麗らかに
華が咲いた。
真っ赤に美しい・・・・・
血の華が。
初めて、人を殺したのは・・・3歳の春だった。
鋭く光る刃が頬をかすり、痛みが襲う。
いったい何が起こったのか、とその頬を押さえる俺に女は再び刃を翻した。
それをぎりぎりで避けて、濡れた感触の手を見ると・・・・
べったりと、血がついていた。
赤い、紅い、血が。
『バケモノのくせに・・・赤い血など・・っ!!』
女が髪を振り乱し、目を血走らせて、唾を吐きながら叫ぶ。
バケモノ?誰が?何が?
そう問う暇もなく、女は襲いかかる。
『お前なんか死んでしまえっ!!』
里人が、いつも自分を見るそれ以上に憎悪を含んだ呪いの声。
ああ・・・またか。
また、この瞳。
俺は頬を伝う生ぬるい感触をそのままに、女に向かい合った。
目の前で印を組む。
その視線のまん前の指に・・・・赤い血がついていた。
くらり、と酩酊感が襲い、無意識に呪を唱えていた。
気がつけば、先ほどの女がぴくりとも動くことなく地に横たわっていた。
呼吸を知らせる胸の上下もなく、触れると氷のように冷たかった。
そして。
俺の周りに、血が・・・・・・舞い落ちた春の花びらと一緒に散っていた。
それから9年。
俺はいったい何人の人間を殺したのだろうか?
己の身を守るために・・・暗部の仕事で。
確か、両手と両足の数を超えたところで、数えるのをやめたのだ。
「な~に、自分の手眺めてんの、ナルト?」
ひょっこり現れたカカシが背後から声をかける。
近づく気配を察していたナルトは驚くこともなく、手を眺め続ける。
「なぁ」
「ん?」
「あんた・・・何人殺した?」
沈黙が落ちる。
「・・・・。さぁ?いちいち数えてないしね~。でも何。そんなこと考えてたの?」
「別に」
腰を下ろしていた石から立ち上がると、ナルトはカカシを無視して歩き出した。
「あっ待ってよ、ナルト!」
「何か用か?」
上司に使うとは思えない言葉遣いだが、カカシは何も言わない。
それどころか、普段とは違うナルトに面白がっているふしさえある。
全く、こいつは・・・・。
ナルトは己のらしくない姿を見られたことを後悔した。
「もう、ナルト。冷たいぞ~。サスケたちと居るときはあんなに『好きだってば!』て
言ってくれるのになぁ~」
「・・・・・・・・。」
無視。無視。無視。
「俺だってこんなにナルトを愛してるのに」
「ほざいてろ」
ひゅっと空気を切り裂いて投げつけたクナイをカカシは片手で受け取る。
「ば~か」
ただし、そのクナイにはナルトが瞬間接着剤をべったりとつけていた。
「うわっ!取れんっ!!」
ぶんぶんと手を降るカカシ。
もちろん、そんな程度で取れるわけもない。
「じゃあね、カカシ先生」
ほんの少し・・・驚いただけ。
憎悪から仕事から、ナルトを殺そうとして死んだ奴は掃いて捨てるほどいた。
けれど。
けれど。
俺・・・ナルトをかばって、死のうとした人間は初めてだったから。
驚いて本気を出しそうになった。
「・・・サスケ」
うちはサスケ。
その呪はナルトを・・・・・・・・・危うくさせる。