冷たい微笑


 ああ、馬鹿だな・・・。

 そう思う度に口元が歪んだ。







「俺は復讐者だ」
 事あるごとに、口癖のように頻繁にサスケの口からまろび出るその言葉に 笑いそうになるのを鉄の自制心で押しとどめた。

「サスケってそればっか!」
「うるさい、ウスラトンカチには関係ない!」
「何だとっ!」
 掴みかかろうとした俺とサスケの間にカカシが割り込む。
 いつものこと。
 いつものパターン。

 いい加減飽きはしないのだろうか?
 毎度毎度、こうなるとわかっているくせにきっかけを作り出すサスケに奇妙な思いが胸に渦巻く。

 この思いには何と名をつけるべきだろう。

 苛立ち?

 ・・・それでは不十分な気がする。

 では・・・怒り?

 それも違う気がする。
 この思いはもっと暗く、重たく・・・救いようがない。


 そう。





 ”憎悪”






 こう名づけるのが一番しっくりくる。


 その言葉を聴く度にどうしようもなく、サスケを殺したくなる自分が居る。
 すでに下忍クラスとは呼べない実力を身につけはじめたサスケでも俺の力を持ってすればあっさりと片がつく。
 それほどの差が自分とサスケにはある。

 ただ、こいつを殺せば自分は間違いなく、相応の罰を与えられるに違いない。
 しかも火影直々に。

 良くて監禁?
 最悪は死?
 けれど、サスケを殺さない理由はそんなものじゃない。


 本当は・・・





 殺してしまったら、面白くないから。
 





 ”復讐者”という言葉で自らを雁字搦めに身動きならないように戒めて、必死に もがき、苦しみ、のたうつサスケを見ているのは至極楽しいことだから。

 その姿は滑稽で。
 愚かで。
 
 笑えてしまう。


 ・・・・・泣きたいほどに。




「・・・馬鹿だな」
 本当に。



 俺たちは大馬鹿者だ。

 報われない願望を抱いて生きている。