスケのことを気遣う優しい一面もあることをナルトは
 知っていた。
「そのほうがおまけだ」
「うん、そういうことにしておくってば」
「・・・・・。・・・・・」
 イタチの言葉に嘘は無い。だが、鈍いナルトには通用しないのだ。
 哀れ。
「サスケも俺も元気にしてるってば。イタチはどうだった?」
「問題ない。少々遠出をしていたため顔を見せられなかったが・・・」
「ふーん・・・・・深くは聞かないけど」
 実はイタチは極度の・・・超極度の方向音痴である。それを知っているナルトは、どうせまたどこかで
 迷っていたんだろうと検討をつけた。
 大当たりだ。
「しばらく見ないうちに、また綺麗になったな。ナルト」
「ぶー。男に綺麗って言われても嬉しくないってば!どうせならカッコよくなったて言って欲しい!」
「本当のことなのだから仕方ない。それに木の葉の繁栄も音に聞く」
「皆のお陰だってば!俺独りだったら全然ダメだったってば。皆が助けてくれるから俺は火影として
 思いっきり仕事が出来る・・・幸せだってば!」
「・・・・・。・・・・・そうか」
 輝く太陽のような笑顔を浮かべたナルトに、イタチも自然と微笑を浮かべた。





















「ただいまって・・・・あれ?」
 イタチと別れて火影の執務室に現れたナルトは、そこへイルカとシカマルを発見して首をかしげた。
 イルカとシカマルも突然現れたナルトに目を丸くしている。
「・・・サスケは?」
「・・・・お、お前こそ何でここに居るんだっ!?」
 イルカが立ち上がる。
「訳わかんねー・・めんどくせー・・・」
「何で・・・て、ちょっと人と約束があるから午前中の仕事はサスケにまかすってメモ置いておいたはず
 だってばよ・・・・?」
「はっ!?」
「そんなの知らねぇって・・・まさかサスケの奴が見落とすとは思えねぇが・・」
「ナルト、そのメモはどこにあるんだ?」
「え?その机の上に・・・置いてあったはずだけど?」
「そんなものは無かったぞ」
「え???おかしいな・・・ま、いいってば。それよりサスケは?」
「いや、良くないっ!お前、誘拐されたことになってるぞ!」
「はっ?!何で誘拐??」
 ナルトはますます首を傾げる。
 そんなナルトにシカマルが例の紙を見せた。
「・・・えっ!?何だってばこれ!・・・・・・あ」
「何だ?心あたりがあるのか?」
「きっと・・・これ、悪戯だってば・・・・ほら」
 ナルトが小さく印を組み、呪を紡ぐとその紙が一瞬輝いた。
 イルカとシカマルがのぞきこむ。

「「・・・・・・・・・あ」」
 そこには、ナルトが残したというメモの内容が浮かびあがっていた。














「全く、人騒がせなんだからっ!」
 火影探索に全力をあげていた一同をナルトが狼煙をあげて火影の館に集めたのだが、サクラの
 一声に、ナルトは『ごめんってば』と頭を下げた。皆が自分のことを心配して探し回ってくれていた
 のは事実で、ナルトにはそのことがとても嬉しかったから。
「だいたい、シカマルもそのくらいの術見破りなさいよっ!」
「・・・何で俺が・・誰も見破れなかったくせしてよ・・めんどくせー」
 だがきっとサクラに睨みつけられたシカマルはうっとひるんで、頭を下げた。
 重ね重ね言うが、木の葉の隠れ里影の〜以下省略。
「しかし、ナルト。いったい誰と会っていたんだ?」
「そうそう〜、そんな情報何も入ってこなかったんだけどね〜」
「え、イタチだけど」

「「「「「何っ!!」」」」」

 予想外の一同の驚きように、ナルトのほうが驚く。
「・・・何だってば?」
「何を暢気なこと言ってんのよっ!わかってんの、あいつは抜け忍なのよっ!」
「ナルト〜、何もされなかったのかな〜先生心配だよぉ」
 どさくさ紛れにナルトの身体を触りまくるカカシ。すかさずサスケのクナイが飛ぶ。
「・・・あのクソ兄貴が・・・・・今度現れたら・・・・コロス」


 そんな一同それぞれの反応を見つつ、ナルトは今日も里は平和だなぁと的外れなことを思って
 いたりするのだった。









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さすがは火影!
何事にも動じない大器!(笑)


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