特訓教訓


(なんで俺はこんなことしてんだろーな・・・)

 ナルトはぴちぴちと跳ねる目の前のおたまじゃくしを見つめながら心底疲れた
 ため息を吐いた。
 
 






 ナルトの目の前にいきなり現れたエロ仙人・・・三忍の一人である自来也の 口寄せなどという修行に精を出す格好をして3日。
 ドベぶりを発揮するのが今日という日ほど嫌になった日は無い。

 本来のナルトなら自来也に方法を教わるまでも無く、口寄せの一つや二つ余裕でこなすことができる。
 だが、そんなことをすれば今までの苦労が全て水の泡。
 漸く鬱陶しいカカシを何のかんのと理由をつけてサスケのほうへ追いやったというのに・・・
 エビスが相手のままだったら適当に巻いて、任務も無しという素晴らしい日々を送るはずだった・・・それが。


「なーにをため息をついとるっ!何だ!このおたまじゃくしはっ!!」
「し・・知るかってば!あんたの教え方が悪いんじゃ無いのかっ!!」
 
 (本当もう・・いい加減にしてくれよ)

 女湯を覗き見する振りをして、ナルトへの注意をそらさないのはさすがだ。
 だが、それゆえにナルトも気が抜けない。
「っむ~・・どうもお前はチャクラの使い方が下手だの~」
「・・・・」
 自来也は腕を組み、しばらくナルトを見ながら何やら考え込んでいる。
 そしてにやりと・・・。

 (うわ・・すげーヤな予感)

「よ~し、今日は徹底的にチャクラの使い方を修行するっ!!」
「おぉ~っすげ~!何するんだってば!!」
「お色気の術を磨きぬくのだっ!!!」
「・・・・・・それってただ自分が見たいだけじゃ」
「んん?」

 (聞く耳持たねーなこのエロ仙人・・・・)









「おいろけの術っ!!」

 ぼんっ。

「いいのぉっ!いや・・・もう少し胸はあったほうがいいぞ?」
「そうだってば?」
「おおっ、腰はもうすこ~し、細くな・・・こう抱いてきゅっとするのが男のロマンというものだからの~」

(それはただ単にスケベなだけだ・・・)

 先ほどから繰り返される自来也の駄目だしにナルトの顔もいい加減ひきつってくる。もともと気が長いほうでは無いのだ。

「それじゃ・・・これでどうだっ!おいろけの術っ!!」


 ぼんっっ!



「・・・・・・・。・・・・・・・・・・・」
 自来也の反応が無い。
 ナルトはポーズをつけたまま固まっている。

「わ・・・・」
「・・わ?」







「儂の好みだーーっ!!」






 叫んだ自来也は変化したナルトに抱きついた。

「・・ふざけんじゃねーーっ!!」



 ナルトはキレた。
 目にも止まらぬ速さでナルトは自来也に攻撃を繰り出す。
 ・・・・とても下忍だとは信じられないほどの速さで。




「・・・やはりな」
 ナルトの拳は自来也の手に止められていた。
「・・・何が、だってば?」
「お前がずっとふりをしていたということだ・・・ドベのな」
 すっとナルトの顔から表情が消えた。

「さすが三忍といったところか・・・で、どうするつもりだ?」
 相手が確信しているのに騙すことは出来ない。
 ナルトは腹をくくった。
「どうするも何もこのまま修行を続けるのみだ」
「この俺に?狐にまんまと力を貸すことになっても?」
「お前は狐か?うずまきナルトでは無いのか?」
「その俺に九尾のチャクラを使わせようというんだな」
「何だ、わかっていたのか。それならさっさとやれ」
「・・・・・・」

(こいつ・・・っ)


「・・・っ口寄せの術っ!!」
 ぼわんと白い煙がたちのぼる。

「おぉ、久しぶりの娑婆じゃの~」

 煙の晴れた向こうから現れたのは見あげるばかりの大きさの巨大蝦蟇。
 あまりの大きさに足元のナルトが見えていないらしい。
「おいっ!カエルっ!」
「だーれがカエルじゃっ!このガマ親分に向かって!」
「うるさいっ!どうでもいい、ガマ親分!あいつ・・ちょっとしめてやってくれ」
「自来也のことか?」
「そうだってば!」
「ふむ、それも面白いかもしれんのう」
「お・・おい、ガマ・・・」
 思案顔(カエルの表情が変わるのかどうかはとにかくとして)のガマのセリフにさすがの自来也も顔がひきつる。
 ナルトは自来也を逃がさぬように結界を張った。

「ふふん、これで袋のネズミだな?」
 ナルトはにやりと自来也に不気味な笑みを向けた。













 その日。木の葉の隠れ里には盛大が花火があがったらしい。
 
 教訓。
 ナルトをからかうには命がけ。