再ビ見エル 3
影分身と入れ替わったナルトは、自来也と共に病院にやって来ていた。
カカシとサスケが運ばれていたのだ。
「ホント、情けねーな。それでエリートなんかよく名乗ってられたな?写輪眼に頼るようになって鈍ったんじゃないのか、お前」
白い壁紙の病室で、扉には絶対安静の札がかけられている。
そんな病人に、ナルトは情け容赦なく毒を吐いた。
「ナルトお見舞い!?お見舞いにきてくれたのっ!?」
先ほどまで意識も無かったはずのカカシが、飛び起きた。
しかしながら、月読の影響で顔色はドス黒く、心持ち体もふらふらと安定していない。
「馬鹿が。お前なんか見舞いに来たって仕方ないだろう。殺したって死なないようなゴキブリ体質なんだからな。サスケのところに来たついでだ、ついで」
「ひどっ」
「エロ仙人もこんな奴に暁のことバラすなよ。余計な手間が増えるばっかりだ」
「・・・お前、普段も容赦ないが、カカシには更に容赦ないのぅ・・・」
「いえ!自来也様っ!それも愛!ナルトの愛ですからっ!!」
ドゴッ!!
「ぐほぉッ!」
腹部に見事に決まったナルトの手刀で、カカシは再び夢の中へ旅立った。
「オレの周りの連中は変人ばっかだ・・・・」
「・・・・・・・・・」
それは類は友を呼ぶ、というやつでは無かろうかと自来也は思ったが口には出さなかった。
とりあえず、イタチの月読を受けたということでカカシの状態を確認しに来たが、今の調子ならば数日過ごせば元通り任務に復帰できるだろう。
さっさと病室を出て行くナルトに続き、自来也はそう判断する。
素直で無いナルトは『ついで』などと言っていたが、手刀を入れたときにカカシの中で狂っていた
チャクラを一瞬で整えた。医療忍術まで心得ていたとは思わず驚いたが・・・生い立ちを考えればさほど意外なことでも無い。
「次はサスケのとこじゃが・・・」
面会時間はとうに過ぎている。サクラなどの知り合いに出くわすことも無いから丁度いい。
「面倒だな。・・・いっそのこと殺すってのは駄目か?」
「当たり前だろうが」
「だが、恐らく治ったら大蛇丸のところに行くぞ、あいつ」
イタチに再開し、対したことで徹底的な力の差を思い知らされたはずだ。
大蛇丸の甘言に惑わされ、里を抜ける。所詮、紛い物の力であるというのに・・・他人に頼ることで
しか力を得られぬのならば、サスケの成長もここまでだ。
うちは最後の生き残りが『抜けた』などという里の汚名を作り出さないためには、上層部はサスケを
監禁するか、殺すか、どちらかしか選べない。
「サスケがどう生きるかは、サスケが決めること」
「果たして本当にサスケの意志だけで決められているかはわからねぇけどな」
ナルトは意味深な言葉を口にして、サスケの病室の扉を開けた。
カカシと同じような間取りの病室、テーブルの上にはカカシの部屋に置かれていたものより豪勢な
花が花瓶に飾られていた。
ベッドの上でサスケは目を閉じ、ぴくりとも動かない。
眠っているというよりは、昏睡状態になっていると表現したほうがいい状態だ。
「外傷はさほどでも無いが、カカシと同じ月読かけられてたからな・・・こいつにもカカシ並の精神力
があれば余計な労力も使う必要は無かったんだが・・・」
「医療忍術まで使えるとはのぅ」
「違う。俺のは医療忍術じゃなくて、ただの人殺しの技だ。いかに手際よく無駄なく殺せるか。外傷
をつけることなく殺すには?人の臓器で最も弱くダメージを受けやすい部分はどこか?・・・医療忍術
ってのはつまるところその逆ってことだからな。だが、何ごとも崩すより元に戻すことのほうが難しい。
面倒だし神経使う。とりあえず乱れてるチャクラだけは戻すが、完全な治療にはツナデぐらいの腕が居るだろうさ」
ナルトはサスケの腹部に手をあて・・・放した。
先ほどまで土気色だったサスケの顔が、僅かに血色を取り戻す。
「ま、これでツナデを捜して戻ってくるまではもつだろ」
ナルトと自来也は病室を立ち去る。
「・・・イタチのところに行っておったんだろう?」
「・・・・・・・」
「イタチとお前には何がある?」
「またそれ。ただの昔の・・・知り合いだ」
「昔のぅ・・・お前の年で言う言葉では無いぞ。暗部か?」
「まぁね」
二人は病院を出て、そのまま里の出口へ向かう。
「 プロポーズされて籍まで入れた仲だな」
「はぁっ!?」
ぽつりと落とされたナルトの爆弾発言に、さすがの自来也も目を剥いた。
「あいつが勝手にしたことだが・・・じっちゃんと結託してやがったから、今はどうなってるかわかんねぇ
けど、じっちゃんのことだからそのまんまにしてるかもな」
暗部に入ったものの戸籍は最重要機密扱いになり、一般の目には触れなくなる。
閲覧できるものは、火影が認めた者だけだ。
「何じゃと、するとお前・・・『うちは』ナルトかッ!?」
自来也が呆然と立ち止まった。
「ハズレ。あっちが、『うずまき』イタチ、なんだよ」
まるで大したことではない、と肩をすくめたナルトに、自来也の口は大きく開かれたまま。
「エロ仙人っ!何してんだ、さっさと行くぞ!!」
舌打ちでもしそうなナルトに、自来也は落ちた顎を引き戻し・・・心の中で三代目に苦情を言った。
(ふざけるのもえーかげんにせぇっ!三代目っ!!!!)
星が瞬き始めた空に、なつかしい笑い声が響いた気がした。