頂上決戦!
『散!!』
ナルトの合図に、木や草むらに隠れていた忍たちが姿を表し、同様に目の前に現れた忍たちに
向かっていった。
ナルトの傍から現れた忍は額当てに木の葉の里の徴があり、相手のほうには砂の里の徴が彫られている。
手裏剣が飛びかい、クナイが打ち合い火花を散らす。
総勢50を超えようかという数の忍たちが打ち合う様は滅多に見られるものでは無いが、普通の
人間たちが喧嘩をするのとは違って、妙に”静か”に争いは行われる。
戦闘中にいちいち気配を殺すことは無いと思うのだが、日頃の慣れ・・というやつだろう。
ピーーーーッ!!!
突如鳴り響いた、鳥の鳴き声のような音に共に打ち合っていた忍はそれぞれの陣営に音もなく引き上げていく。
戦闘をじっと見守っていたらしいナルトは帰ってきた忍たちに目を走らせた。
多少すり傷や打撲の痕があるものは居るが、地を流している者は居ない。
人数も変化なし。
「首尾は?」
ナルトの静かな声に4,5人が・・・カカシやアスマの顔も見える・・・目の前で指を立てる。
その指の数が1本の者も居れば5本の者も居る。
そこでナルトの険しかった表情に笑みがのぼった。
その笑顔は本当に嬉しそうで・・・滅多に見ることのできない貴重なものだ。
「・・・ご苦労」
漸く聞かされた言葉に忍びたちはほっと緊張を解いた。
そんな皆を気にすることなくナルトは砂の忍たちが撤収したあたりを振り返り、叫んだ。
「今回も俺の勝ちだなっ!
我愛羅っ!!」
腰に手をあて、勝ち誇ったように宣言したナルトに普段の感情の起伏がほとんど無いと思われる
ナルトしか見たことのない数人の忍が唖然とした表情を浮かべる。
残る忍たちは「ああ・・またか・・・」と吐息を漏らした。
事の起こりは1年ほど前に砂の国から届けられた親書にさかのぼる。
宛名は火影だったが、何故か中身の手紙は「うずまきナルト殿」と書き出されており、その親書の
タイトルはずばり・・・・
『果たし状』
と太く逞しい筆使いで書かれていた。
ここまで来れば、その内容は説明するまでもなく推察できるだろう。
つまり要約すると・・・
『俺(砂)たちとそっち(木の葉)は隣国同士だし、親交を深めるためにちょっと模擬演習をして
みないか?ただし模擬演習だといってもナメてもらっちゃ困る。こっちは腕のたつ上忍ども
集めるからそっちも相応の相手を出してくれ。ちなみに隊長には”うずまきナルト”を指名する。
こっちは我愛羅だ。場所は境の森。どうだ、いい考えだろ?』
・・・とまぁ、ここまでフレンドリーに書かれていたかは不明だが、かくして『木の葉VS砂』の
戦いの・・・まぁ、模擬戦だが・・・火蓋はきっておとされた。
それが今回で数えること5回目。
1年に5回とはなかなかすごい。2ヶ月に1回は打ち合っていることになる。
そして、ナルト率いる木の葉は全戦全勝、戦績を白星で埋めているのだ。
それもそのはず。木の葉のナルトによって選りすぐられた上忍たちは、模擬戦の前にナルトから
・・・それはそれは殺気だったナルトから在り難い言葉を頂いているのだ。
曰く、『負けたら殺す』。
おそらく、ナルトは本気だろう。
「それにしても、ナルトがそんなに模擬線ごときで熱くなるなんて珍しいね~」
「本当だぜ。一文にもならねーってのにな」
ナルトの性格をよく知っているカカシとアスマが盛んに首を傾げる。
1回目は、まだ面白いかもしれないと乗るのはわかる、だがそれが2度3度続くというのは・・・
何かあるとしか思えない、という二人の疑惑にナルトはあっさりと言った。
「ああ、我愛羅の奴と賭けてるからな」
「「はっ!?」」
「俺が勝ったら砂の里にある禁書を貰う」
「・・・・・・」
ということは、俺たちはそのためだけに借り出されていたと?
アスマはちょっと憂愁を感じてしまう。
「ナルトが・・てことは、当然あっちも何か要求してんだよね?何?」
「俺を一日自由にする。何でも言うことを聞けってさ」
「・・・っ!!」
そんなの冗談じゃねぇから、勝たないとダメだろ・・・と続けるナルトの言葉など二人は聞いてはいない。
「ナルトをっ」
「一日自由にっ」
「何でも」
「言うことを」
「て、おい。お前らいったい何想像してやがる」
怪しいオーラをかもし出すカカシとアスマをナルトが睨みつける。
「っナルト!俺、今から砂の忍になるっ!!」
「アホかっ!!」
「砂の忍になって、ナルトを自由にする~~っ!!」
「・・・・・。・・・・」
それを普通は”抜忍”というのだが・・・ぷっつんきたらしいカカシはそんなこと考えてはいない。
『カカシ』
『ナルト・・・今日一日はお前は俺のものだよ』
「うわ~~~~~vvvv」
何を妄想したのか、カカシは地面を転げまわっている。
とても木の葉の里のエリート忍者とは思えない有様に周りの忍がひいている。
ナルトは深くため息をつき、ずきずきと痛む額を押さえた。
そして思うのだ。
こいつは砂の里にやったほうが平和かもしれない・・・と。
何てグッドアイデア!
近年稀にみる素晴らしい考えにその後、ナルトは我愛羅にあてて手紙を出した。
『 写輪眼の、と有名なはたけカカシをそちらに譲りたし 』
その返答は『不要』との、いともそっけないものだった。