翼ある闇


「なんで、お前なんかと任務なんだか・・・」
 心底嫌そうに吐き出され、さすがのカカシも涙が出そうになった。
 こんなにもカカシの心はナルトを求めてやまないというのに、いっこうにナルトはわかってくれない。
「そんなこと言って~、嬉しいくせに照れちゃってv」
 くじけそうになる気分を軽い言葉で盛り上げようとするが、ナルトはますます気温を下げる。
 他の人間ならば、形ばかりでも気分よくさせる方法は幾らでも思いつくのに、ことナルトに対する時だけは 抱く思いが強すぎて、思い通りになったことがない。
「くだらないことばっか言ってないで、行くぞ」
「あ、待って待って」
 暗部の装束に身を包んだ細い躯が、カカシの前を走っていく。
 頼りなく、華奢で、今にも壊れそうなのに、そのうちに秘める力は誰よりも強い。

 (ああ・・どうしよう・・・)

 Sランクの任務中だというのに、カカシは理性を打ち破りそうな衝動に翻弄される。
 この目の前の、細い躯を・・・

 (抱きしめたい)
 腕の中に、かき抱き、閉じ込めてしまいたい。
 その体を、感じていたい。


「っおいっ!」
「ん~何ぃ?」
「てめぇ、やる気あるのか?」
 ドスのきいた声がカカシのすぐそばから聞こえる。
「もちろん~vvせっかくのナルトとの任務なんだからvv」
 ナルトと二人きり。どこからも邪魔は入らない。二人だけの時間。
 それをカカシは無駄にする気は無い。

「ねぇ、ナルト」
「・・・・・」
「ナルト~」
「黙れ、任務中だ」
「好き、だよ」
 シュンッ、と殺気をこめたクナイがカカシの頬をかすめて飛んでいった。
「・・・死んでろ」

 ああ・・警戒心むきだしのハリネズミ。
 こんなにも好きだというのに、思いはいつでも一方通行でしかないのだろうか?
 ・・・いや。
 それならば、カカシはとっくに殺されている。それだけが、ただ一つの希望。

「まったく、これのどこがエリート・・」
「え?え?見えない?今なら庭つき一戸だて、素敵な旦那サマまでオプションでついてくるよ、どう?」
「エンリョします。そんなもん・・・俺には、必要ない」
 話はこれで終わりだと、ナルトはカカシに背を向けた。

 闇に解ける、闇の装束。

 けれど、カカシには見えるのだ。
 ナルトのその背に広がる、純白の翼が。

 闇をつらぬく、眩き光りが。


「ナルト・・・・」










 愛しているよ。