想うモノ
「任務中に何ぼーっとしてやがるっ!!」
2対無数。
そんな戦いの最中、唯一の役に立つ戦力であるイタチのあまりのぬぼ~とした様子にナルトがついに
キレて叫んだ。
普段は天才と何やらは紙一重ということわざ通りに、切れ者なのか、天然ボケなのか非常に判断に
狂うイタチではあったが任務中にパートナーに迷惑をかけたことはない。
いや、それならばパートナーに迷惑をかけられた回数のほうが多いだろう。
だからこそ、今回の任務のパートナーがイタチだとわかったときに否やを唱えはしなかった……それなのに。
久しぶりに顔をあわした、イタチは……ボケていた。
「くそっ絶対に金輪際お前となんて仕事しねぇっ!!」
かかってくる他国の忍を鬱陶しいとクナイで切り裂いて、ナルトはもうイタチを当てにするのをやめた。
だが、その途端。イタチは夢から覚めたように素早く動き敵に突っ込んでいったのだ。
(出来るんなら最初からしろよ……)
誰かと違って、出来るけれど面倒だからサボってた、というわけでもなかろうし。
ナルトがイタチがボケていた理由を究明する中、無数の敵は徐々にその数を減らし……ナルトとイタチは
山となった死体を火遁で炭にした。
「いったい何だったんだ、お前は」
「ああ……うん」
問いの答えになっていない。
再びぼーっとし始めるイタチ。これは始末に終えない。いったいいつからイタチはこんなボケキャラになって
しまったんだ?
まぁ、自分には関係ないことだ。イタチがボケていようと痴呆がきていようと……とにかく係わり合いになる
ことだけはよそうと踵を返そうとしたナルトにイタチがぽつり、と言った。
「……気になる」
「何が?」
ここで無視して帰ってしまえばよかったのに、ナルトは珍しくも人が良く反応してしまった。
「最近、気になる子がいる。おかしなことに、何をしていてもその子のことが頭から離れず、考えれば考える
ほど妙な気分になってきて、胸が苦しい」
「……。・……恋煩い、とか……ははは、冗談きつー……」
「ああ、そうか」
おい。
「なるほど、やはりこれは恋煩いだったのか」
おいおい、納得するなよ。
こんなところがキレ者なわりに天然ボケだとナルトが思うところなのだが。
まぁ、里のエリート中のエリート。天才うちはイタチが恋煩いとは……なかなかに面白い展開ではないか。
このネタは使える。
(言いふらしてやろう……)
小悪魔なナルトは上忍詰所に帰ったら皆に教えてやろうと、心に決めた。……すぐに翻すことになるが。
だが、その前に肝心なことを確認しておかなければならない。
「……で、誰だ?気になるのって?」
「ああ。それが最近会った子で」
「ふんふん」
もう見合いでもしたのか?それとも偶然?どちらにしろあの『うちはイタチ』に想われてんならそいつも
悪い気はしないだろう。悔しいことながら、この恋は成就の確立はかなり高い。
「外見の可愛さからは想像できない、意外な内面が」
……のろけてんのか?
「無邪気な笑顔も可愛いとは思うが、やはりちょっとシニカルに口元を歪めた笑いも好みだ」
相当趣味悪いのか、こいつは……恋は盲目っていうからな。
「たぶん、あと数年すれば私より強くなるだろうな」
「……おい」
そんなくの一が居たか?ナルトは思い出せない。
だいたいイタチより強くなる女……まさか。それはツナデなんか見てればありえない話じゃないだろうが
それでも今の里にそれほど実力を持った奴が居ただろうか。
「俺も知ってるか、その相手」
「ああ」
イタチは俺を振り向き、『よく知っている』と何だか幸せそうに笑った。
「よく知っている……?名前は?」
「うずまきナルト」
イタチはそれはそれは嬉しそうにその名前を”ナルト”に告げた。
「……。……じゃ、そういうことで!」
何がそういうことなのかはこの際問わないで貰いたい。今すぐに逃げなければヤバイとナルトの本能が
叫んでいたのだ。
それこそ目に止まらない(映らない)、瞬間移動もかくやと思わせるスピードで消えうせたナルトに、
イタチはぷっと吹き出した。
「……私は、本気だから」
ナルトの受難は始まったばかり。