『本日をもって、うずまきナルトを五代目”火影”とする』


 春うらら。
 桜舞う、木の葉の隠れ里の広場で。
 三代目”火影”は高らかに宣言した。














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 う〜・・・う〜・・・・・

 先ほどから扉一枚隔てた向こう・・・五代目火影の執務室から妙なうなり声が
 聞こえてくるのを張り番で立っていた忍は冷や汗をかきつつ、故意に無視していた。



「はいっ!火影サマvまだまだたくさんっっっあるんだからか、ちゃっちゃっと片付けて
 くださいねv」
 

 どさどさどさぁっっ!!


「・・・・・・も・・・・・」
 机の上に山となった書類に埋もれていた金髪がゆさゆさと動き、がばっと起き上がった。
「もうっっ嫌だってばーーーっっ!!!」
 五代目火影=ナルトは起き上げた頭を横にちぎれるのではないかと思われるほどに
 激しく振って、目の前の人物・・・・主に火影の事務面の補佐を務めている春野サクラに
 盛大に抗議した。
「何言ってんのっ!まだ1時間しか経ってないでしょっ!」
「1時間もっ、だってば!だいたいこんなたくさんの書類に全部目を通そうと思ったら
 いつになっても終わらないってば!」
「確かに、そうやって文句言ってる時間があれば手を動かしたほうが終わる時間は早いわね」
 あー言えば、こう返される。
 所詮、ナルトがサクラに口で勝てるわけがないのだ。
「うううううーーーーっっ・・・・」
 どうやら厚い扉の向こうまで届いていたうめき声は、コレだったらしい・・・。

「だいたい、火影のじっちゃん、こんなことして無かったってばよ!」
「ナルトが知らないだけで、三代目火影様はしてらしたわよ!」
「・・・・・・み、見たこと無いってば!」
「それはナルトは外の仕事ばかりで中の事務をしてなかったせいでしょ。だいたい火影て
 いう仕事は、英雄なんて名前を借りた体のいい雑用係なんだから」
「そ・・・そうなんだってば・・・・・・?」
 ナルトが疑わしげに訪ねれば、サクラは大きく自信たっぷりに頷く。
「・・・・・」
 ナルトは口をぱくぱく、と動かし・・・これまた大きく溜息をついて肩を落とした。
「・・・火影て・・・・」
 その背後には春だというのに枯葉が舞っているように見えた。





「もうっ、これで最後!っだってば!!」
 最後の一押しっと気合を入れて判を押したナルトは、その判を無造作に投げ捨てると
 ぐたぁっと椅子に脱力した。
「はい、ご苦労さま」
 そんなナルトに軽くねぎらいの言葉を投げて書類の束を手に持ち、部屋を出ようとした
 サクラの目の前で、扉が自動的に開いた。
 ・・・いや、向こう側から開かれたのだ。

「きゃっvサスケ君!任務、終わったの?」
「ああ」
 そこにはすっかり美青年と化した・・しかし、相変わらず仏頂面のサスケが立っていた。
「・・・サスケっ!?」
 ナルトもそれに気づいてがばっと身を起こす。
 そして、ナルトはサスケの姿を視界に入れて、上から下まで眺めると満足そうに頷いて
 笑顔をみせた。
「お帰り、てば!」
 どこにも怪我もなく、いつも通り。
「ああ・・・・ただいま」
 聞こえるか聞こえないかに、返される返事。
 けれど、とても優しい響の声にナルトは激務の疲れが癒されていくように感じた。
「任務報告書だ。さぼらずに目を通しておけよ」
「・・・サスケまで・・・」
 すねたように上目遣いでサスケを見上げるナルト。
 その向こうでサクラがぷっと吹き出していた。

「でも、もう今日は終わりなんだってば!サスケのやつは明日、明日な!・・・・・で
 いいよね、サクラちゃん・・・?」
 伺う様子のナルトに苦笑しそうになるのを抑えつつ、サクラは『仕方ない』と
 頷いてやった。
「・・・・・良かったてばぁぁ・・・・・・あっ!そうだ!サスケってばもう晩飯食ったのか?」
「いや、まだだ。帰ってきてすぐにここへ顔を出したからな」
「だったら食いに行こう!」
「・・・・・ラーメンは却下だぞ」
「えぇぇぇっっ!!!」
 火影となった今も、以前と変わらない食生活を送っているらしいナルト。
 サスケとしても任務中は非常食ばかりでろくな食べ物を口にしてはいないのだし、
 帰ったその日くらいは、まともなものを食べたい。


「じゃ、俺のオススメのお店に案内しちゃおう〜♪」


 乱入したのは、サスケと同じ上忍の服装に実を包んだカカシ。
 
「はい、報告書v」
「お帰りなさいってば、カカシ先生!」
「だから、『先生』はやめなさいって。もうお前は”火影”なんだから」
「いいじゃん!どうせここにはサスケとサクラちゃんしか居ないってば!」
 そのサスケは、カカシに凄まじいまでの殺気の篭もった視線を向け、サクラはどこまでも
 鈍感なナルトを挟んだ熱い戦いを興味津々に見つめる。


「それじゃ、皆で食べに行くってば!へへっ楽しみ〜っ♪」
 皆でわいわい、がやがやと騒がしいことが好きなナルト。
 先ほどまでの疲れた様子はどこへやら。どこまでもうきうきと楽しげなナルトの姿に
 この場で、その提案を断れる人間は存在しなかった。






 その『オススメの店』に到着した頃には、当初の人数の倍以上の数になっていたことは
 蛇足である。







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+あとがき+

最初の上火ということで、かる〜く仕上げてみました。
この設定は難しいですよね。
シリアスにしようと思えば、どこまでもシリアスにできるし
ギャグにしようと思えばどこまでもギャグに(笑)
出来れば、シリアス、ギャグを織り交ぜながら
どこか「ほのぼの」という作品に仕上げていきたいな・・・
と思っておりますv







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