近しモノ
「おかしな子供だね、君は」
「……あんたに言われたくねーよ」
Sクラス任務の最中チームを組んだ相手にぼそりと言われて、ナルトは呆れた視線を投げた。
今回火影に指定されてナルトがチームを組んだのは……うちはの後継者のイタチだった。
以前ナルトが一般人に追われている中入ってきて、訳のわからない一言を残して去っていった
変な奴……ということにナルトの中では位置づけられている。
「だが強い……チームを組んで足で纏いだと思わなかった人間は少ない」
「……。……」
確かにイタチはナルトと同等かそれ以上の実力を持っているように感じる。
言動は理解不能だが、さすが『うちは』だけある。
それだけは評価してやってもいい、とナルトは思った。
「俺も仕事がやりやすくて助かる」
上忍ほどになってくると、たとえ暗部で顔を隠していたとしてもだいたい誰なのか予測がつく。
暗黙の了解で名を呼んだり、確認したりはしないが……だいたい相手がわかって仕事をしている。
これがナルトだと違う。
任務中は変化の術で20歳程度の青年に姿を変えているが、それがナルトであることを知る者
はごくごく限られていて、中には露骨に探りをかけてくるものが居る。
いい加減うんざりして殺してやろうかと思ったことが幾度かあった。
またそこまでしつこくなくても、元々干渉されることを嫌うナルトとしては鬱陶しくて仕方ない。
だが、イタチは一発でナルトだとわかったらしい。
何故わかった、と問うと『気がね……違うんだよ』と答えがかえった。
「気?」
「そう、気……いや、存在感かな?君だとわからないように微妙に気の流れを変えているようだが
存在感が違う。闇に輝く月のように、君の存在感は圧倒的だよ」
「……。……」
ナルトは考えこんだ。
それは忍であることに致命的では無いか。
「大丈夫、月は地上にあるもの。誰も足元にあるなんて思わないからね」
「……。……」
「私はひねくれ者だから」
確かに、そうだろうよ。
忍びやかに笑うイタチにナルトは心の中で突っ込んだ。
す……と最後の一人をクナイで仕留めた後、ナルトは前方のイタチに目をやった。
足もとには夥しい数の死体が投げ捨てられている。
そんな殺伐とした状況にも関わらず、イタチは涼やかに夜空を見上げていた。
「月が……綺麗だね」
イタチが囁く。
だが、ナルトが見上げた空には月など出ていない。
今夜は新月で月は見えない……輝かしい存在としては。
闇の空に、闇の月。
「……そうだな」
同意したナルトに、イタチが嬉しそうに笑みを零した。